ErogameScape -エロゲー批評空間-

soulfeeler316さんのANGEL BULLETの長文感想

ユーザー
soulfeeler316
ゲーム
ANGEL BULLET
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
85
参照数
1151

一言コメント

2人の人間が愛し合えばハッピーエンドはありえない……? そんな事、誰が決めたんだ?

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今回は『ANGEL BULLET』についてレビューしていきたいと思います。
私の大好きなブランド、Liar-softに初めて入ったのはこのエロゲからでした。
なので、私にとってはとても思い出深いゲームであり、大変有難いゲームでもあります。
私の拙いレビューで恐縮ですが、読んで下さる心お優しい方はどうぞお付き合い下さい。


『ANGEL BULLET』
1889年、アメリカ、西部に1人の少女の姿があった。
彼女の名前はセーラ・V・ウィンタース
行方不明になった父、ジョージ・ウィンタースの姿を求め西部に降り立った若きガンマンである。
しかし、そこはダイムノベルで読んでいた西部と違い、銃弾の効かない魔物が跋扈する人外魔境だった。
乗っていた列車の中で魔物に襲われた彼女は絶体絶命のピンチ
そこで知り合った牧師、クラウス・スタージェスの作った魔法の弾丸によって何とか危機は脱するが、その弾丸を作るためには彼の「性的興奮」が必要である事を知る。
過去のある出来事からEDになった彼を勃起させる方法とは、マゾ行為を与えるという驚くべきものであった。
勿論そのような行為は断然したくないセーラ
しかし、ここは魔界の生物が跳梁跋扈した魔窟、魔法の弾丸無しではこの世界を渡り歩くことはできない……
悩みに悩んで、彼女は魔法の弾丸生成のため、クラウスのマゾ行為作戦に協力することにしたのだった。
セーラの父は見つかるのか? クラウスのEDは治るのか? そして、彼らに明日はあるのか!?
1人と変態、西部を渡り歩く彼らの運命の歯車は静かに回り始める……


ここからは私の個人的感想を書いていきたいと思います。
プレイ後の感想としましては、ただ1つ、とてつもない虚無感に襲われました(勿論良い意味)
このゲーム、エンディングの余韻だけで言ったら最高レベルの出来です。
前半のギャグで笑わせてくるシナリオ、後半のシリアスシナリオ、そして第2部、それが終わった後のかわしまさんの歌、I'll go there where you areが送るエンディング、そして少しの後日談
もう、完璧です……
怒涛の5コンボに私はプレイ後1週間、抜け殻状態となりました。
いつも『ANGEL BULLET』の内容だけ考えている状態で、少しでも和らげるために小説版を買ったのも今となってはいい思い出です。

シナリオはここでも賛否両論の出来ですが、私個人としてはとてつもなく楽しめました。
前半は短編集のように、1つ1つの依頼をクリアしていく感じで話が進み、その合間にギャグシーンや魔法の弾丸生成シーン(俗に言うエロシーン)が入ります。
クラウスがバカすぎて、セーラの突込みが的確過ぎて、ギャグには尽く笑わせてもらいました。
下ネタのギャグはやはりキャストの演技力が物を言う事を確信した次第です。
ただ、前半全てがコメディ風味かと言われればそうでもなく……
インディアンの差別や白人優位主義のキャラの登場など、暗くなりそうな展開は秘密裏に動いてます。
また、ユーウォーキーのシナリオは原作を知らなかったこともあって、少なからず衝撃を受けました。
後で原作を買ってみると、なるほど、確かに最後はあまりにも報われない。
このゲームにおいては、よく後半のシナリオが急展開だという人もいますが、改めてプレイしてみると、これらのシナリオを書いていた時点でエンディングはこうしようと予め決めていたのではないかと思います。
そういった酸いも甘いも飛び越えた、最高の幸せを求めて歩み続けるキャラクターをシナリオを通して描きたかったのではないか……?
私は今回再プレイしてみてそのように感じました。
うってかわって後半は西部がこのようなファンタジー世界となったいきさつを知り、悪役どもと戦い、闘いの日々を送り、セーラの父であるジョージ・ウィンタースを追い求めるシリアスシナリオ
ギャグやエロシーンもあるにはありますが明らかに数が少なくなり、代わって「燃え」成分を多く含む熱い展開好きには堪らない一品となっております。
バカゲーとして買った人にとってはかなりの衝撃を受けたのではないでしょうか?
幸いな事に自分はギャグも燃えも両方大好きだったので不調和を起こす事無く楽しめました。
まあ、それでも第1部のラストシーンにはかなり参りましたけどね……
これ以上は詳しく言いませんが、初見はかなりの確率で驚く事間違いなし!!
セーラへの愛着が一気に深まります。

そして第2部の【Potential for revival spin-off to ANGEL BULLET】
第1部では語られなかったクラウスの過去を織り交ぜた上で現在の彼と対比させ、尚且つ第1部の燃え要素を引き継いだ上でさらに昇華させた素晴らしい出来
愛故に、人はここまで変われる。
私がクラウスの変貌に驚きながらもどこか納得してしまったのは、第1部で彼の人柄、セーラとの関わりを知っていたから。
人間は大事な誰かを想う時、その強さは何百倍にまで膨れ上がる程の力を放つ。
少しご都合めいた言い方かもしれませんが、このゲームにおいてはぴったり合致するのだから不思議なモノです。
想いの力はあまりにも尊く、そして美しい……
深く悦に浸ったシナリオでした。
ただ、セーラED以外はあまり変わり映えのないシナリオだったので、ヒロイン一本の路線で行けば良かったかも。
しかし、変更点とかも数多く見れたりしたので、好評こそあれ不満点にはならないでしょう。
そして、第1部のラストシーンでセーラに言った言葉を最後に達成する所、本当にGOOD
このゲームの構成には不満無しと、はっきり断言出来る結果でした。

さて、ここからは手短に。
BGMも西部の世界観をうまく再現していて、改めてここのブランドはゲームの雰囲気を作るのが上手いと感じました。
もう少しバリエーションがあってもいいかなとも思いましたが、その点については次作の『SEVEN-BRIDGE』で解決したし、『ANGEL BULLET』でも無駄な曲と言うのは一切なかったので、十分な合格点と言えるでしょう。

CGについても私は味があって好きでした。
Liar-softの絵はある種独特な画風の方が描くゲームが多いので、個人的には下手とも感じず、楽しんで見れました。
ただ1つだけ言うならば、このエロゲでは抜けない!!

キャストの演技についても軒並み大満足です。
ロックンバナナのオーディションで選ばれた人もいるとあって、どのキャラも味のある雰囲気に仕上がっています。
一部怪しい人もいますが…まあ、及第点でしょう(笑)

さて、ここまでファンも驚きの高評価レビューを書いてきましたが、1つだけ、どうしても納得できない点があります。
何故、なにゆえ、パートボイスなんですか!?
いや、Liar-softはほとんどパートボイスで進行しているゲームばかりなのは知ってます。
しかし、それでも第1部最後のシーンは声付きで見たかった……
声がついてたら、きっと泣いていたと思います。
残りの15点はもしフルボイス完全版が出たら埋まる事になるでしょう。


以上で、レビューを終わりたいと思います。
久しぶりに腹いっぱい笑いたい方、熱い展開をご所望の方、物寂しい余韻を味わいたい方
このゲームをやって共に西部の世界へ旅立ちましょう!!
土下座調教の旅、今こそ、始まる!?


初見時、OPがないことに戸惑ったのは私だけでしょうか…?

PS.
ユーウォーキーの原作についてはR.Paltock "Life and Adventures of Peter Wilkins"
日本語訳ではポルトック『ユートピア旅行記叢書〈第7巻〉ピーター・ウィルキンズの生涯と冒険』があります。
興味のある方は是非!!