ErogameScape -エロゲー批評空間-

sugercubeさんのシュヴァルツェスマーケン 紅血の紋章の長文感想

ユーザー
sugercube
ゲーム
シュヴァルツェスマーケン 紅血の紋章
ブランド
âge(age)
得点
90
参照数
2483

一言コメント

うぜぇー!!!!!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


このレビューでは、以下の作品のネタバレも含みます。ご了承下さい。
『マブラヴオルタネィティブ』(以降ALT)
『マブラヴアンリミテッド ザ・デイ・アフター』(以降TDA)
『マブラヴオルタネィティブ トータル・イクリプス』(以降TE)





当たり前のことなのですが、ALTと世界を共有したストーリーなので、
最低でも、ALTをプレーしていることが前提でないと楽しめないと思われます。
出来れば、TDA、TEもプレー済みであるとより楽しめるかもしれません。



今作は群像劇的な要素を大きく含みながらも、あえて神視点をユーザーに
与えない様なシナリオになっています。
主人公とユーザーとのシンクロ性という意味では良い按配ではないかと思います。
主人公が意外と普通の能力というのも、私的には歓迎したいところ。
ALTやTEではチート過ぎると思うので、せめてTDA程度に~って思っていましたが
更にそれ以上に普通なスペックっぽい主人公で、少し驚きましたが、良い設定だなぁと。

そして、如何にもなのが、魅力的で有能な女性上司!
ALTでは伊隅大尉、TDAではまりもちゃん、TEでは篁中尉と、ある意味これって
伝統ですよね!
そして今作でのそのポストにはアイリスディーナ大尉!しかもストーリーに大きく
関わってくるという・・・!こういう物語を期待してたんですよねぇ(笑)
特にTDA03での駒木大尉の扱いに非常にがっかりした私としては、今作での物語は
否が応でも期待しちゃうのですよ!

各主要キャラにもバックボーンとなる過去がしっかり設定されている様ですね。
少し(かなり?)突飛とも思えるキャラクター性も、それなりに理由が用意されている
様で、シルヴィアやファムの過去が後編でどのように明かされてくるのかも今から
楽しみだったりします。
全編ではあまり絡みの無かったベアトリクスやキルケもどのような形で物語りに絡んで
くるのか・・・後編楽しみでしょうがないです。

しかし、過去シリーズに比しても今作の主要キャラの女性率は高いですよねぇ。
ストーリー自体シリアス目なのだから、もう少し男性キャラがいてもいいのでは。
過去作の主人公に近い男性キャラって何故かチャラいので、そうじゃないキャラを
配置してもよかったのではと思いました。





さて、表題の「うぜぇー!」ですが、これは序盤のカティアの言動の感想です。
序盤のカティアの「未熟さ」は物語としては自覚的なのだろうことは想定しながら
読み進めていましたが、それでもイラつくほどのウザさ加減だったのは否めません。
アンリミのタケルちゃんの未熟さと似た感じですが、ウザさはその比ではありませんね。
グレーテルやシルヴィアが手を上げるシーンでは、
もっとやったれ!って思っちゃいましたもの(笑)

今作のライターさんが巧みだなぁと思ったのは、序盤の主人公の思考へユーザーの視点を
上手に誘導している部分です。そう思ったのは私だけかもしれませんが。
カティアのウザさが眩しすぎて、主人公の未熟さを上手く霞ませていました。
最初のアイリス大尉お説教のシーンで主人公が叱られて、それに初めて気付いたり。
中盤以降、主人公が自らの弱さと対峙してからの表現も良い感じでした。
まさに「自分が変われば世界が変わる」という感じなのが、すごく良かった。
カティア、アネット、グレーテルなど、台詞上の変化は無いのに、ト書きでの
主人公の心情を変えるだけで受け取る印象がかなり変わりましたね。
これも、ある意味シリーズ伝統の成長パターンなのかもしれませんね。
そういうこともあり、終盤での中隊の印象も、素敵なチームに変わっていました。
ていうか、その要素だけで私的には高得点確定です!

エピローグで裏打ちされましたが、リィズには何かあるだろうことは予想通り。
じゃなきゃぶっちゃけ、いらん子でしょ?そうじゃないなら裏があるはずって感じで。
ヤンデレ風味だったのは、ベタだなぁと思いましたけども。

演出云々については、他のレビュワーさんも仰っているので、あえて語るまでもないでしょう。
一言、すばらしかった!とだけ。

後編の発売いつになるか分かりませんが、期待して待ってみるつもりです!






その他どうでもいいような雑記~


①タイトルについて

今作をプレーにするにあたって、最初に気になったことがありました。
それは、今作のタイトルには『マブラヴ』の文字が冠されていないこと。
私自身の勝手な深読みかもしれませんが、あえて外したことに意味があるのかなぁと。

これは私の所見に過ぎないのですが、他シリーズと違うと思った点がありまして、
それは、「対BETA」より「対人間」の戦いを主題としているところ。
まぁでも今作が未完であることを考慮すれば、続編でそれが覆る可能性があることは
否定はできないのですけども。

まずこれは、物語の中で主人公達に課せられる課題の要因になったのは人間の創出した
システムであるということが、明確に明示されていることが大きな理由です。
メインキャラクター達の台詞からも語られていることでもありますし、エピローグでの
リィズの台詞からでも、容易に分かることだとは思います。

マブラヴシリーズでは、マクロ的な主人公達のベクトルが「人類の存続」に向いている様に
感じていました。それを軸としつつ「人間同士の争い」を物語の味付けとして表現されて
いる様に感じていました。
今作では、それが入れ替わって、「人間同士の争い」が軸となっていて、
その味付けとして「人類の存続」があるのかなぁと。
戦闘エピソードで語られる、部隊の戦闘するための主目的や、更にその先にある目的も
同様に「人間同士の争い」のためのものでした。
各キャラの病んでいる理由も、直接的にBEAT原因のキャラよりも
人為的な原因のキャラの方が多いのもそう思う理由の1つです。

「マブラヴ」というワードの持つ意味から察すれば、今作のタイトルから「マブラヴ」を
冠していないと言うのは、そういうことなのかな?と勘ぐってみたり。
時間軸的にALTの18年前という舞台設定では、そこまで人類存続の危機ということが
注視されていなかっただけですよ?ってことなのかも知れませんが。

ALTプレー済みのユーザーなら当たり前に分かっていることだと思いますが、
ドイツ周辺はBETAの支配地域になってしまうことは既に決定されている未来です。
リアルで既に存在しない国である東ドイツが舞台と言うのも、随分とアイロニーが
効いているなぁと。

いずれにしても、今までのマブラヴシリーズとは毛色の違うストーリーだとは思います。





②技術的な設定について

戦術機については、チボラシュカで準第2世代戦術機という設定です、それより以前に
開発されたバラライカについては、準第2世代戦術機以降になることは考え難い。
ちなみにトムキャットも第2世代戦術機という設定だったりします。
(リアル戦闘機では、チボラシュカは第3世代、トムキャットは第4世代だったります)

そこで問題になってくる設定があるのですが、
オルタ世界において戦術データリンクシステムを実用段階で導入されたのは、
第3世代戦術機からという設定になっているのです。(インテグラルワークスより)
確か伊隅大尉の講義の中でも同様の解説があったと思います。
(第2世代戦術機も演算処理装置、通信装置の改修によって導入可能になるとの事)
通信技術や電算能力の向上によって、それが可能になるわけなのですが、
それが可能になる前の、第2戦術機でのそれら能力について、ALTやTEの戦術機との
性能差異がほとんど再現されていなかったのは、とても残念です。
上述致しましたが、今作をプレーするまで、戦術データリンクが無い頃の戦闘シーンを
どのように表現するのか、非常に興味があったのでその点はがっかりしましたね。
そもそも第2世代機ではOBWの設定だと思うので、できればOBLとの表現上での差も
できれば明確であった方が、私的には楽しめたかなぁと。

1983年は奇しくもファミリーコンピュータが発売された年だったりもします。
ちなみにAppleで初めてマウス付きコンピュータを発売したのも同じ年だったり。
オルタ世界とリアル世界が同じ歩調で技術革新を進めたという設定になってる
わけでもないので、大戦中のオルタ世界の方が技術が進歩していると言われれば
納得できなくもありません。然しながらALTの舞台とは時間軸で18年を隔てている
世界で、技術的な表現で差異が無いというのは不自然だと思うわけです。

そういう意味では、ヴィジュアライズされたブリーフィングシーンが無かったのは
逆にリアリティを損なわずに済んだのではないかと思っています。
私は、年代的な技術差異の表現としてブリーフィングシーンが簡素化されたんだろうと
思っていたのですが、戦術データリンクが大活躍してたので、あれれ~?ってなりました(笑)





③作中のドイツについて

リアルでの東ドイツ・・・ドイツ民主共和国は既に存在する国ではありません。
冷戦時代の社会主義国家ということで、欧米諸国のプロパガンダによる印象操作もあった
のだと推測もできます。そういう理由で、今の時点で当時の東ドイツの実態を知ることは
非常に難しいことだと思います。
おそらく、自分を含め多くの人が、真実を知らないままに当時の東ドイツの政治体制に
対して批判的な印象を持つのではないでしょうか。
 ※東ドイツは1990年に西ドイツ(ドイツ連邦共和国)に編入され消滅しました。
  1990年当時の人口は1600万程度で、当時2000万の人口だった北挑戦よりも人口の
  小さい国でしたが、所謂東陣営では経済的に優等で、NVAの錬度もWTO随一と
  評されていた様です。

さて、物語ではWW2時に原爆を落とされたことになっています。
敗戦国と言う意味でもリアルの日本を連想させてしまう様な設定ですよね。
現代日本においても、語ることはタブーとされるような事柄がある様に
ドイツでは、ナチスに関わる事柄が非常にナイーブに扱われている様です。
それに纏わる事柄の一端を、作中でキルケが吐露しています。
それは、ある意味シニカルな表現だよなぁとニヤけてしまいましたが。

勘違いしてはいけないことですが、この作品は明確にフィクションであると
明示されている作品です。
この作品を元に政治的な議論をするのは、ナンセンスだと一言添えておきますね。





④クライマックスシーン

ぶっちゃけコレだよね?

ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:MiG-21bis%26F-14B-Croatia-2002-2.jpg






以上、1マブラヴファンの書きなぐりでした!

駄文失礼致しました。乱筆ご容赦願います_(._.)_