ErogameScape -エロゲー批評空間-

slav23さんのアンバークォーツ ~Amber Quartz~の長文感想

ユーザー
slav23
ゲーム
アンバークォーツ ~Amber Quartz~
ブランド
コットンソフト
得点
75
参照数
582

一言コメント

よい意味でもわるい意味でも挑戦作。ノベルで補完を。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

レコンキスタ以後、期待していたコットンソフトの偶数作品。
学園ものがどんなシリアスストーリーになるのかと思いきや
何と異能力バトルゲーに。

自らを慕う女学生なゆたと平和な日常を過ごしていた主人公、
しかしある日幼馴染たちとの再会と同時に人を喰らい記憶と
姿を再現する異形の怪物との闘いに巻き込まれます。その
闘いの中、主人公は怪物の秘密とともに失った大切な幼馴染
の記憶を取り戻していくのでした。

非日常的要素を絡めるコットンソフトの偶数作品群第2弾。
新基軸のバトル物への挑戦の意欲は悪くなかったのですが、
問題はバトル物であるという情報が体験版やゲーム雑誌を
含めて徹底的に伏せられていたところでした。多くの
プレイヤーは事前の情報から作品の世界観を把握し、
その中で展開の巧拙を判断しますが、共通ルートの時点で
いきなり世界観が揺さぶられたために裏切られたと考える
人も多かったのではないかと。

私は「レコンキスタ」からこうした超常展開を予想していた
ため、比較的すんなりと幼馴染グループが解散した理由や
コトとなゆたの関係性等の謎に頭を切り替えられました。
話の展開も悪くなく、ウナトミー氏が担当したと思われる
先輩の過去となゆたの現在の√は伏線を解消する根幹だけ
あって楽しくプレイできたのですが、複数ライターによる
サリナ√が蛇足的に感じられてしまいました。後日に発売
されたノベルでの怪物の「寂しさ」を主題にした
話がゲーム本編であったならと悔やまれます。

ただ、この作品での反省点が後に6弾「終わる世界とバースディ」
において、事前の複数ライター公表や納得できる主人公たちの
現実的な知略戦に活かされたのは記憶に新しいところです。
また、佐藤さんのOPや本作を業界デビュー曲としたμさんのEDは
共に良曲です。のみならず、両方の歌詞がストーリー展開と密接
にリンクしており、ラストでこれらの歌が流れた時にはウルッと
させられました。この歌詞とシナリオのリンクも「終わバ」で
踏襲されていきます。ある意味で将来の飛躍への序曲となった作品と
言えるのかもしれません。

お気に入りキャラはメインヒロインのなゆたを。自らのアイデン
ティティーに揺らぎながら大好きな主人公や幼馴染たちの元へ
帰ろうとする彼女に一票ということで。

蛇足;上記で言及しているノベルとは、彩文館出版から2009年12月
に刊行された「アンバークォーツ~少女たちの謝肉祭~」のこと。
気になる方はぜひご一読を。