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siki10さんのアンラベル・トリガーの長文感想

ユーザー
siki10
ゲーム
アンラベル・トリガー
ブランド
Archive
得点
77
参照数
437

一言コメント

掛け合いは上々、ただ個別√が盛り上がりに欠ける

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

創作彼女とめちゃくちゃ似通った評価になるな、と思った。

共通√を始めとして、会話などの掛け合いは非常に面白い。テンポ感が良く、読んでいてダレることがないので掴みとしては悪くない印象を受けた。
はじめこそリアリストなのか理想を許容できる人間なのかはっきりしない主人公に共感できなかったりもしたが、一つの目的以外の事柄には一貫して外野としての視点を保っているような人間性がわかると、良いキャラをしているとも思えてくる。
ヒロインたちもそれぞれに魅力があり、単なる箱入り娘としか思えなかったミリセントも意外と現実を見ようとしている様子が伝わってきたので、当初の懸念はわりと気にせず楽しくプレイを進めることが出来た。

だが、個別に入ると途端に盛り上がりに欠け始める。
盛り上がりに欠ける、というより、盛り上がるべきところでイマイチ盛り上がらないと言った方が正しいか。
例えばレイリ√、彼女の復讐が大事なテーマだったはずなのに、一瞬で片が付いてしまった。
大統領の隠し子という大きな設定が控えているとはいえ、復讐の方も大切なテーマのはずなのに、その結末は「仇だと思っていたヘンリエッタは仇じゃなく、本当の仇はすでに死んでいた」という何ともつまらないオチ。
しかも、その事実を受け入れるために大層な葛藤がありそうなものだが、割とあっさりと受け入れて和解してしまったため、本当に一瞬で終わってしまった。
もちろん、これに至るために「今まで中立特区で過ごしてきた日々」が根底にあることは理解できるが、とはいえさすがに呆気なすぎる。

また、ソフィアとミリセント√では「中立特区」という場所が悪く働いたと感じた。
公式から設定が明かされた時点でなんとなく感じていたことがまさにその通りになったともいえることだが、メインの人物たちが戦争の最前線にいないのである。
そりゃキャッチコピーでは「ここがセンソウをめぐる最前線」と言っているが、それはあくまでも対立が小康状態の時の話。
いざ戦争に踏み切ってしまえば、中立特区はただ報告を待つだけの場所であるからこそ、どれだけ壮大に戦況が動いても実感がない。
トップとして指示を出したり、決断を下したりという本人たちの苦悩は察して余りあることだが、ゲームとしてプレイするにはいささか物足りないのである。

また、クライマックスの演出が弱すぎることも気になる点だ。
特にミリセント√では終盤に今までの敵が助けに来てくれる、どうあがいても胸アツな展開がというのに、特別なCGがあるわけでもないし、その直前の窮地がわかりにくい。
美麗なCGを用意するなら、戦闘シーンの強化や、見せ場を引き立てるCGも用意してほしかった。

あと一歩、もう一歩が欲しかったと思わずにはいられない。