ちょっと良い、どころじゃない、めちゃくちゃ良い作品
想像の500倍くらい良い作品だった。
よく名作と名前を聞く中にあまり入ってこず、まあ面白かったよ、くらいの評価しか知らなかったため、何とはなしに後回しにしていたのだが、あまりにも面白くてひっくり返りそうになった。
まず、1~3までの小説内でのお話。これが掴みとしてよくできている。
思い返せば本当に短いシナリオだったにもかかわらず、ヒロインが非常に魅力的に描かれており、主人公とのかかわり方も印象的な内容になっていた。序盤から「この短いお話には何かがある」と気づかされ、そちらが気になってしまいそうなものだが、普通にこの短編のお話たちに没入してしまい、先が気になって仕方がなかったし、何より別離endが悲しくて仕方がなかった。
そして、それだけ記憶に残るお話たちだったからこそ、case0において世凪の言動に見え隠れするヒロインたちの要素が見事だった。なるほど世凪から彼女たちは生まれてきたのか、と、すっと理解できるほどに整えられたシナリオとキャラクター性は見事というほかないように思える。
もちろん、case0における展開も面白さしかなかった。閉じ込められた近未来、隠された真実、そしてキャラクターたちの選択と、その結末。
憎まれ役の遊馬先生にさえ強く惹き込まれてしまう展開には舌を巻いた。
だが、やはりそれらに深く入り込むことが出来たのは、これまでの3つの物語で海斗と世凪の関係を抽象化した姿を見せられてきたからこそだろうし、ただのキャラクターにとどまらない意味合いが、強く響いてきた。
全編を通して、丁寧に物語が作られ、否、語られて来た意味を強く理解しながら、結末を迎えることが出来たこの作品は、ゲームという特性を生かしたものであり、ほかのどのジャンルにもない面白さをくれたものであったと思う。
とても、とても良い作品だった。
「白昼夢の青写真」という作品に出合えた私は幸せだ。
p.s.case2のedで歌われている「夜明けの片隅で」という歌は、私の大好きな「ニュートンと林檎の木」のopである「風の唄」のメロディーを用いたものだった。それもまた、たまらなく嬉しかった。