特異な設定ではないですが、非常に丁寧に作り込まれた名作です。
それぞれのキャラクターの置かれた環境をうまく設定し、その設定ゆえに生じる人間関係を一貫して丁寧に描いた作品だと感じました。小さな頃に母親を亡くし、母性的な明穂に強く惹かれる一樹、同じく幼くして両親を失い唯一の肉親である姉を尊敬し甘えつつ、その姉の完璧性に苛まれコンプレックスを抱かずにいられないつばさ、幼い頃から鬼切りとしての役目を与えられ、多くの悲しい別れに遭遇してきたが故に人との深い交流がもてない珠美、過去の罪の意識に苛まれ自己に自信がもてない千早、と、登場人物がなぜそのような性格を持つに至ったかについて過去に遡って丁寧に描き、その線に沿って矛盾のないストーリーを展開することで、人物の描写にリアリティを持たせることに成功しています。
一人一人の過去の背景や性格の特徴は、ある意味ステレオタイプで、彼ら彼女らが織り成す物語は、シナリオライターの表現手法も相俟って、例えば少女漫画によく見られるような内容ということもできますが、敢えて奇抜な筋書きを求めず、素直に物語を展開させたことで、より多くの人の共感が得られる内容に仕上がっているといえるでしょう。