―世界が揺らぎ始めているのを感じない? 過去が発散し始めているのを感じない?
人を愛した半妖と愛を識った混沌のお話。
体験版やらずに前2作の感じだろうと買ったら予想外でした。いやOPから受けた印象では正しいのかな。
ゾンビ、クトゥルフ、ループ、タイムリープ。
色んな要素に牽引され最初から最後まで面白かった。
杏子が本当に好き。全ての愛がある。
夏の色のノスタルジア、サクラノモリドリーマーズ、灰暗き時の果てより、全て好きなのでどれか一つの方向ではなく少なくともこの3作の、3種の方向で今後も見たいですね。
前作までの呉さんのラインと違い桜坂つちゆさんメインですが、作品に合わせて少し絵の等身も変わって新鮮且つ合ってて良い感じです。でもやまかぜ嵐さんのみさきや真幌が好きなのでいつも通りでもいいかも。
以下整理メモ。
間違った情報があるかも。
とりあえず話が混沌とし始める由乃ルートについて。
・御城 由乃/這い寄る混沌
本作のトリックスター。
御城康一の妹。そして、這い寄る混沌の千の顕現の一つ。
おそらく這い寄る混沌の持つ禁呪、「時空門の創造」により可能性世界を旅している。
本編中に登場するいにしえのもの、杏子およびその母と同じく他者の脳を喰らい記憶を取り込む事が出来る。
故郷に帰ってきた時、出迎えてくれた由乃。
杏子に非常に似ている。
本編の開始時既に旅館の手伝いをしている、康一とおそらく同い年。少なくとも康一の認識している由乃より年上で学生ではないはず。
・御城由乃
康一の知る由乃。転落事故により死亡。
純粋な人間。
・揺らぎの世界
重ねられたのは確かに2つの世界だが、過去への干渉による現在の変化でそれ以上に見える。
主流の世界は二つ。
由乃の世界線。康一の世界線。
・由乃の世界線。A世界。康一は流産により死んでしまったため不在であり、それにより顕現としての由乃が生まれた唯一の世界。
この世界を含め、観測出来る世界のほとんどで杏子は御城家の近所に引っ越してくる。
由乃は彼女と仲良くなるが、夏祭りの後に失踪する。
世界を巡る旅の最初の動機は親友の杏子の笑顔を見てみたい。
だが、由乃の興味の対象は杏子が運命の人と呼ぶ、この世界には存在しなかった兄、康一に移ることになる。
・康一の世界線。B世界。
康一は普通に生まれ、後に這い寄る混沌の顕現ではない純粋な人間としての由乃が生まれる。
その由乃は転落事故により死亡する。
こちらでも当然杏子は引っ越してくる。康一と杏子は恋仲になり、夏祭りの後杏子が怪物であることを知る。杏子は康一に殺してくれるよう請い、康一の手によって殺害される。
事件の記事のスクラップ:首無しの少女の遺体が見つかる。
居間に由乃の仏壇。
康一が認識しているのがこの世界。そもそもこの世界を重ね合わせないと明確に残った彼の軌跡が無い。凡そはこの世界線に基づいていて、駒子や恵里とくっついた場合はこの世界線で確定し、康一は夏を超えることができる。
重ねられたのはこの2つの世界のはず。
ここに過去への干渉が加わることによって、事象の変化(駒子が康一を記憶している、恵理がサイコメトリーを最大値で使える、新聞記事が変化するBADEND世界)が起こるが、それらは基本的にB世界の系譜。
だが、過去の改変の度合いによっては康一自身にとって大きく違う流れへ飛ぶことになる。
由乃ルートにおいて、康一は由乃に請われ夏祭りの夜にタイムリープしない、と宣言する。直後に撤回したもののこれにより揺らぎの世界に康一の死が決定された世界の可能性が混在することになる。
・記憶杏子の世界線。C世界。
夏祭りまではBと同じ。
由乃と会話していた由乃の中の杏子の世界線。狂気の始まり。
この世界の杏子は夏祭りの夜、康一が自分以外の女を見ていると思い込み康一を喰らってしまう。
だが杏子は取り込んだ記憶からそのような事実が無い事を知り、絶望から死に行く。
その様子を見た由乃は、杏子に感化された運命の人に対する想い、世界を巡る中で感覚した存在しない兄への想いから兄の全てを取り込んだ杏子を喰らい、自身の物とする。
そして同時に杏子の愛を喰らうことになる。
事件の記事のスクラップ:首無しの少年の遺体が発見される
康一の過去へのタイムリープは康一の生を確定させるが、タイムリープしない場合夏祭りの夜に死ぬ可能性を内包するようになる。これは康一を疑った杏子に喰われるC世界の流れだけではなく、単純に食欲に突き動かされた杏子から逃げ切れずに喰われる可能性も含む。死の可能性が生まれた過去へとタイムリープし、杏子を殺す意思を持つことで康一を疑いから殺害する過去が決定づけられる。
殺さないと意思表示した場合別の世界へと分岐する。(BADEND世界)
・揺らぎの世界
改めて。
由乃は、世界を巡る旅の中で自身が別世界のどの由乃とも見た目にも、内面にも違う別人であることを認識してしまった。
自分ではない自分が幸福そうにしている世界ではなく「私が、私のまま、お兄ちゃんと一緒に居る世界」を求めた。
この想いと、杏子ごと喰らった康一への愛が結びついた先。
A、B世界の重なり。だがほぼB世界の要素で構成されている。
康一がA世界に存在しないためにB世界の情報が基本になる。
両親の康一への認識や周囲の認識など。
由乃に関しては由乃が生きているB世界の系譜世界を参照しているはず。そのB世界本来の由乃の居場所にA由乃が割り込むイメージ。
A由乃が割り込むためにB由乃が不在であるこのB世界が選ばれたのだろう。
由乃自身の認識もこのB世界に依っている。
これはエピローグ、康一が島へと到着した時点で記憶杏子が掻き消えていることから、顕現としての由乃の認識よりも人間の由乃としての認識が優先されていることがわかる。
また、由乃の認識が由乃の死んだB世界に依っているであろうことは、彼女が自身が死者であること、康一との愛には生者と死者という禁忌があるとしていることからも伺える。
また、由乃は杏子から聞いた康一と杏子の初めてのセックスについても杏子から聞いた、と認識していて脳を喰らい取り込んだ杏子の記憶から聞いた、とは認識していない。
よって本編中の由乃は様々な記憶を持っているものの概ね通常の人の範疇で認識されていて、這い寄る混沌の顕現としての認識はほぼ無いはず。
この重ねあわされた世界は様々な事象が不確定で不安定になる。
そしてこの不安定、不確定さが時の乱れを生み出す。
この乱れに乗る形で、康一は一週間をループすることになる。
作中では「特別な感受性と、特別な使命感。そしてやり直しを要求する強い思い」これらを持つことが跳躍の条件とされている。
だが這い寄る混沌の顕現としての由乃の裏返しである康一に特殊性が無い事の方が考えにくいのでそれらも関わっているのだろうと思う。康一がほぼ通常の人間であることは駒子BADENDの老衰などから伺えるが。
・タイムリープ
時の乱れによる巻き戻しのループ、時の乱れに乗った不確定な事象が確定し得るタイミングへのタイムリープ、這い寄る混沌の呼び声。
本編中の時間遡行はこの3つだろう。
まずループ。これは揺らぎの世界の1週間を繰り返す。巻き戻される地点は不確定だが、覚醒の地点はある程度康一の意識により左右される。
このループは重ね合わせられた世界の副作用である時の乱れが原因であるため不可避で、島の人間全体が必ず巻き込まれる。条件を満たしている人間が一度やり直しを要求すれば時間に絡め取られ、時の乱れを認識し、影響を受ける。康一の意思によりある程度覚醒の地点に影響が出る。揺らぎの世界の1週間という期限と同じようにおそらく世界によって自然的に時の乱れが解消される方向へ働くためにループに上限がある…という様に考えられ、そう何度もループ出来ないはず。
次にタイムリープ。1週間を超えた駒子や恵里に関するタイムリープは、ループにより時の乱れを認識出来るようになったことで事象が不確定になり、時の流れが混在している場所を認識し割り込めるようになる…といった形ではないだろうか。
これもループと同じ期限付きだろう。
夏祭りの夜、怪物へと変わる杏子から逃げる時空へのタイムリープもこちら。
這い寄る混沌の呼び声。C世界の夏祭りの夜へのタイムリープ。ここには顕現としての由乃が現れ、康一を喰らった杏子を喰らう。この時空へ誘ったのが由乃であることは本編中でも言及されているが、さすがに駒子や恵理のリープにまで関係することは考えにくいため、由乃にとって最重要であるここだけが特殊なのだろう。康一への愛を識った由乃の呼び声。
・輪廻の蛇
由乃TUREEND。
1週間の揺らぎの世界でしか共存出来ないはずだった康一と永遠に過ごす手段を手に入れた由乃。
C世界の杏子を喰らった由乃を始点に。
由乃は愛する康一と共に過ごす世界を自ら作り出せばいいと考える。
そして、2つの世界を重ね合わせることでB世界の康一との1週間限りの共存が叶う。
世界が重ね合わされた瞬間から由乃は顕現としての認識を失う。
1週間の中で、兄を愛する妹として、生者を愛する死者として由乃は康一と結ばれる。
康一は1週間を超え未来へ進むために過去の杏子にケリをつけようとタイムリープを決める。
由乃は康一が戻らなくてもいいかもしれないとタイムリープをしないことを康一に宣言させる。
だがスクラップの新聞記事が康一の死を表したことにより康一は過去に飛ぶことを再度決意。
不安を訴える由乃に必ず戻ってくると約束し、タイムリープする。
康一はタイムリープした先で愛を疑う杏子に喰われる。
その場所に辿り着いた由乃は、康一の全てを喰らった杏子を取り込み、愛を認識する。
由乃は愛する康一と共に過ごす世界を自ら作り出せばいいと考える。
この円環の中で、由乃は康一を愛し続ける。