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sunatokageさんのランス10の長文感想

ユーザー
sunatokage
ゲーム
ランス10
ブランド
ALICESOFT
得点
85
参照数
2899

一言コメント

1周目→ストーリー面白い、キャラ集めて育てるの楽しい、これは神ゲー!!  ゲームオーバーで2週目開始→は?集めたキャラ全部没収で育成もリセットされんの?そんでまたオープニグから戦うの?クリアしたので色々と追記。最後まで付き合う価値はあります。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ストーリーはね、本当にいいんですよ。流石はシリーズ最終作だって1周目はテンション上がりっぱなしでしたよ。
でもゲームデザインが終わってる、テストプレイしたスタッフに「これ仕事じゃなかったら本当にすぐに2周目はじめた?」って聞きたくなるくらいに引き継ぎシステムが酷い。
やりたいことは分かる、周回ごとに色んなキャラクターを使って欲しいんだよね。
でも何度もゲームオーバーして繰り返しプレイすること前提のシステムでこれをやっちゃう?
色んなキャラクターを使って欲しいなら男キャラ限定、モブ限定のクエストでも出せばよくないですか?
自分は早めに引き継ぎ要素を知って、引き継げるものを優先的に強化していこうと1周目は割と全滅上等で進めたけどそれでも5時間くらいはプレイしました。
で、5時間やって手に入った特典が部隊ランク+1ですよ。
強化は強化だけど最序盤ですら2周目だからとワンパンで倒してサクサク進めるようなもんではない。
正直すごく面倒くさいです。
続きが気になるので何とか続けるつもりですが、これじゃあトゥルーエンドにどれだけの感動が待っていても80点以上をつけるのは無理だなぁ。

ここから第二部クリア後の追記


さて、点数を見れば分かる通り私はクリア前に「どんだけここから面白くなっても80点以上つけるのは無理」と書いています。
そして現在の点数は85点、ようするにクソゲーだった第一部の欠点を補って余りあるものが第二部およびグランドフィナーレにはあったということです。


1.第一部はなぜクソゲーだったのか

一言で言えば「対価なしに物語をゲーム化した」という点が第一部の問題点です。
物語をゲーム化すること自体は何も悪いことではありません。
たとえば名作である戦国ランスも同じ方向性で作られています。
ただし戦国ランスの物語は「ランスが天下統一する話」であり、ゲーム化は「増えていく領土と仲間」という形で表現されています。
これは遊ぶほどにプレイヤーが獲得の喜びを得られるデザインで大変に気持ちが良い。
これに対してランス10は「絶望的な戦いを何とか生き残る話」です。
ゲーム化は「最善の選択をしても毎ターン様々なマイナスが発生する」という形で表現されています。
ぶっちゃけた話、まったく気持ちが良くない喪失の苦痛が連続するデザインです。
もちろん喪失は一概に悪という訳ではありません。
たとえば「キラークィーン」や「うみねこのなく頃に」になどは主要人物がガンガン死んでいきます。
しかしこれらの作品にはその対価として「次に誰が死ぬのか」を推理、予想する楽しみや
「もしも○○が死んでいなかったら」のイフを観測する楽しみが用意されています。
ランス10でも滅亡後の救出イベントでシリアスモードになったランスの姿から
間接的にヒロインへの愛情を感じさせるシーンなどはありますが、ランス9バットエンド程度の内容で十分な対価とは言えません。
喪失の苦痛が連続するデザインでありながらこうした対価が不十分であった点が第一部の大きな問題点だと思います。


2.これ以外のまとめ方はなかったと思わせる第二部の見事な構造

第二部では第一部から一転して王道に近いゲームデザインになりプレイ中のストレスが大幅に緩和されます。
初見ではほぼ間違いなくやり直しを要求される闘技場ギミックなどクソゲー要素はありますが、我慢できる範囲です。
しかしそれだけならいいとこ75点、85点をつけたのは9割ストーリーの見事さです。
私は物語の時間が15年飛ぶ冒頭の展開に最初がっかりしました。
自分が遊びたいのは「ランスの物語」であって「ランスの子供の物語」ではないからです。
しかしこの15年の月日は二つの命題を解決するのに必要不可欠なものでした。
二つの命題とは何か、それは「シイル正妻問題」と「ルドラサウム問題」です。
最終的にランスはただ一人の大切な女としてシイルを選ぶ、これはワンピースでルフィが海賊王になるのと同じくらい確定した話でした。
しかしこれを物語が不自然にならず、それぞれのヒロインに愛着を持つプレイヤーを不快にさせず行うのは至難の業です。
この問題をアリスソフトは「15年の時間の経過」「女から母親になったサブヒロイン」「魔王化と氷柱化で年を取らなかった主人公とメインヒロイン」という構図で解決しました。
真っ当なストーリー展開では絶対にシイルが正妻になることを認めないリアが息子のザンスに夢中であるのはとても象徴的です。
この展開のために行われたシイルの凍結と復活の構成も素晴らしいですね。
まさかランスクエストマグナムのご都合主義すらミスリードだったとは、予想もしませんでした。
もっとも「戦国ランスから毎年発売されてれば本当に神展開だった」という思いが残るのも事実です。
作品ごとの間隔が空きすぎて仕掛けのインパクトが半減しているのがとても勿体ない。
そしてもう一つ、忘れてはならないのがルドラサウム問題です。
ルドラサウムはランスワールド最大最強の存在であり、同時に人間視点では邪悪の権化です。
ランスたちが頑張ってハッピーエンドに到達しても、全部なかったことに出来てしまうのがルドラサウムであり、実際にそういう真似を積極的にしたがる存在です。
この邪悪な創造神をどう決着をつけるのかはシリーズファンにとって大きな関心事でした。
「ランス含む下位存在が何をしようが絶対に倒せない」という設定は変えないけど
「別に世界なんていつ滅んでも構わないけど、ランスが生きてる間にそれをやるのは許さない」クルックーが交渉によって
自身の目標を達成(ランスが100歳で臨終した所からシーンが続くのはちゃんと意味があるんです)するというのはバランスの取れた着地点だったと思います。
そして私はこのシーンはランス10以上に待ち望まれている本当のシリーズ完結作である真鬼畜王に直接繋がっていると予想しています。
初代ランスからランス10までのいずれかの地点からのパラレル分岐として真鬼畜王が始まるわけではなく
ランス10→ランス幸せな一生を終える→ルドラサウムとクルックーの新しい遊び→世界再創造→真鬼畜王という流れですね。
そしてランス10で「初めての楽しみと遊び」を知ったルドラサウムが遊びのルールとして自らその最強性を捨てることで
初代鬼畜王では実現しなかった新しい展開と本当の決着がつけられるのではないか、ついたらいいなと思います。


3.真鬼畜王はゲームとして楽しく作って下さい

本作では「明らかにこのゲームだけなら必要でないキャラグラ」が多数登場しています。
真鬼畜王への期待は高まるばかりですが、ランス10がゲームとしてはクソゲーだっただけに不安も募ります。
神ゲーにしろとはもう言いません、ライトユーザーでも真エンドまで楽しく到達できるゲームデザインにして下さい。