飛行機野郎のロマンを描き切るスカイオペラ。大空系の話が好きな人なら後悔しないのでぜひ!
どんな危険も顧みず、人間の限界を極め、突破しようとする『真の男』。
最新鋭のマシンを駆り、今のこの凶暴で凶悪な空を切り裂く、黒い稲妻。
現代のイカロス。
例えこの空の高みで待つのが死の女神だとしても、
呵呵として挑み続ける大馬鹿者ーー勇者。
お金も、名誉も、命も、そして愛さえも、彼らの前では色褪せるーー
凡百の男たちが、妻や恋人や子供たちのことを想っている時に、
彼らは飛ぶ、この大空を。
アルテミスに蓋をされた息苦しい空を切り裂いて、
どこまでも駆け上がる。
誰も見たことのない、
空の頂点に君臨する女神の顔を見るために、
鋼鉄のじゃじゃ馬に乗る騎士。
この世界で、彼らだけが女神の顔を拝する権利と資格を持つ、
選ばれた男たち。
戦う男。牙持つ男。
時代の流れと共に多くの男たちが失ってしまった資質を
今なお持ち続ける男たち。
ハルの成長譚と過去の傷を克服する桂馬の物語という2本のテーマを交錯させて描くスカイオペラ。
おそらくこの双方をさらに統合するテーマとして「格好いいヤツの生き様」というものがあると見ています。その意味で、この話は、日本の飛行機アニメの金字塔である某豚の話や、近時話題をさらった犬村小六氏の飛空士シリーズのようなおはなしが好きな人には、絶対に共感できる話だと思います。
ここ数年の中では健速氏の「そして明日の世界より」以来の名作と考えます。
ラストのシーンがどうとかエロシーンがどうとか、そういう次元が低い話で上から目線で語ったつもりになっているコメントが多いですが、そんな些末なことに拘泥せずに、作者が伝えたかったことは何なのか、それを真摯に受け止める、普通の文学作品と同じ読まれ方、楽しまれ方をして欲しい作品です。