貴様には、虹が見えているか?
最初に言っておくと、僕はるい智ラインの大ファンだ。
日野亘、衆堂ジョオコンビのシナリオはるいは智を呼ぶ、コミュ、&とすべて追ってきた。
独特なテキストが大好きだし、濃いキャラクターが大好きだし、よく練られた世界観が大好きだ。
しかし、何よりも好きだったのは「チーム異能モノ」の設定である。
他人同士(&は幼馴染だが)が偶然に繋がりあってできる「絆」の物語が大好きだったのだ。
ところがこのハロー・レディ、情報が発表された時点で愕然とした。
なんと今度はお嬢様学園モノだという。
なんたることか!頼む、チーム異能モノ書いてくれ!と叫びたくなったが、結果から見ればむしろ今までより面白くなったくらいであった。
まず今作は何を置いても主人公のキャラが素晴らしい。
いつもの独特なテキストが最高に活きるしゃべり方で、終始笑わせてもらった。
若干俺TUEEEEEが凄まじすぎて嫌悪感を抱く人も多そうだが、しかしこの癖になる台詞回しはハマれば読み進める手が止まらなくなること請け合いである。
それにこの成田真理は、非常に一本筋が通っている。
「復讐」というお題目は完全にアンチヒーローだが、その一点に最後まで全くブレがない。
そんなものに意味がないと知りながら、愛するヒロインに止められても、絶対に復讐を貫き通す。
最後の最後、瑠璃を止めるために立ち上がった時の理由も復讐である。
「男の名前は覚えないことにしてるんだ」と何度もうそぶいていた彼が、学友の名前を呼んで立ち上がる姿はどこまでも人間らしく、最高に熱くなった。
その行為には意味がなくとも、その感情には意味がある。
それが人間ということなのだから。
対して音無朔はエトワールである。「輝けるもの」である。
今作のテーマは今までの「絆」というよりも「輝けるもの」だった。
ある意味でそれは対極とさえ呼んでいいものかもしれない。
なぜならエトワールとは孤高である。
誰かのためにという意志は一見孤独ではないが、そのために最後に音無朔が選んだ在り方は上に立つこと。
迷いながらも、誰かを導いていく。空で輝くとは、地を照らすことであり、そのためには飛んで行かなくてはならない。
虹を越えていくということ、それがエトワールの在り方だ。
御門黒船には輝ける未来が見えていたが、最後まで虹が見えていなかった。
虹とは瞬間である。刹那に消える砂上の楼閣だ。
だから彼はそれを目指さなかった。一瞬のきらめきではなく、人類の輝く未来を夢に見た。
それはどこまでも正論。けれど音無朔も成田真理も、それを認めなかった。
それでも虹を目指すのだと。その先へたどり着いてみせると。
物語のラスト、音無朔は去って行こうとする成田真理に助けを求めた。
一緒に虹の向こうを目指してほしいと頼んだ。
虹を目指すことは鳥にもできる。
けれど、虹が所詮は光の屈折で出来るうたかたの幻だと知って、それでも目指すのは人間だけだ。
それは一人じゃないからできること。誰かのために、誰かとともに、「輝けるもの」は一人じゃない。