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siki10さんのハミダシクリエイティブの長文感想

ユーザー
siki10
ゲーム
ハミダシクリエイティブ
ブランド
まどそふと
得点
50
参照数
502

一言コメント

主人公が無理すぎた

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ここまで世間との評価と乖離した感想を抱くことになる作品があるのか、と思うほどに全く肌に合わなかった。
以下その理由。

1,クリエイティブとは
クリエイターという要素があくまでもヒロインの属性に過ぎず、味付けの一つでしかなかった。ヒロイン全員がクリエイターとしてすでに完成していたため、創作における血反吐を吐くような努力とか、そういった鬼気迫るものがなかったのが残念に感じた。ただ、これは作品の趣旨に沿ってない期待を私が抱いていただけなので、そこまでの減点ポイントとは思っていない。キャラゲーとして目新しい属性を付与したかったんだろうな、と納得はできた。

2,世界への視点があまりにも抽象的すぎる
リア充、オタク、陽キャ、陰キャといういわゆるカースト的な属性について、あまりにも抽象的が過ぎる。主人公の性格ゆえか、そういった属性に対する評価が薄っぺらいものにしか思えず、実際に登場する陽キャのモブキャラなどもそれを踏襲した何の味もしないキャラしか出てこないため、まるで世界に入り込めない。アメリ好きには申し訳ないが、彼女もいわゆる「オタクに優しいギャル」というよくあるネットミームを張り付けただけの全肯定キャラとしか思えず、薄気味悪ささえ感じてしまった。そして、それらの属性に対する所感を主人公の視点で受け取るせいで主人公のことが最後まで好きになれず、乗じてそれを好きになるヒロインのこともよくわからないという感想しか抱けなかった。

3,その企画、本当に生徒会の企画ですか?
一番納得いかないのがそれぞれのルートのクライマックスである文化祭の出し物。「生徒会全体の出し物」として面白いものを見せる、という目標だったはずが、ふたを開けてみれば完全にそれぞれのルートのヒロインの独壇場を披露して終わりである。ほんのちょっとだけ、「不登校生徒に対する呼びかけ」という趣旨の発言を最後にしており、それできれいにまとめた気になっていたようだが、まったくもって納得がいかない。9割がたそれぞれの得意分野を披露しているだけで、ほかの役員たちの色が全く見えないのに、それを生徒会全体としての集大成と言うのは無理があるだろう。詩桜ルートに至ってはどんな出来になったのかすら見ることができず、クライマックスを見れなかったにも等しいので、いったい何を考えてこの構成を作ったのか、甚だ疑問である(これについては来年に持ち越し、という様子だったのでハミダシクリエイティブ凸に出てくるのかもしれないが、やる気は全く起きない)。

そして、主人公がやたらと持ち上げられがちな今作だが、文化祭周りにおいての彼は、正直何もしていないに等しいと思う。もちろん、調整などの仕事はしていたと思うし、会長としての役割は全うしていた。だが、生徒会の出し物に対してはただヒロインに甘えているだけであり、彼の色が見えるものではない。考え方によっては「主人公がこれだけのパフォーマンスを披露することのできるメンツを集めたんだ」と言えなくもないが、それなら金を積んで学外から芸人やアイドルを引っ張ってきても同じ話である。それがあり得ないと感じられる時点で、ワンマンの出し物を許容したことも同様にあり得ないとしか感じられないのだ。


余談だが、個人的に気に入っていた莉々子が上記のパフォーマンスを絶賛しているのを見て「ああ、彼女はシナリオに殺されたな」と思ってしまい、完全にこの作品への評価が失墜した。