シナリオかなり楽しかった。学園ジュブナイルのジャンル、フェアリーテイルレクイエムの海原望の次作として見て概ね期待通り。まぁでもシルキーズプラスの3作といいこれといいエロ方向頑張りたくない感じが伝わって来るのはどうにかならないのか。
シルプラはそのうち一般に行ってすぐにエロゲに戻ってきそう。
これのプロデューサーやディレクターはDMM系列だったし内容の企画面でシルプラあんまり関係してないかもしれないけど、印象は同じだから勝手に一括り。
とにかくまぁフェアリーテイルの方では陵辱とかあったしこっちもそんな感じかなあって思ってたら性的虐待(何年も挿入してない)、陵辱(主人公に挿入させる)のお笑いコンボ食らうハメになった。
エクセルキトゥス辺りで似たような精神攻撃をされた時も思ったけど処女厨への配慮しながら陵辱色出すとものすごい拗らせた感じになって笑えるのでどうにかしてほしい。
まぁシルプラとその仲間たちは陵辱がカットされエロも控え目になることをそろそろ学びました。勿体ないお化けが出る。
フルプライス価格帯のような商品はまずある程度こういう物が欲しいなって期待して買う方が多いと思いますし、シナリオがまぁまぁ良かったとしてもまず最低限期待した部分がクリアされてない、あまりにも方向が違うと評価が落ちるのはよくわかります。
なので公式HPやOPが与える印象にはよく気を配る必要があると思いますが…
ミステリ要素ばかりを全面に押し出すよりも、青春ドラマと異能に関してもう少し開示した方が良かった印象ですね。後はエロ薄な事もね!
自分にとっては今作、概ね期待した通りの物が出てきました。エロ関連以外。
ミステリー遍歴が京極堂やS&Mシリーズから戯言シリーズ、ラノベで神様のメモ帳や文学少女とキャラクター優先に広がっていったタイプであるため謎解きは正直もうどうでもよく、物語を牽引する要素としてのミステリーが好きなので、楽しめました。
ミステリー部分は某妹様の言うところの邪道の推理が利き過ぎて証拠が揃う前どころか犯罪が起きる前に犯人とトリックが分かるレベルのミステリなのでそちらが趣味な場合は期待をスカされまくることになるでしょう。
と、まぁ自分の中ではある程度想定した形のものが出てきたわけですが、これは同ライターのフェアリーテイルレクイエムといった参考作品を踏まえてだったので多数派の印象ではないでしょう。
後はまぁぶっちゃけて言えば初見の印象がペルソナっぽいな…だったのでジャンルが本格ミステリではなく学園ジュブナイル、学園青春ドラマにミステリ風味、と最初から見ていたためにそういう物が出てきてやっぱり、ってなっただけです。主人公のモテ具合もペルソナだしまぁそうだよねって納得しました。ラストは異世界でバトルするまであると思ってた。
ここまで来てやっと普通の感想。
まず学園物として出来が良い。人が良く個性ある3班の面々と過ごす時間が楽しい。終わるころには色々あったなあと感慨深いです。
沙彩がお気に入りです。髪下ろした姿美少女過ぎる…凄くお嬢様。
捨てられる前は良家の子女だったんだろうか。逞しく生きるお嬢様という印象になった。
彼女の会話はギャップも含めて楽しく、未来をしっかり見たいなあ。
男2人の存在もこの作品の青春ポイント高めてますね。シュンペーはもう声聴いた瞬間良い奴だと思いました。女好きのアンドロイドみたいな声してやがる。彼ら2人はしっかりと自分の場所があるので、彼らの世界も気になりますね。
それと糸数君!出番少ない!可愛いからもっと出て!
BGMも良いですね。印象に残るBGMがあるゲームは良作。
勿論、屋上の少女 さくらのテーマです。ピアノを含んでいて使われる場面も多く、日常の少ししんみりした場面やモノローグでよく流れる曲って印象に残りやすい。エロゲBGMで一番有名まである夜の向日葵然り、個人的なところで言えば猫撫のFamiliar然り。
また全7章からなるシナリオはそれぞれが一つの事件を内包していて、単体でのまとまりがあるため飽きずにさくさくと読み進められる。
6章はもう完全に脱出ゲームなのでペイント辺りの必要なあみだくじがあったり面倒臭いですが。
各章3班を基本に色んな人が出入りしながら話が回っていくので3班を個として認識しやすくなりますね。
悪い部分はざっくり言えばフェアリーテイルではおとぎ話という殻に覆われ隠されていたシナリオの浅さが露わになっている。
衝撃的なシーンとかどんでん返しとか無い。ストーリーラインはザ普通。
これは短所だけではなく長所にもなるけれど世界の狭さ。背景が見えない物が多いし、主人公から見た世界が大事にされている。
全体的に登場人物の過去の掘り下げがありませんが、主人公の関係の中心となる3班に関しては現在を沢山重ねて仲が深まっていく様子がとても青春していて良いと思います。ひかりの背景の薄さなんかは勿体ないですが…これも主人公から見える世界としてとても現実的に見えないものは見えない、と受け取る事は出来ます。
シンソウノイズの世界は凡そ主人公が触れる世界だけで出来ていて、この狭さが物語の浅さを感じたり物語への没入感を深める事に一役買っていたりと様々な感覚の軸になっているように思います。
冒頭、夏希の主人公に対して棘のある心の声が聞こえてくるシーンで怯むところから始まり、さくらから伝わってくる自殺の心象風景に惹かれ、とその感覚を丁寧に描写してあるのでどんどん共感していきます。
そう考えると詰まることなくスムーズに解ける謎解き部分もシンクロ性に役立っているのかもしれませんが…
とにかく基本的に本編より遡って登場人物と何かしらの関係を持っていることはありませんからね。入って来る情報に対して主人公とプレイヤーの処理感覚はシンクロします。
コミュ症ではあるものの主人公が強く型に嵌められることなくリアクションも一般的な柔軟性を持っていますしね。
そのような主人公の精神は幼いというか、白い。さくらへの歪んだような、憧憬や優越感の入り混じった感覚にしても非常に受動的かつありがち。言ってみればただの初恋。結局理解しきれなかったことと言い。
コミュ症ならではの経験の薄さと能力による世間ズレが合わさって、他人へ影響を及ぼす確立した個性といったものが無いため、プレイヤーは好きに感情移入しやすいです。
ですが物語の中、主人公はさくらの事件を契機として、3班の皆と過ごし数々の事件を超え、自我を確立していきます。
先へ先へと進むとモモと共に知っていただけのことを実体験として解るようになり、成長…というよりは変化していきます。
この変化により主人公とプレイヤーのシンクロ性がズレていく。
モモに対する嫉妬混じりの暗い感情は主人公の幼過ぎる精神性によるもので、これは主人公しか知らない過去に起因するものだし、モモを失いかけた焦燥は、画面越しには一段薄まって伝えられます。
終盤に行くにつれて、主人公の感情の動きは極端に振れているように見えるし、これまでプレイヤーと共にスムーズに謎を解いてきた主人公はしょうもない感情でぐるぐるとまわっているように見えるし、仲間を傷つける。
モモと手を繋ぎ夏希に対して真実を突きつける主人公が極め付けで、何を考えてるんだとなりますが、成長の通過点、変化の途上における大きなブレ、強固な自我の獲得―モモと共に培われたのは探偵的本質だろうか―とその影響を知ること、夏希を傷つけてようやく認識する仲間を大切にしたいこと、これらにより今後世界の歩き方を知る最後の一段と考えれば解らなくもない。
このプレイヤーから乖離していく主人公への感覚こそが正に八雲千草です。
どうしてそんな事も出来ないのかと、どうしてそんな所で立ち止まっているのかと橘一真に叩きつける。
僕ならもっと上手くやれると、僕なら橘一真を理解して彼以上に彼らしく主人公が出来ると豪語する。
けれどもう、八雲千草が、プレイヤーが橘一真に苛立ちを覚え介入したくなる頃にはもうシンソウノイズは間違いなく彼の物語へと羽化しかけている。
どうしようも無い所で迷い、好きな人間への感情すら掴む事が出来ないのが彼で、その彼が仲間と歩んできた物語。理想的な振る舞いを見せる主人公は橘一真じゃなく、モモは正しく、間違える事無く彼じゃないことを指摘する。
ラストバトルは理想像に対する物語の叛逆。
一個人の生という物語にジャンルなんてものはなく、橘一真は使える力を使い仲間の未来を切り拓く。
彼の物語として閉じるための最後の一幕。
というわけで私は終盤ラスボス気分でプレイし、一真に倒されてフッ…貴様は先に進んでいけ…って感じでした。
皆さんもどうぞラスボスに。
―失われてしまった言葉を墓の底から掘り返して、死者の名誉を守るためだけに生者を傷つけ、生者に慰めを与えるためだけに死者を辱める―
死者の代弁者たる探偵の本質。一真やモモもまたそうだったかもしれないし、そうではなかったかもしれない。