門倉甲であるということ
「他の世界がいくつあるかなんて知りはしない。でも、俺は他の世界の誰よりも門倉甲なんだ」
BALDRSKYの到達点。
本作はシナリオの良いアクションゲーとして最高レベルの完成度を誇ると感じました。
バトルパートとシナリオの噛み合いが素晴らしい。最初から最後まで手が止まりません。いえ実際にプレイし続けると倒れるほどの容量ですが…
バルドはロードが事前に済まされるため、バトルへの入りがセリフからノータイムで流れるように突入するんですよね。
これがかなり良い効果を生みます。
千夏とのバトルなんかはADVパートでお互いに飛び出しそのままプレイヤーに操作が投げられます。もう一体感全開です。シュミクラムが私そのものです。
そして何より良いのがラストバトル。jihadのインストをBGMにテキストが進み、「もう…終わりにしよう!」のセリフとともにサビのボーカルが入り戦闘が始まります。もはや熱すぎて号泣しながらバトルです。そしてノインツェーンがとても強い。これ以上に熱いラストバトルを知りません。
本作のアクションゲーム要素は兵装を開放しながら色々試してコンボ組んでいく楽しさがただのアクションゲームで終わらない要因です。開放され、育っていく兵装が次のバトルパートを待ち遠しくさせます。
そしてシナリオがバトルパートを更に面白くします。
仮想世界の発達した未来という舞台、戦うための武器たるシュミクラム、壊滅した学園、死んだ恋人その他諸々設定がとにかく秀逸です。
また上にも書きましたが要所要所の戦闘をシナリオが盛り上げに盛り上げてくれ、徐々に開かれていく真相は読み進める手を止めさせてくれません。
記憶を失った主人公という設定、追うべきドレクスラー機関という敵、奪われた日常、すべては明確さを持っています。失った記憶には知るべき大事なものが、ドレクスラー機関には問い詰めるべき内容が、奪われた日常を動機として結末に向かう道筋が出来ているのです。これらの要素によって先が気になるシナリオであり、安定して楽しめるシナリオを完成させています。
特に記憶に関しては作品への没入感を非常に高める効果をあげていると感じられました。
真ルートまでの5周を支えるこの作りがSKYの魅力の重要な要素です。
完結編として半ば独立している空ルートを除いたSKYの魅力の大部分であるこの5周目までがサイバーパンクとしてのSKYでした。
そして迎える空ルートで、この文章の頭の台詞。模倣体という新たな命、電子の生命が至った場所、それに触れることが出来てこの物語を感覚し十二分に満足して終えることが出来ました。