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sunatokageさんのChuSingura46+1 -忠臣蔵46+1-の長文感想

ユーザー
sunatokage
ゲーム
ChuSingura46+1 -忠臣蔵46+1-
ブランド
インレ
得点
90
参照数
1102

一言コメント

本物ではなく「モドキ」だが傑作。以下盛大にネタパレあり。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

シナリオ B  シナリオ演出S+++

「ChuSinGura46+1 -忠臣蔵46+1- ってどんな作品?」と聞かれたら殆どの人は「江戸時代を舞台にしたループ物だよ」と答えるだろうが
この作品はループ物ではない。あくまで「ループ物モドキ」である。
確かに2周目にあたる江戸急進派編では「親しくなった人が自分との思い出を全て忘れている悲しみ」「未来の惨劇を説明しても誰も信じてくれない絶望」
といったループ物の定番イベントを見事に描いている。ではなぜループ物失格なのか。
それはこの作品では基本的に「歴史は変わっていない」からである。変化するのはあくまで主人公の視点に過ぎない。
2周目開始直後、主人公である深海直刃は単身江戸に向かいいきなり吉良上野介を討ち果たそうとする。
本来なら数年後に討ち入りによって死亡する吉良がこの時点で死んだら赤穂浪士たちはどうなるのか。世界はどう動くのか。
ループ物の醍醐味が詰まったワクワクするイベントだ。しかしこの行動は安兵衛と郡兵衛によって阻止されてしまう。
この吉良強襲阻止は例外的なイベントという訳ではない。
1周目、2周目は神の見えざる手によって。3周目以降は直刃自身の意思も加わり歴史は筋書き通りに単調に繰り返されることになる。
江戸急進派編では1周目の仮名手本忠臣蔵編では直刃が知らなかった様々な人物のエピソードが展開されるが
これは単に「直刃がどちらの現場に居合わせたかで知る情報が変わっている」だけであり1周目も2周目も歴史は大筋で変わっていない。
江戸急進派編が終盤に入ったあたりでプレイヤーはこうした作品の構造に気付いてしまい物語から緊張感が失われてしまう。
残った楽しみは一般的な作品と同じ「ヒロインとの恋愛」と黒幕の目的、動機は何かという「物語の謎」だけである。
だがヒロイン達は魅力的だが「平均点はクリアしてる」程度で牽引力としては物足りず
(燃えゲー、読むゲーの宿命として恋愛パートに十分な尺を割けないのも影響してる)
物語の謎にいたってはあまりに陳腐すぎて10人プレイしたら9人ガッカリすること請け合いのショボいオチ。
まぁ「赤穂浪士を異常に憎悪してる人間の動機と正体」なんて限られてるから仕方ないとは思うけど
甲佐一魅の時点で「これちょっと無理があるだろ」って感じだったのに丹羽赫夜にいたっては数百年間一族全員狂人でもないと成立しない話だもんなぁ。

じゃあそんだけ粗のある作品が何でこんなに高得点なんだといえば要所要所の演出が天才的に巧いからなんですね。
特に章のラストの盛り上げ方は神業級。
同人版ラストにあたる相合傘のシーンとか綺麗は綺麗だけどここで終わりなら80点の「よく出来たゲーム」止まり。
でもそこから「ループを脱して現代に戻った直刃の前に江戸時代の人間であるはずの清水一学が現れる」という演出が震えるくらいに凄かった。
「今日は3章をクリアしたら寝よう」と思ってたのに我慢できずにそのまま4章突入したくらいのビックインパクト。
(それだけに清水一学とは別人だと分かって以降の全てが予想通りに進む竜頭蛇尾な展開が本当に残念)
最終章の刃忠勇義烈編も散々勿体つけた話のオチとしてはボロボロもいいところですが
オールスターでどんどん敵と味方が駆けつけて一緒に戦う激アツの最終決戦がそうした細かい瑕疵を吹き飛ばしてくれます。



キャラクター A

この作品の成功は大石内蔵助というキャラクターを発明することが出来たからだと言っても過言ではない。
「普段はダメ人間に見えるがやる時はやる」という内藏助の人物をロリと大人の使い分けで描くというアイディアがなければ
陰鬱な仇討ち話をここまで遊びやすい娯楽作品に仕上げることはできなかったはず。流石はご城代。
他にも敵役、脇役を中心に可愛い子ちゃんが揃ってるんですが魅力的なキャラクターほど出番が少ないという致命的な不具合があります。
FDに期待ってことになるんだけど登場人物が多いだけにどうなるか。



戦闘演出 A

予想以上に良かった。特に最終決戦は過去の名作と比較しても何ら遜色ない。