前作が冒頭の「桜」から始まる物語なら、こっちは前作冒頭の「お姫様ごっこ」と冒頭の舞台「大蔵家」に回帰する物語。単体では90点くらいですが、限定版のアペンドの内容で+10点したことで100点に。
「FDかと思いきやこっちが本編なんじゃねーの?」な続編。
前作は女装潜入もの+服飾という感じでしたが、今作は女装はしているけど潜入ものの雰囲気は薄く、服飾ではなく大蔵家がメイン。
あっちはお嬢様の従者「小倉朝日」の物語でしたが、こっちはりそなのお兄ちゃん「大蔵遊星」の物語。
番外編というよりシリーズの完結編のような内容で、衣遠に絡む話はこちらをプレイして初めて色々と分かるようになっています。
前作よりは脇役勢の魅力がおとなしくなっていますが、衣遠と駿我が乙女ゲーの攻略対象みたいな雰囲気を出してて妙に魅力的でした。
それとアペンドの内容である前作のアフターストーリーが最高です。ルナ様好きはもちろん、何より衣遠兄様好きが大歓喜できる内容です。
《共通ルート》
共通の皮をかぶったりそなルート前半。アパートの面々がいい味出してます。
てかアパートの先輩のグラフィックがめちゃくちゃ好みなので微妙にあっちを攻略したくなりました。
朝日騎士団の面々も、前作朝日班ほどではないにしてもそこそこに味がありました。
アンソニーが準備した晩餐会での衣遠兄様は微妙にツボでした。ありがとうございます、お優しいコメディアン衣遠兄様。
《個別ルート》
一番良さそうなルートを最初に、二番目に良さそうなルートを最後にプレイしたいので、
りそな ⇒ 各種ノーマルエンド ⇒ エッテ ⇒ メリル の順に攻略しました。
以下、ネタバレあり。
・りそなルート
メインヒロインりそなのルートであり、衣遠のルートであり、大蔵家のルートであり、シリーズのグランドフィナーレでもあるルート。
それぞれの要素が非常に面白くて、思いっきり楽しませてもらいました。
色々混ざっていますが、ヒロイン個別ルートとしては、りそなの成長物語です。
日本での友人達の力を借りて遊星とともに大蔵家に立ち向かい、パリで築いた人間関係を支えに教室内での悪意に立ち向かう。
「ダメダメだった私が恋も家庭も服飾も全部うまくいっちゃったぜ」という進◯ゼミの漫画みたいなサクセスストーリー。
でもきちんと一歩一歩懸命に成長してるところが見られて、とても面白かったです。
また、全体的に声優さんは好演なさっていますが、ヒロイン勢ではりそなの声が特に好きです。本当にいい味出しています。
難点としては、母である金子が最後にブレすぎなところと顔グラが残念だったこと。美形兄妹の母親なんやから美形でええやん。あの顔で性悪って本当にただの嫌な奴やん。
それと、遊星のりそなへの気持ちがどう見ても恋愛感情じゃなくお兄ちゃんとしての愛だったこともちょっと残念です。
唐突に「この気持ちは恋だ」とか言ってますが、正直無理やりです。
今までも妹として大好きなまま何年も過ごして来たのですから、その感情の性質を変えるためには、りそなの魅力が劇的に出るイベントが必要だったのでは?
これは前作からそうですが、全体的に「人間として好き」から「異性として好き」に変わるためのエピソードが不充分なシリーズのように思います。
とはいえりそな自体は笑いも取れるメインヒロインとして終始輝いていました。
エロシーンでもりそなが一貫して「りそな」というキャラのままブレなかったのが良かったです。
一番最後のりそなと遊星のやりとりも、このシリーズの終着点に相応しいもののように感じました。
りそなルートをプレイする為に前作と併せて購入しましたが、その甲斐がありました。大満足。
・各種ノーマルエンド
ドイツの人エンド: 色んな人が不幸だけどバッドエンドでもあるので致し方なし。なにげにりそなルートでの「ヴァリーさんは視線を外すのがうまい」理由を回収。
黒執事エンド: 衣遠と駿我が好きなので密かに満足。乙女ゲーなら真エンドとして使えそう。
・エッテルート
エッテとのエロシーンがある以外はドイツの人エンドとそう変わんねーーーーー!
ノーマルエンドよりダメだったように思います。「このヒロインは気に入った女なら見境なしですか?」ってな印象も持ってしまいます。
「モデルの人」なのにモデルとしても活躍しませんし。
彼女が一番輝くのは、彼女の従者のルート。
・メリルルート
「大蔵家」としては一番大団円じゃねーの? と感じるルート。
総裁ないがしろで金子もフェードアウト。子供世代はみんな仲良し。大蔵家の落としどころとしてはベストですわ。
でも特別メリルはヒロインになりきれてないように思います。
メリルの無垢さと大人ぶりの両方が出ていて、それはそれで魅力的。しかし異性として惚れるかどうかというところは随分と弱いです。
このルートで輝いたのはメリルよりむしろエッテです。ほんのワンシーンですけど、ショーでのブリュエット様は最高のご主人様でした。
明るく真っ直ぐで優しいけど、傍若無人でややポンコツで年相応にワガママなお嬢様。
そんな彼女が共通ルートで語っていたように、メリルの作った衣装を自らのウォーキングで最高に輝かせていました。
どのルートでも終盤になるに連れて役立たずになっていくエッテですが、彼女の積み重ねてきたものが結実した瞬間だったと思います。
《アペンドディスク: 月と寄り添う乙女の作法アフターディスク》
なにこれおまけってレベルじゃないですありがとうございます。
ルナ様ルートと衣遠兄様ルート最高でしたありがとうございます。
ごめんなさい瑞穂ルートだけプレイしてませんありがとうございます。
とはいえ衣遠とりそなの距離感が微妙なだけに、個人的にはやっぱり乙女理論りそなルートが正史であってほしいと思います。
絶対にそんなことあっちゃいかんのでしょうけど、欲望丸出しで言えば七愛との本番シーンが欲しかったです。
湊に「私は今日生理だからゆうちょのお相手してあげて?」とお願い風の命令をされて断ることができず、
不倶戴天の遊星に処女を奪われながら「大蔵ァァァ……ッ!」と呪わしげに恨んでくれたらもう最高です。どんなシチュだ。
七愛はイキようと思った。
総括。
前作とは違ってこちらは完結編。色んなものが最後まで語られて非常に満足です。
前作含めてラストでの悪役の心変わりが都合よすぎな感は否めませんが、全体的には素晴らしい出来です。
このシリーズはもうこれで終了だと思いますが、東ノ助さん脚本の時は今後も期待します。