名作と呼ばれるに能う作品
昔からよく「泣けるゲームランキング」みたいなものの上位にランクインをしているのを見て興味はあったが、なかなかやる機会がなく数年たった今、ようやくプレイすることができた。
そして、昨今のクオリティに慣れた今やってなお、名作だと感じることのできるシナリオゲーだったと思う。
我々の現実と同じような雰囲気で進行する風景に、まったく違う法律や価値観が持ち込まれた世界観にはすぐに引き込まれたし、そこで飄々と生きている主人公の性格には、なお惹かれるものがあった。
そしてヒロイン……よりも何よりも、この作品を象徴する法月将臣という敵役の圧倒的存在感が作品を常に楽しませてくれた。主人公もアレコレと考えながら行動しているし、ヒロインたちもアレコレと悩みながら義務に向き合っている拙い努力を一笑に付し、高みから「お前たちの努力など」と言わしめるその態度は、すさまじい威圧感をプレイヤーである私にすら与えてくれる良いキャラクターだった。
故にこそ、そんなヒロインや主人公たちが法月に対して立ち向かい、意志を固く生き延びようとしたエンディングには非常に迫るものがあったし、ラストの縦穴を登るシーンはまさに手に汗を握る圧巻のシーンだった。
私は間違いなく法月という人間に魅入られてしまったが、あれに魅入られない人間がいるのか、甚だ疑問である。