人生を愛する事と、人生に貪欲な事には、微妙な違いがあります。
これは、新たな『物語』構造で紡がれた「物語(じんせい)」
☆私のプレイ順
燕ノ子安貝→龍ノ頸ノ五色ノ球→火鼠ノ皮衣→仏ノ御石ノ鉢→蓬莱ノ玉ノ枝
個人的には上記推奨だが、無理にこの通りと囚われる事もない。
※
構成上、ルートの核心にまで触れております。
なので、まだ最後までプレイしてない方は、クリアし終えた後に読む事を推奨します。
また、お気に入りのキャラの分量が少ないと感じたならすみません。
恐らく私にとって語りたい事が無かっただけの話なので、どうかご容赦を。
そして最後に、これはあくまで自己満足的な一個人の解釈であり、断定できる物ではない事を予め、ご了承下さい……
【目次】
1.真相へと至らせる4つの難題(プレイ順)……難題:蓬莱ノ玉ノ枝以外の感想、駄文
2.「通過儀礼?」の物語……俯瞰して気付く本作の視点、これは英雄(=大人)の物語では無い
3.消えた世界、消えた月、消えた少女、消えたイニシエーション……難題:蓬莱ノ玉ノ枝で感じた事
4.不満点……構成上、ここで1つに纏めました
5.それぞれのヒロインの感想……好み色々、欲情色々
6.後記と言う名の戯言……いつもの如くの着地の言葉、戯言
1.真相へと至らせる4つの難題(プレイ順)
①燕ノ子安貝
運命に踊らされた一人の姉妹が紡いだ、非人道的な禁忌が生み出した、写し子の世界の物語
男は初恋の人の面影を追いかける、とよく聞きます。
今好きな人は、昔から好きな女性
今お付き合いしている人は、昔の初恋相手によく似た女性、なんてざらのざら。
なんでも人間が誕生した時代からの、男女の役割的特徴が関係していると言う、環境適応論的な説もあるそうな。
が、そんな事はお構いなく、私達は過去の甘酸っぱさへ、屡々の浸りを繰り返します。
忘れ難し、愛しの女
男にとって、初恋の女性とはそんな正しく非常に特別な存在なのです。
だったら、主人公である沖名君だってなけなしの男
やっぱり1番最初に気になるのは、初恋の女性一択でしょ!?
と言う事で真っ先に選択
結果としては、最初に選んで間違いじゃなかったと、断言出来る結果になりました。
唯一、度々悶死しかけたのも、今となっては良い思い出です。
肝心の秘密についてはもう公式サイトでネタバレされていたので「うん、知ってる」って感じでした。
が、それにしても、まさか二段構えだったとは思わなかったですねえ……
それじゃあ、主人公も気付かない訳だ。
服もちょくちょく変えてたしね、つばめさん
難癖よりも納得の方が大きく出た、個人的には別に不満もない展開でした。
実を言うと、私はこの難題もといルートが4つの中で1番好きですね。
それは、主人公達が唯一、ヒロインも一緒に過去へと連れて行こうとしたシナリオだから。
これ、結構好きになった要素として大きい気がします。
このルートだけなんですよね。
一緒に過去へ戻ろうと勢いづく、そして断られたら共に残ろうとする、そんな両方の気概を持った主人公が見られるのは。
後、記憶が消えていく回想シーン、これもこの難題だけ。
死への旅路によるしょうがない別れよりも、こっちの方が断然胸に来るんです。
ヒロイン側が望んで口にした事を、完膚なきまでには否定できない悔しさ、切なさ、哀しさ
そして、それを受け入れなければいけない、強さ
そんな哀愁漂わせながらも、前を向きつつ、大事なモノが消えていく。
そんな「大切」が消えると明言されながらも前を向く、私はこういうの凄く好きです。
美衣奈ルートもその点においては、非常に良く似ています。
ただ、美衣奈を過去へ連れて行こうとするまでの気概は、主人公自身、持ち合わせていませんでした。
最初に惚れた強み or 最初に惚れられた弱み
なので、この難題と比べると、少し中途半端だった感が否めないのです。
いずれにせよ、つばめさんルート、最初にやって良かったと思います。
②龍ノ頸ノ五色ノ球
世界の秘密に迫るイレギュラーだった想定外の女性と共に過ごした、二度なき世界の物語
最後は幼馴染にしようと決めていたので、挟まれた2人はどっちが先でも良いかなって感じ。
じゃあ、1番共通ルート時点で関わりのなかった人を選ぼうと思い、選んだのは瑠衣さん
そんな物語は、友人達とほぼほぼ関わらないと言う難題
正直、ここまで彼等の影が薄くなるとは思わなかったので、びっくりしました。
デート時なんか絶対割り込んでくると思っていたのに、結構プレイ中は拍子抜けした次第
他の個別ルートと違って、異質な部分が光った難題でした。
最後は不死の薬
半分こには出来ず、1人にしか使えない。
そして、過去に戻らなきゃいけないと言う使命がある。
まあ、輝久夜に使うだろと普通に思わせてきます。
葛藤出来なかった自分って、結構冷たい奴だなと思いました。
③火鼠ノ皮衣
新しい出逢いがもたらした、兄妹と非情なる者達が織りなした、偽りの世界の物語
そして、次に来るはどちらでも良い2人の片割れ
1番ワクワクするルートって言えば、恐らくこれでしょう。
十二単衣に潜入して内情を暴くと言うミッション:インポッシブルな展開になっております。
出来る事なら、十二単衣を圧倒して見せる展開がもう少し欲しかった所ですが、まあ、数週間じゃ無理だわな。
あいつら、ちょっとチート過ぎるし、性格も何だかんだ言ってやっぱり狂ってる功利主義者多し。
寧ろ、あの短期間で一部を仲間に引き込めたのは、御の字と言ってもいいんじゃないですかね。
後、作中で明言されませんでしたが、十一さんってもしかしてももしかしなくても、あの人だよなと思わずにはいられない。
また途中、主人公は「私」の夢を見ますが、この難題を3つ目に持ってくると、その中身に対する理解がしやすいように出来ています。
丁度「セレネ」の話題が初めて出る難題なので、そこはラッキーでした。
ところで、友達とのキスシーン見られそうになった相手が、初恋の女性と現惚れられている女性
何か、悪意の運命を感じますねはい。
よく修羅場にならなかったと思いますよ、ああ、怖い怖い。
④仏ノ御石ノ鉢
幼き頃より共に過ごし、惹かれ合った男女が結ばれ、悲しくも別たれた世界の物語
実は、冷静に俯瞰してみると1番何も出来ていないし、やっていないルート
まあ、浮老さんの能力が強過ぎるからしょうがないんですけど、それにしても見事にやってない(笑)
正直、美衣奈の豹変についての真相も、肩透かしを食らいましたしね。
拍子抜けなかったと言えば、嘘になります。
でも、終わってみるとそんなに悪くないと思えるルート
ってか、2番目に好きになった難題であります。
つばめさんが違うと分かっていたので、この娘は絶対、途中で本性を表すシーンが出てくると思っていたんです。
実は幼馴染では無い……
唯一主人公を利用している利己的人物だった……
敵側の内通者として暗躍していた……
上記のような事ばかり思い浮かべていた私だったので、この展開はまあ、期待外れとまでは言いませんが、確かに思っていたのとは少しばかり異なっていました。
でも、私、特定の人物だけに愛が重い娘って、結構好きですよ。
ヤンデレとまではこの娘の場合、間違っても言えませんけど。
難題:火鼠ノ皮衣において、他の女の子とキスしそうな所を見ても、顔色を変えなかった理由も分かった次第
いや、しかし改めて見ると、美衣奈は充分人間出来てると思います。
私はてっきり『CROSS†CHANNEL』の冬子シナリオのようになるかと考えていたので、よく最後納得したなあと感じた瞬間でした。
この娘は、愛の本質を良く分かっていた……と言う証明でしょうか。
総じて、彼女の主人公に対する想いの強さは非常に現れていた難題でした。
ただ、2人の過去はもっと掘り下げてくれても良かったかなあ……
しかし、最初に語った難題:燕ノ子安貝然り、これ然り、それぞれがヒロインの秘密に迫るという難題なので、デート展開はあまり異質に取られないのが良いっすね。
秘密を暴くために行動している彼を、こんな時にデートしやがって……と発言するユーザーは流石にいないでしょう。
前置いて発する建前、社会においては凄く大事
2.「通過儀礼?」の物語
この『消えた世界と月と少女』と言う作品は、振り返ってみると「通過儀礼」を巡った戦いの記録だったように思います。
本作をプレイしていると、常にその概念は頭を掠めるのです。
「通過儀礼」
それは、フランスの文化人類学者であり、民俗学者でもあったアーノルド・ファン・ヘネップ(アーノルド・ヴァン・ジェネップ)の提唱した用語
誕生、成人、結婚、死亡等の各段階を表す人間の生涯
古来より、それらを通過する際には儀礼を行う事で、社会的地位や役割を変えてきたとする定説の総称です。
世界各地に残る神話や伝説、民話に昔話は、主に「通過儀礼」をモチーフにしています。
有体に申せば、子供から大人になる話
例えば『桃太郎』
犬、猿、雉の助力を得て、鬼ヶ島へ行って鬼を退治する、誰もが知ってる日本民話
これはいわば、英雄(=大人)になるための試練(=鬼退治)へ果敢に挑んだ男の物語……と、捉える事も出来ましょう。
最後に貰った報酬は、彼がもう爺婆に守られる子供では無くなった証明
故郷に錦を飾るための鬼退治こそが『桃太郎』においては、1つの通過儀礼と言えるのです。
例えば『英雄ペルセウス伝説』
ゼウスの血を引く英雄ぺルセウスが、怪物メドゥーサを倒し、生贄とされかけていたアンドロメダ姫を助けるギリシャ神話の一幕
ポリュデクテースの陰謀で、母ダナエーから遠ざけられたペリクレスが大人になる物語
『桃太郎』同様、試練を終えて、故郷に錦を飾っています。
例えば『シンデレラ』
これだって不遇な環境にいる事しか出来なかった、庇護された子供の独り立ち物語とも解釈出来ます。
継母達に虐められていたシンデレラが、魔法の力を使って、王族への仲間入りを果たす寓話
生活苦時代を成功の為の試練として捉えたら、些か面白い分析になるでしょう。
まあ、この御話は儀式自体が特に見つからないので、本当にただのモチーフと捉えられましょうが……
いずれにせよ、上記の如く「通過儀礼」をテーマとした、又は根底に据えた作品は少なくありません。
本作も最初の構成としては例に挙げた物達と同じ。
思えば、最初の頃から、ちょくちょく、主人公が口にしていたワードがあります。
それは「大人」と言う言葉
「母の死の真相を知り、それによって区切りをつけて『大人』になる」
そういった思いを背負って望郷の村、大和国 広瀬郡 散吉郷へと戻ってきた主人公、沖名 誠司
彼は上記であげた物語達より、確固たる「大人」への目標を持って臨みに来たと言えるでしょう。
父との会話や独白等、様々なシーンで大人になる事への意思が伝えられてきました。
ただ、問題はその思いを「通過儀礼」へとさせてくれなかった妨害者の存在であります。
言わずもがな、彼等の名前は十二単衣
「通過儀礼」と言う概念を利用して「死の儀礼」を濫用する真っ最中の状況でした。
「死の儀礼」
個人を生者から分離した後、別の世界へと統合する、通過儀礼においてはお決まりの儀式
十二単衣達のやっていた「器の儀式」と言うのは、その概念を利用して生まれた殺人と捉えられます。
それぞれの身体の一部を取って、新たなかぐや姫として再生させる。
儀礼的、象徴的な死とそれに続く誕生
所謂「死と再生」をあくどい手法で活用する事で、彼等は共同体を存続させようとしていたのでした。
母の死の真相を知り大人になるという「通過儀礼」を胸に帰ってきた沖名君
それを、器の儀式と言うかぐや姫再生のための「通過儀礼」で押し潰そうとする十二単衣
しかし、死の間際にいる彼にとって、これは通過儀礼とは呼べません。
通過儀礼とは「通過」出来る「儀礼」なのだから、成立する概念
試練そのモノでなく、試練をくぐり抜けたという経験が重要
なので、彼は無理にでも「通過儀礼」を達成させようとしました。
過去に戻ると言う禁忌の手法を利用して……
そして、それぞれの個別ルートでは、ヒロイン達の「通過儀礼」をも果たす事で、自らの「通過儀礼」を推し進めていきます。
つばめさんは生き別れになった妹の探索及び和解
瑠衣さんは親友の死に対する受容
杏子は兄との対話を通しての意志の発見
美衣奈は依存対象への脱却
1つの大きな「通過儀礼」にあった4つの小さな「通過儀礼」
「通過儀礼」の入れ子構造で繰り広げられた世界で、漸く彼は最後の自らにとっての難題
蓬莱ノ玉ノ枝へと向かうのでした。
3.消えた世界、消えた月、消えた少女、消えたイニシエーション
そして、全ての「通過儀礼」は灰燼に帰します。
全部が偽者だと知った時、彼女達の「通過儀礼」にも、自分の「通過儀礼」にもあった、あらゆる意味が消失しました。
全てがお膳立てされた世界に成長は起こりません。
全てが予定調和の茶番だった場所に、育成なんて存在しないのです。
それを知った時に彼が選んだ選択は2つ
①現実を受け入れ、未来を創る(輝久夜ED)
これは、主人公がそんな世界で大人になる事を「択んだ」選択肢
死んだ者は生き返らない。
だからこそ、生きて彼等の思いを継がなければいけない。
彼等が正しかった事を証明しなければいけない。
それは、自分達だけでも「通過儀礼」を突破しようとした表明に他ありません。
この選択は、彼だけでも大人になったという事
いや、大人にならなければいけないと言う決意
この「世界」が変わらずに紡がれるとしたら、この選択肢を選ぶ他ないでしょう。
ただ、主人公と輝久夜の2人がこれを選んで、本当に幸せになれたかどうかは分かりません。
最後までこの物語は描かれていませんので。
負けない決意をした所で、物語は終了
希望を手にした彼等が、最後まで失う事無く、歩き続けられたかは分かりません。
でも、幸せになれなくても、そこに後悔はないでしょう。
択んだんですから、自らの選択を……
諦め良く、見据えた未来を選んだのですから。
後悔しては、死んだ者達に失礼なのです。
最初にこのルートを見た時は、見事に既存の神話や昔話スタイルの展開をなぞっていると感じました。
母の庇護の元から離され、通過儀礼と言う名の戦いを突破し、愛する者を見つけ妻に迎える多くの神話
その流れを見事に踏襲したルートであり、個人的には特段語る事もありません。
②過去へ戻れる、奇跡を願う(グランドED)
これは、主人公がそんな世界で大人になる事を「否定した」選択肢
死んだ者は生き返る、本当に時を戻せたら……
主人公達は、彼等の思いを継ぐ事よりも、彼等自身の実体を望んだ。
正しい事なんて言う思いの証明よりも、もっと彼等と一緒に居たい。
それは、特段おかしい事じゃない。
「通過儀礼」を突破して得られる成長より、大事なモノなんて幾らでもある。
この選択は、仲間達が戻らないなら、子供のままでいいという決意
大人になる決意より大事な事を選んだ、実に泥臭い答えでした。
「世界」が変わったのは、その我儘さが織り成した軌跡と言えましょう。
個人的に感銘を受けたのは、①より②
この選択を択んだ後の展開、これって凄く面白いなと思ったんです。
だって「通過儀礼」で全て進行しておきながら、最後にその重要要素を全て突き放しているんですから。
彼等は脱却しているんですよ。
普通だったら①のようになるであろう、作中が織り成す予定調和から…
そして、神代から続く昔ながらの物語が紡いできた予定調和からも……
こんな凄い事は無い。
こういった構造をした物語って、実を言うと非常に少ないので。
多くの神話と言うのは、母の庇護の元から離され、通過儀礼と言う名の戦いを突破し、愛する者を見つけ妻に迎える。
これは、上記で既に説明しました事
しかし、この選択後の展開は、その全てとほぼ真逆の方向へ、見事進んでいるのです。
母親の元へと帰り、通過儀礼は突破せず、愛する特定の誰かより友人達を択んだ。
思えば、最初の頃から主人公って、本当に大事なモノは分かっていたんですよね。
「通過儀礼」をするまでもなく、彼は既に大切なモノを把握、理解していた。
そこに「大人」への道程なんて、これっぽっちも要らなかったのかもしれません。
「子供」が「大人」より、よく分かっている事だって、この「世界」いっぱいあるんですから。
最後の選択肢は言ってしまえば「大人になる? ならない?」と言う質問
どちらを択ぶか、好むか……
「通過儀礼」をどう捉えるかは貴方次第
ただ1つ言えるとするなら……
人生を愛する事と、人生に貪欲な事には、微妙な違いがある。
ただ、それだけです。
4.不満点
ここでは、どうしても許容できなかった部分をちらほら。
(1)キャラが多すぎる
恐らく、本作をプレイした方がまず実感するのは、この不満だと思います。
十二単衣の数がまあ、とにかく多すぎる。
12人は、流石に上手く使うのは無謀でしたね。
ただでさえ多いのに、表裏に分かれているので、如実に出番頻度に大きな差があります。
超重要な要素が最終ルートから登場と言うのも、ちょっと擁護できないなと感じました。
後、個人的意見としては、部活メンバー間にも全体を通して出番の差があるなと言った感じ
個別ルートに入るとそれは尚更
上手いさじ加減で見せ場を作り上げるのはやっぱり難しかったのでしょう。
まあ、それでも男キャラや他のヒロイン達と程良く絡めて、作られたモノも見たかったと切に感じました。
瑠衣さんは、うん、あれはしょうがないですね。
(2)最後のED
正直、私としては、どちらのEDにも少しばかりの不満はあります。
①現実を受け入れ、未来を創る
やりたい事は非常に良く分かりました。
問題は過程ですよね……
説得力に足る証明が十二単衣に出来たかと問われれば、判断の難しい所でございます。
個人的にはまあ、分からなくもないかなって所ですかね。
杏子ルートで意外に彼等、御しやすいって部分もありましたし。
寧ろ、私は上記よりED後が少し気になりました。
いや、あそこで突っ込むならエロシーン要らなかったわ……
一気に興醒めしてしまい、この時ばかりはカットモード使っておけば良かったと後悔した次第です。
後、どれだけ言い繕っても、結局はこのEDって「俺たたエンド」なんですよね。
ちょっと不完全燃焼だったなと思います。
②過去へ戻れる、奇跡を願う
正直、EDまでは完璧だったと思います。
好みは分かれるでしょうが、個人的には凄く好きで、輝久夜に思い入れのなかった自分でもグッときてしまいました。
そして、だからこそ、ここで憤慨したいと思います。
なんで、輝久夜を復活させたんですか!?
いや、あれはね、ビターエンド位で丁度良いんですよ。
最後に皆の心の中に輝久夜が帰ってきた。
それで主人公は「おかえり」って言った。
そして、今は友人達と共に、輝久夜を心に宿しながらも生き続ける……
これで良いんですよ!!!
まあ、ちょっと位あっても、別に良いです。
「もう1人誰かいなかったっけ?」みたいな、ありきたりだけど胸に来る言葉表現
寧ろ、そういうのあったら更に良くなったかもしれません、やり方次第ですが。
ただね、復活はダメでしょう、ダメダメです……
この最後の選択肢とは、言わばどちらを選んでも辿り着けない対比だったんです。
「大人」になって生きるか「子供」のままで死ぬか……
結局はどちらかを捨てるやり方に他ありません。
①では、友人達が全員死亡してしまった代わりに、輝久夜と「セレネ」の対処に当たりました。
だったら、②では輝久夜が身を犠牲にして作り上げた世界を、友人達と共に謳歌し生き続ける。
それで良かったんです、そういうのがいいんです。
寧ろ、心に残る展開は、ビターな位の方が的確
これでは結局、どちらも輝久夜に得する運びとなり、彼女の犠牲も薄っぺらいモノとなってしまいます。
いやあ、惜しいなあ、ホント惜しい。
(3)過去のシーン
後は、子供の頃の思い出やら昔あった出来事やらを、もう少し作ってくれても良かったかなあ……
そういったものは、あるかないかで格段に見方や思い入れに変化が生じます。
ノスタルジックとは、須らくそういうものなり。
もうね、これはFDでもいい。
後付けでもいいから欲しい所でございます。
5.それぞれのヒロインの感想
(1)御石 美衣奈
どこぞの竜宮のお嬢ばりの顔芸を見せつけてくれた美衣奈さん
ただ、幻覚とは言え、終わってみると、彼女よりは常識持っていて、一安心した次第です。
いや、引き合いに出したあの方は、症候群になっていなくても可笑しい所随所にありましたからね。
美衣奈さんなんて、まだ可愛いもの、赤ちゃんみたいなもんです。
エゴイスティックな一面は両方等しく揃えてありますが、私は断然、美衣奈の方が好き。
些か危うい雰囲気を持ち合わせていながらも、最後まで彼女は狂わなかったし、主人公を見捨てませんでした。
それが例え、依存の産物であったとしても、やっぱり彼女は人間出来てます。
彼を犠牲にする程には自分大事でなかった彼女が、これまた酷く愛おしいのです。
お人好しと思われる程には、お人好しでなかった美衣奈
でも、彼女においては、それでいい。
それ位が丁度良い。
私はそう思います。
後、クリア後に見れるオナニーシーンの可愛さはちょっと卑怯
あんなん見せられたら、好きになっちゃうじゃないですか、勘弁してください。
(2)火鼠谷 杏子
悪い娘ではありません、ないんですが……
杏子の話題をすると、必ず武留の事を思い出します。
私にとって、彼等は十把一絡げ、『饗宴』のアリストファネス
要するに2人1組みたいな感覚なので、個人的には「どうぞどうぞ」と差し上げても良い衝動に駆られるのです。
好きだと公言されてる相手を奪うって、どうも嫌いなんですよ私
奪われるのも嫌いですけど、奪うってのも嫌いなんです。
これでいいのか主人公、それでいいのか武留って感じで、ずっと進行していました。
でも恐らくそう思うのは、自分があまり、この娘を魅力的に感じなかったからだろうな。
好きになったら、意地でも渡したくないんだろうし。
実に切ない男心、悲しき事実でございました。
しかし、ヒロインとしては見れませんでしたが、仲間としては結構好きです。
(3)子安 つばめ
もう、大好きな娘
シナリオの都合上、ベストを何回も連ねたりはしませんが、本作のヒロインだと1番好きです。
私もう好きすぎて、彼女の出てくるシーンだけはセーブに余念を欠かせませんでした。
胸を揉まれたり、やきもちを焼いたりする過程で、子供っぽくなる所が好き
自分に自信なくて気合入れ過ぎちゃって、でもそのせいで、逆に周囲の目が気になってしまうそそっかしさが大好き
そして、いつもはしっかり年上っぽく振舞ってるから、ホントこの人堪りません。
これがギャップか、ギャップ萌えって奴なのか?
その上、本当は敬語キャラって、どれだけ私をギャップで苦しめたら気が済むんですか!?
Oh, my GAAAAAAAAAAAAAAAAAAP!!!!!
と、叫びたくなる位には気に入ったキャラでございました。
いやあ、やはり初恋で、年上の、優しい、お姉さんと言うのは、本当、素晴らしいですね。
後、顔立ちや髪型が凄い俺好みだった(←ここ重要)
そもそも、何故ここまで彼女の事を好きになったのか考えるに、ヒロイン好み要素の有無が挙げられましょう。
私、結構好意的に思うヒロインって分かりやすい方で「幼馴染キャラ」や「妹キャラ」を代表とした、主人公の傍にいる人ってのが好感度上位に君臨する傾向にあります。
最初から私を見てくれていた。
自分の傍でずっと見守ってくれていた。
この年になると、それだけで結構クルものがあります、困ります。
で、つばめさんも主人公と小さい頃から関わりのある女性なんですよね。
これはもう、第1、第2に続く、第3の年上幼馴染と言う立ち位置で宜しいと、脳が勝手に認識してしまった結果なのでしょう。
そんな解釈に、温かい声やら穏和で優しい性格やらボブカットを基点とした可愛らしいビジュアルやらその他やら、様々な私好みの要素も合致したのでしょう。
幼馴染って事は、もしかすると、椿さんとたまに入れ替わって、皆と遊んだりしてたんじゃないですかね。
沖名君の知らない内に……
それを思うと、プレイ後の私は少しばかり切なくなってしまうのです。
まあ、何はともあれ今回、葉月 詩織さんのファンに目出度く相成りましたので、これからもチェックしていこうと思う所存です。
そして、もしFDが出るのなら、ここで見越して忠言しておきましょう。
もっと出番増やせ。
(4)五色 瑠衣
初々しい女子
探偵キャラってのは大抵、ヒロインだとムカつく事が多かったのですが、この娘は別
中々どうして可愛らしい所のあるお嬢さんではございませんか。
惹かれる程には至らなかったけれども、微笑ましく見守りたい印象を与えてくれた。
新たな癒し系女子でありました。
まあ、付き合いたいかと問われれば、また別の話なんですが。
(5)麗 輝久夜
非常に勿体無い娘だったなと、まずは一言申し上げたい。
正直に申しますと、私はあまり彼女に興味と言うか、可愛いという衝動は感じませんでした。
ぶっちゃけて言うと、性欲は全く感じませんでしたね。
代わりに庇護欲は悪くない程度に表れましたが……
なんせ、立ち位置が微妙なんです、この娘
主人公と共に惨劇を乗り越えようと、意気込んでいたのは良い。
ただ、はっきり言って、彼女が頑張ってると感じた事は全くなかったのが大きい。
描写が少ないんですよね、一緒に乗り越えていると言う感慨が全く沸かないんです。
ただ、そんな私でも、最後の展開は初見時、涙腺に響く物でした。
唯一、最後のグランドEDだけは、彼女が頑張ったと思えるモノだった。
それだけで高評価に至るのも納得
でも、もっと魅力溢れる描き方がされていたらなあ……
そう思わずにはいられません。
6.後記と言う名の戯言
昔話のように一方的でない「通過儀礼」に囲まれた世界での戦いを描いた物語
その実態には、恐らく賛否両論が巻き起こるだろうと薄々感じておりました。
体験版をプレイして感じた事の中にあったのは、本作が「伝奇」であって「伝奇」ではない事実
全てをカテゴライズして、分かりやすく内容を語る必要の大きい社会で、色々な要素詰め合わせは、この時代、確かに相容れません。
しかし、最後までプレイすると、そんな多くの要素は意外にも上手く作用していました。
そして、その集合体で作られた作品の本質は、非常に単純
「日常の尊さ」
「友情の素晴らしさ」
「愛の深さ」
「生の誇らしさ」
書き連ねるならこんな感じ
そんな本作をプレイして「茶番」と苦言を呈する方もいるでしょう。
「つまらない日常」
「薄っぺらい友情ごっこ」
「響かない愛」
「くだらない人生」
批判を揃えるならこんな感じ
しかし、私は怖くなります。
そうやって否定し続けたら、それこそ何も残らないんじゃないかと恐ろしくなります。
くだらないと思われた事でも、愛していたい。
つまらないと感じられたモノでも、大切にしたい。
そんな作品って、十中八九必ずあるのです。
だから、私はこの作品を好きでいたいと思います。
茶番でも、友情ごっこでもいい。
馬鹿らしくて、寒々しくて、目も当てられない臭い展開だったとしても構わない。
私はそんな馬鹿らしさと、寒々しさと、臭さに、心を動かされたんですから。
忘れてはいけない「ごっこ」を思い出させてくれた。
そんな本作に少しばかりの感謝を。
痘痕も靨
実に、悪くない言葉だと思います。
☆店舗特典
ソフマップ
1冊のH本を巡った、美衣奈と輝久夜のドタバタ大騒動
輝久夜の天然ドSぶりが垣間見れます。
そして、兎さんは本当に、駄目なお姉ちゃんですねえ……
笑えながらも興奮できる、中々良質なドラマCDでした。