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stay_fightさんの南十字星恋歌 Southern Cross Love Songの長文感想

ユーザー
stay_fight
ゲーム
南十字星恋歌 Southern Cross Love Song
ブランド
すたじお緑茶
得点
82
参照数
1056

一言コメント

全体的には楽しめた。FDに期待したい一作

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【共通√】
長い。この印象が一番に出てくる
そもそも最初の選択肢まで11時間
共通が16話あるのだが、1話につき約1時間強ペース
17時間程度で共通を終えることとなった
プレイする人は注意が必要である

シナリオ面では、コミカル系に寄っている
エロゲの王道といえば、話の筋を書きながら閑話休題といった具合で進むのが基本だが
これは逆にキャラの魅力、かわいさを伝えながらその合間を縫って話の筋を書いている印象
その分、各キャラの個性や掛け合いの面白さが全面に出ている
思わずクスッとなってしまうことが何回もあり、非常に楽しめた
しかし同じ情報が何回も出てきているのに加え、言ってる相手が同じような既視感を覚えた
前に言ったのに初めて聞いたような対応が何回もあるように思える
自分の境遇を焼き付けるという面では有効ではあるが
いつも同じ説明をしている感じがしてしまっているので、そこは直すべきだと思った


システム面では、画面下部にテキスト画面を設けない緑茶独特の手法
テキスト画面がない分画面が広く見えたり、色分けや場所の工夫によって
誰が喋っているのかというのが感覚的に伝わりやすかった
また細かくキャラを動かすことによって、遠近や跳ねる動作などが
ADV最大の弱点である単調さを和らげられていたと推測する


キャラ面では、声優さんの演技と相まって個性派が集っている
出石など若干テンプレ発言が過ぎる印象もあったが
凸凹した感じが、本作の魅力を増大させた
筆者は、咲弥が一番惹かれた
茶目っ気があり、人懐っこい感じが他のヒロインの中でも群を抜いてよかった
逆に学校長は非常にきつかった
生き埋め未遂以降顔を出さなくなったが
登場から奇抜な発言を繰り返し、やる気の衰退へとつながった
個人的には、悪役も芯があってこその悪役であると考えているが
学校長はただ甲高い声で唸っているだけのおばさん
印象的なのはいいことに働く事が多いが
悪く印象的でさらに受け付けないようなキャラは、話のスパイスにもなりえなく
面白いという印象を削いだ結果が残った





【エリーゼ√】
小動物っぽいキャラは攻略可能キャラの中に2人いるのだがどちらかと言うと子犬
きゃんきゃん吠えることが可愛い、そんなタイプ
堅物ではあるものの
恥ずかしがるのを隠す行為や、天然ボケをかましてくる感じは
嫌いな人は嫌いかもしれないが、慣れてくると心地よさも感じてくるほどしっくりくる


シナリオ面では、自身の境遇にどうしても主人公との恋愛に二の足を踏むところなどがよく描かれていた
尺の都合かエリーゼ側からかなりがっついてくるのは若干の違和感はあったものの
その違和感を振り払うほどのエロの濃さがあった
主人公が1回に2発以上出さないと満足しないからか
最初から何発もやっているのには目が点になったが、十分すぎるほどの見応えがあった


最後のれなりなの一件は、コミカル系とはかけ離れているが
個人的には好きな展開で次がどんどん気になりマウスを押す手が止まらなかった


金髪・ツインテールと一昔前のテンプレートなキャラではあるが
ありあまる可愛さが全面に出ており、
思い出させてくれた√であった



【魅月√】
今風のギャルっぽい感じなのだが、これは純愛系のエロゲにしては珍しい部類なのではないだろうか
昨今の若干日に焼けたギャルは、抜きでアヘ顔をかますのが相場だと私は思っている
中身は、超甘えん坊、我が道を行くタイプ
それでも心の中に大切にしているものはあって、そこに心を動かされたプレイヤーも多いのではないだろうか
少しワガママな注文なのは分かっているのだが
あの身なりをしているので、もう少しギャルっぽくキャラ作りをしてもよかったのではないだろうか
中身と外見のギャップも彼女の魅力の一つではあるのだが


シナリオ面では、魅月の目標への歩みだし(成長)と学校長との対立が主軸……であるのだが
都やかのりに阻まれているせいか、最後に波がある程度の平坦な展開
キャラゲーとして見れば、学校長の動きが表面化するまでの間魅月とのHを存分に楽しめるが
それ以外は、主人公という存在で魅月が自主的に変化を遂げていくので
見ている側としては、若干のパンチ不足は否めなかった
共通であったコミカルさも抜けていたので、筆者としても若干不満であった


シーンでは、胸が大きいことを利用したパイズリ等々を標準装備と抑えるところは抑えている
個人的には挿入以外で主人公が攻めているという場面があまりなかったのが残念か
豊満な胸に、魅力的な容姿であるので、S心をくすぐるような印象的な前戯が欲しかった
6回中3回が青姦と、非常に開放的なHだったところは評価したい


容姿とのギャップに萌えがあるものの、結局中身は純粋なよくある乙女なのが少し残念ではあったが
壇上でキス、授業に割り込んで甘えてくるという部分は、誰もがあった学校生活の淡い妄想を呼び起こさせ
「こんな彼女もいいかも」
そう思わせてくれた√であった


冷却でロック解除をする手法は知ってる人は知ってる部類で
個人的にはとても面白かった

【都√】
黒髪ストレートでお嬢様と人気が高くなりやすい要素は詰まっているものの
毒舌家でツンケンしている様子はあまりとっつきやすいとは言えない
デレの部分は、共通部分の間はほとんど出ない
正確には、主人公のいない間は出ているのであるが
この作品がほとんど主人公視点のため見えにくいというのが正解か
√に入り付き合いだすと、ほとんどデレてくる
その部分はあまり好きになれなかった筆者もだんだんと惹かれてくるものはあった


シナリオ面では、主人公の家族関連が中心
良い悪いの前にきつかったのが第一印象
学校長と比べれば幾分かマシではあるのだが
肉親が妹の前でもタバコを吸い、言葉遣いは汚い
挙句の果てに金にまみれる姿は、見ている側にもダメージが及んだ
それが強すぎた結果、都が波佐見性を捨てると言いだしてもたいした山に見えず
最後が微妙に感じてしまった
都と付き合いだすまでの香乃梨のアシストのような、他√よりも丁寧に書かれた馴れ初めや
付き合ってからのデレっぷりはよかっただけに惜しいと言える


シーンは、フェラに偏った6回
S気の強い都も攻められたり挿入されてるときは、内にあるM気が出てきてぞくぞくする
「兄さんっ!兄さんっ!!」と求めてくれるのは
妹属性があまりない私でも強く惹かれるものがあった
フェラに偏っているだけに、お掃除フェラが上手い
いつもお口に加えて欲しい願望があるのなら、この√をオススメしたい


横柄な相手にも動じずに分析をしていく姿
実生活は常に力押しが強いのに、いざ営みとなると押しきれない都は
まさに「隠れM、誘い受け」といったところか
ツン強めのツンデレが見たいと思っている方には鉄板となる√なのではないだろうか

【咲弥√】
人懐っこく誰とでも仲良く慣れる親しみ深い後輩
ネットスラングが多少入ってる分、親近感があってとても惹かれたのがこのキャラだった
ただ√に入ると「うにょら」「ひゃあ」など、ひたすらに驚く
そのキャラの特性上それがプラスになっている面ももちろんあるのだが
後半になるにつれ、とくにシーン中はただの「驚く機械」のように見えた
主人公や他キャラとの絡みあいによって最大限の+を作り出していた咲弥を
いざ主人公と2人きりになるという場面になると霞んでしまう
プレイをした中ではそこが残念であった


シナリオ面では、学校の地下が中心
最初は付き合うということを意識していなかった咲弥が
バレンタインでほっぺにキスをされたところを契機に主人公を強く意識していき
やがて付き合う姿は、腑に落ちていった
彼氏彼女を作る気配がない子だからこそ、コロッといってしまうのは
やはり彼女も歳相応なのだなと思わさせてくれた
話の都合上咲弥が裏方側ばかりにいたのは、彼女の特性なのだろうか
色々な人に情報を伝えたり、学校を占領しかえしたり、データの取引に向かったりと
今思えば大活躍なのだが、話の主軸が主人公側に寄っていたせいか
印象が若干薄いのは少し残念に思えた


シーンは7回
ジェンダーフリーな感覚をもっている咲弥が
男を意識していくというところに重きをおいている
あえて初めの3回をそこに費やしたところは
咲弥らしさ、咲弥だからこそが出ていてとても素晴らしいと思った
こういうキャラだからこそはまる仕掛けがちゃんとはまっていた



若干きつめに書いてしまったが、当初思っていたハードルを
自分自身が勝手に上げてしまったのが原因なのか
個人的にはあまり満足できなかった
もっと咲弥の可愛さを活かしていけたのではないだろうか
そう思って絶えない√だった




もんちゃんはもっと大活躍してほしかった

【香乃梨√】
誰にでも親切に振る舞う表の顔
堅物で何もかも行政的にこなしていく裏の顔
さらに可愛げがあって一筋な愛情を見せてくれる素の顔
3つの姿があるのが香乃梨の魅力
このキャラの本領は√に入ってからはじまる
どんな行動でも何かとつけて可愛いのだ
イーリンに怒られると分かっててもやりたいこと、してほしいことにひたすらで
どんどん甘えてくる姿は、5人の中でもトップに君臨するのではないだろうか

シナリオ面では、伏線回収しなかった部分の回収がメイン
冷酷な姿、きつい姿を見せても目標のためにガンガン突き進んでいく姿は
男の自分からでも逞しく見え、その姿に憧れてしまう
開放型の最後なだけあって、想像できていた部分、想像できなかった部分が
丸裸になっていく形はこのゲームの特色である「funny」の面白さではなく
「interesting」の面白さを感じた
人間としての禁忌に落ち着いていったが
なぜれなとりなが天才なのかという、設定だと思い込んでいたところにも
理由があってここまで来ていたということには驚いた

シーン面では、オーソドックスに6回
シャワーを浴びながらが2回あるのだが使い回しなのが少々残念
ドレス姿とED後お決まりの水着姿が1つのシーンに集約されており
それだけとても豪華になってはいるものの
両方とも堪能したい身としては、2つにわけて楽しみたかった


最初香乃梨√に行き強制BADをくらい呆気にとられてしまったが
それを覆すほどの面白さは、ここにはあった
製作の都合で大トリという宿命を背負わされたが
見事に期待を上回る√であった



【総評】
全体的に共通では笑いを産み出し
個別は笑いを抑えてじっくりとという形だった
笑いを主軸においたエロゲはあまり見ないため
個別でもそちらに重きをおいてほしかった
どのキャラでも共通直後は失速感があり
それを取り戻せたキャラとそうでないキャラは筆者の書き方で分かるだろう
もちろん全てが筆者の思い通り、ツボ通りに進むということはまずありえないが
それを抜いてもやはり残念と言わざるを得ない部分も多々あった
あと、学校長や主人公の母親は見るも無残、クリックするのがきつくなるときもあった
それでも随所随所で光る部分やシナリオにのめり込める部分はあり
元をとれる内容になっていた
主人公が熱い男、悪く言えば癇癪持ちと見えるため
受け入れられない人もいるとは思うが
特にエリーゼ、香乃梨√はオススメしたい


FD待ってます