イカれテンポ感からの、高濃度なネタとギャグを浴びるように読める良作。〆も良く、面白さの失速がこの手のキャラゲーにしては著しく少ないのが最高。
最初に
"イチャイチャしつつも、一切テンポ感を損なわず良質なテキストを浴びるように読める理論値的キャラゲー"
→自分はこの作品をこう形容したくなってしまう。「言いすぎだろアホ」と思う方もたくさんいるかもしれないが、マジでそう思ってしまったので、しょうがないわけで。
開幕の掴み
・クラスの憧れの女の子と紆余曲折合って同棲生活を始めました!という超シンプルなあらすじから始まるのだが、この掴みの書き方が説明臭さを上手いこと隠しつつテンポよく描かれている。
→余計な描写は最初の段階で挟まない。「憧れのクラスメイトがいます!謎の魔物に襲われます!憧れのあの子が助けてくれるけど…?」本当にこれだけ。
故に導入にタイムラグを感じさせない作り。キャラゲーにはよくある序盤のダレが一切なく、この時点でハートをつかまれてしまう。
→主人公とヒロインがまとめて瀕死状態になるのだが、あっさり死にかけてしまう理由も納得できる。
主人公はユニークさはあるものの、実際は非常に常識的な人間で、未知の存在から回避行動をとるのは当然。ヒロインは非常に尊大で慢心しやすい性格で、また根っこは純粋ないい子である。故に最初は舐めてかかりやすく、このようなあっさりとした展開になるのは納得がいく。
→瀕死になった後も、グダグダせずにすぐ次の展開へ移る。故に読みやすさ倍増。
・センスあるテキスト
→大三元や国士無双など、急に挟まる麻雀用語等、この時点ですでにいろいろ小ネタの仕込みが多そうなテキスト。
ギャグ路線であることを程よく認識できる。
→敵を前にした主人公の感想が「キモいゆるキャラ?」である。もうこの時点で主人公がユニークな感性と性格をしていることがわかる。余談ですが余りにも面白いテキストすぎて3分ぐらい笑ってました。
キャラ付け
・上泉夕里というイカれ面白ヒロイン
→スターズという組織に所属し、本作の敵キャラであるデーモンと戦う主人公憧れのクラスメイト。
その実、性格は尊大でお調子者。好きな言葉が天上天下唯我独尊。もうこの時点で面白い。
→そのくせして実は純粋で、よく図に乗っては失敗してしまう。
作中ではその性格が災いし、"給料がマイナス査定になってしまう" "格下と思っていた後輩に模擬戦で負けてしまう" ”先物取引で資産を溶かす" "主人公にたびたびゲームで負ける" "税金の計算に失敗する" "敵の親玉に操られてしまう"……などやや締まらないキャラクター。
→この残念なキャラ付けを語るのに書かない要素が、彼女が重度のベイスターズ(作中ではベイス、ハマなどと呼称されているが十中八九横浜ベイスターズ)ファンであること。おそらくスターズからとられている設定なのだが、なぜかこれがあるだけで、残念キャラであることの説得度合いが増す。謎。
好きすぎて自分の必殺技にもベイスターズの名前を取り込んでいる。ベイスラッガーヤベイスパークなど。
→しかし、やるときはびしっと決める存在感とカリスマ性がある。
後輩である鹿子からはそういった面を慕われている。また、一度スイッチが入ると徹底的にやり遂げるし結果もしっかり残す。実際作中でも圧倒的に強いキャラとして描かれており、見ていてとても信頼できる。
→掛け合いが面白い。やや天然ボケの性質があるため、ユーモアに富んだワードチョイスを持ち、かつ常識的な主人公のツッコミとうまくかみ合って恐ろしいほど面白くテンポのいい会話文が読める。
→デザインも抜群によく、金髪というセオリーど真ん中のビジュアルに、作画のかんなぎれい氏のカジュアルな画風がベストマッチ。
・豊富なパロディ
→あまりにも範囲が広く、正直全部は拾いきれていないが大量に存在している。
→わかりやすいところだと米津玄師、アンダーテール、パワプロ、アベンジャーズなど。ややニッチそうなところだとハイスコアガールなんかもある。流石にわからん。
・展開の面白さ
→ギャグ重視かと思いきや、見せ場はしっかり面白い。
派手なエフェクトで盛り上がるバトル演出がいい感じに楽しい。戦闘ですらテンポ感が良く、適度に楽しみながら見ることができる。
→ピンチになってしまう展開もそこそこあり、いい具合にハラハラできる塩梅も素晴らしい。
総評
→本当に最初から最後まで楽しく遊べるキャラゲー。ストレス要素がほとんどなく、気持ち良く見て気持ち良く終われる。余りにもキャラゲーの在り方として理想的。愛してます。