人生の選択と時の流れ、その大切さを思い知る5年間
三角関係をモチーフにした青春恋愛作品。数ある恋愛ゲームの中でも名作と称される。今回初プレイだったが、評判以上の傑作だったと感じている。
このゲームは高校三年生時代、大学三年生時代、社会人一年目の五年間、この3部で構成される長大なストーリー構成となっている。それぞれのパートは長さは均一ではないが内容は重厚そのもの。どれが抜けても物語は成立できない。プレイ時間もそれに見合う長さになるためじっくり腰を据えてプレイすることをおすすめする。
素晴らしい点は、前述のストーリー構成と丁寧な心理描写で織りなす五年間の描出だ。しっかりとした土台の上に、細かく積み上げられていく描写は物語が進むにつれてより強い没入感をプレイヤーに与えてくれる。さらに声優の演技もマッチしており、中盤を過ぎたころにはキャラクター達が積み上げた歴史を充分に感じることができた。
そんな下地の上で動く三角関係模様、加えて物語の分岐点となる選択肢にぶつかったとき、心を強く揺さぶられる。特に最後のルートでの選択を決めるときには、今まで積み上げたものが非常に重くのしかかってきた。その結末を見届けたときは自分は涙を堪えることが出来なかった。
ルートについて、第一章は一本道。第二章からは分岐があるが、出来れば推奨順に沿ってプレイしてほしいと思う。というのもプレイすると開放される新テキストがあるから、それを見過ごすことがあるかもしれない。
自分の推奨順は、introductory chapter(第一章)一周目→雪が溶け、そして雪が降るまで(特典DISCのデジタルノベル。内容はかずさと春希の出会い)→introductory chapter二週目(追加テキスト)→closing chapter(第二章)千晶ノーマル、千晶トゥルー、麻里、小春ルート→closing chapter雪菜ルート→coda(最終章)ノーマル、クリアするとcodaに追加テキスト発生。
あとは、雪菜、かずさ、浮気の3つのルートを好きにクリアでOK。
心に残ったルートは最終章の浮気ルートだった。雪菜、かずさ、春希の三人がそれぞれ不幸を背負うことになるが、それゆえに前に進む決心をつけることができるルートでもある。人によってはバットエンドと感じるかもしれない。しかし、三人の関係にとって一番平等な結末を迎えたともいえるのではないだろうか。個人的な感想だが、他2つのヒロインルートでは描けない辛さを受け止めたこのルートこそがwhitealbum2のグランドフィナーレだったように思う。
このルートの後日談というか、正式な続編が特典ディスクに入ってる。不倶戴天の君へ、というタイトルだ。これと合わせて読んでほしい。
あと第一章から、かずさにずっと惹きつけられていたため、かずさENDも満足いくものになった。雪菜ENDのように大団円とはいかないが、それでも本当に結ばれてよかったと思ってしまう。こちらもアフターストーリーが特典にあるので是非。タイトルは「幸せに戻る道」。
テキスト、構成、演技、CG、音楽、演出、すべて高水準で、加えてストーリーの結末に強いメッセージ性を感じた。
制作陣の作品愛が溢れてる。
多くの人にプレイしてほしいと思える作品だ。