「つり乙も寓話」
王雀孫氏とコミックマーケットで2回ほど話す機会がありました。
一度目は丁度それ散るがBasilにパクられた時期だったので
自分「それ散るは完成してますよね。寓話といいますか。」
王「ええ、僕も完成しているとおもいます。
新作(俺つば)もいろいろと解釈のしようがある作品だと思うので
プレイしてみてください。」
といったやりとりをさせてもらった。
それ散るや俺つばの感想をみるに、そのとおりいろいろな解釈をできる
作品になっているが、自分が思うに
王雀孫作品はいろいろな解釈ができる寓話的なつくりになっているのだ。
さて、感想を一本にまとめられなかった言い訳をしたところで
妄想の羅列を行うことにしよう。
・「それは舞い散る桜のように完全版」に対する報復だよ説
ルナルートでプライドが高い衣遠がデザインをパクってきたことについて
プライドの高い大倉衣遠が前述の弟イジメの理由はあるとしても
デザインをパクるような自分を貶めるようなことはするだろうか。
思うにこれは「それは舞い散る桜のように完全版」に対する抗議なのだ。
「完全版」はプレイするのもおぞましのでプレイしているが
朝陽のことをニートと罵ったり、西又絵を劣化させていたりいろいろと酷いみたいだ。
ここからは完全な妄想だが、Basilサイドとしては金銭的な面はともかく
少なくともNavelや西又を貶める意図があったのではないか。
この件について、衣遠のキャラに無理をさせたうえでもNavelとしては
ネタでひとつやっておきたかったのかもしれない。
・王雀孫版ホワイトアルバムだよ説
二回目に王雀孫氏と話をする機会では彼の個人サークル「IKSOスピリッツ」に
お邪魔したときだった。
テンションの上がった私は始発で並んで一サークル目に行ったわけだが
(コミケ三日目の一サークル目はそれ以外まともに買い物できないと
思ってもいいくらい大事なものなのです)
まさかの遅刻のボードが立っているだけ、数時間後にふらっと
立ち寄ってみると、そこにはまるでジャンのようにごめんねえへ。みたいな表情の王雀孫氏が。
その際には俺つばについていろいろお話をお聞きしたが
そのとき買った同人誌を読む限り、王雀孫の創作の原点にはどうやら
ホワイトアルバムというものがあるようなのでした。
ホワイトアルバムは彼氏持ちの男がアイドルに浮気する話(雑)
「月に寄りそう乙女の作法」における主人公の彼女は大倉衣遠。
部屋にとじこめておいて自分のものにするなんて愛以外のなにものでも
ないじゃないですかー。主人公自体も衣遠のことを思って
胸が苦しくなったり、だんだんと心が移り変わっていく自分に罪悪感を
覚えていたり、まさにホワルバ状態。
瑞穂が朝日をアイドルに仕立て上げようとしたのはこの辺の
ニュアンスが影響しているのではないでしょうか。
お嬢様に体を許した日に朝日は思うのです。ああ、兄さまごめんなさい、と。
ファッションショーでコムロ的なミュージックが流れるのも
当時を髣髴とさせるものがありますね。
つまり「月に寄りそう乙女の作法」はアイドルである朝日を衣遠とお嬢様が奪い合う
王雀孫版逆三角関係ホワイトアルバムだったんだよーーーーー!!!
・これは壮大な兄弟喧嘩だよ説
兄である人なら、弟が自分の友達と親しくしている時に微妙な
NTR感を感じたことがあるだろう。自分とだけ遊ばせそうと思った弟があろうことか、
自分の友達と勝手に遊ぼうとしている許せない。
弟が服飾に関わろうとしたのはジャンのデザインに憧れたためであり
兄を目指しているわけではない。兄としては仲間外れにされそうでとても嫌な状況だ。
衣遠が遊星に求めているのは服飾の業界から身を引くことで
湊ルートなどでは学院を辞め、二人で暮らす湊と遊星には手出しはしてこなかったと思う。
正直に一緒に遊ぼうよといえない兄衣遠と兄におびえるあまり
兄の喜ぶことを考えながらも言い出せない、弟遊星の絆を繋いだのは
兄の友人であり、弟の尊敬する人物である、ジャンのおせっかいだった。
遊星がお嬢様たちと恋をすること自体はジャンは予想していなかったものの
彼の思惑は遊星が服飾の業界から身を引いた湊ルート以外では成功したことになる。
ジャン視点で見れば「月に寄りそう乙女の作法」は単に兄弟を仲直りさせるための話だったりする。
・西又絵と鈴平絵を並べて差がついてしまった件について
本人がごねたのかどうかはしらないが
そもそもお嬢様キャラに西又を使うのが間違っている気がする。
鈴平キャラの良さはいわば浮世離れした天使のような美しさ。
過去作品でもエルフや黒髪のお嬢様が印象的。
ヨスガノソラでは穹という反則がいたため、一葉が霞んでしまったが
瑞穂のビジュアルを鈴平が担当していたなら
もう少し、マシなビジュアルになったはず。
逆に西又キャラの良さは等身大の方言や現代語が似合う
雪村小町や香田亜衣のようなキャラ。
妹キャラも等身大の妹というような気がして好き。
俺つばのような現代人の心に巣食う病理について描く場合
鈴平キャラではどうしても御伽噺のようになってしまって
説得力に欠けてしまうような気がする。
鈴平を天とするならば、西又は地。上杉謙信と武田信玄のような違いがあるわけですが
(西又先生の体型が武田信玄に似てるとは一言も言っていません。)
今作「月に寄りそう乙女の作法」は、現実離れした天界に住む天使のような
お嬢様たちの宝石箱のような世界観。
湊ルートでは湊の家が倒産してしまう現実的な視点からの魅力が描かれていましたが
物語が耽美な世界観である以上、地味になってしまうことは否めないと思います。
・ だって、身も心もユーシェが美しすぎるのですもの。
ユルシュール=フルール=ジャンメールの魅力を語るならば
テンプレートお嬢様と真正面から見せた点。
よくいるお嬢様キャラといえば一つ、金髪縦ロールで調子に乗っていて偉そう。
というイメージが沸くと思うのですが。
エロゲではもう一つ、黒髪大和撫子のお嬢様や
金髪で調子に乗っているお嬢様は見かけるものの、縦ロールのお嬢様は
中々見かけないのが現状だと思います。
ユルシュール=フルール=ジャンメールはこの固定概念に真っ向から立ち向かいました。
まず、金髪縦ロールである点。
この点は釣り目かわいい鈴平絵により、縦ロールもあまりドキツイ巻き方を
してないことにより、乗り切りました。
次、調子に乗っている点。
ユルシュール=フルール=ジャンメールは簡単に言うとバカキャラです。
前述した金髪縦ロールの点もあいまって一発でわかるバカキャラっぷり。
多少他のキャラをデヴよばわりしても、ルナやサーシャにまちがった日本を
教えられているというバカキャラっぷりで乗り切れます。
ユーシェを嫌いという人はあまりいないのではないでしょうか。
最後に一番大事な要素が偉そうな点。
金髪縦ロールキャラの一番のネックになるのがこの点にあるような気がします。
金持ちで偉そうなのです。貧しい自分の家庭環境なんかと比較すると
意味もなく誰かを殴ってやりたいというきもちぃぃ!になったりします。
ユルシュール=フルール=ジャンメールは金持ちで偉そうです。
だけど、彼女は偉そうにするに足るだけの努力をしており、挫折も常に経験しているのです。
服飾の世界に入ったのはルナより彼女の方が先でした。
なのに、ルナはいとも簡単に彼女の欲しいものを手に入れていきます。
負けじと彼女はルナの何倍ものペースで作品のデッサンを行います。
それでも中々ルナには勝てません。
嫉妬深い自分なら友達を卑屈に逆恨みして距離をおいてしまうような気がします。
しかし、彼女はルナに対して友達として、真正面からライバルであろうとし続けます。
立派です。自分には到底真似できません。
彼女の挫折を繰り返しても、あきらめない姿は愛おしく応援してやりたい気持ちになります。
金銭面の要素は見方だと思わせてしまえば、プラスに作用するような気がします。
ユルシュール=フルール=ジャンメールは偉そうにするだけに足る
努力と挫折を下地にした自信をもっているのです。
物語終盤では彼女の強さと小倉朝日の彼女への愛が大蔵衣遠を満足するに足り
ユルシュール=フルール=ジャンメールはライバルからの勝利も
主人公の愛も手に入れます。大正義、大勝利な展開ですわね。オーホホホホ!!
テンプレートヒロインならば、ヒロインもシナリオもテンプレートを
捻じ曲げず、正統派でじっくりと描けばいいのです。
・百合ゲーに対するアンチテーゼ説
男というウイルスが居ない状況で百合は成立するんだろうか。
男なんて汚い醜い、私たちは美しいっていう選ばれたもの思考が基本でしょ、百合って。
瑞穂なんかがこの典型。ルート序盤では男性の好意全て醜いもの怖いものとして扱う。
そんな瑞穂を朝日は男性として抱く。瑞穂は格好さえ女性であれば大喜びするし
フェラチオもする。男怖い男嫌いとはなんだったのか。
ルナルートではルナは器の広さをみせ(まあ、勢いでいった部分はあるかもしれないが)
男性である朝日を受け入れる。美しいものは美しいと。
百合専の人に自分が言いたいのは男性と女性の恋愛「も」美しい。
ということ。まあ、それでさらに男というウイルスを嫌いになるならば
それもいいだろう。君の百合はさらに洗練される。
最終的にルナルートでは瑞穂が愛した百合の花園は共学校になる。
女装主人公ゲーを百合素敵みたいに宣伝する人がいるけど
「月に寄りそう乙女の作法」はそれらとは一線を画した
普通の男の子と女の子の恋愛、彼女達はお互いを愛していながらも
肉体関係になることはない。百合に見えるが百合シーンはいっさいないのだ。
このゲームはガチ百合なヒロインも顔と性格さえよければ、男だろうと関係ないよ。
っていう百合に対するアンチテーゼではないだろうか?
今回も王雀孫にはいろいろとおもしろい妄想をさせられてしまいましたね。
毎回睡眠時間私生活的にだいぶしてやられます。
今回はこう締めるべきなのでしょう。
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