ErogameScape -エロゲー批評空間-

shun-shunさんの群青の空を越えての長文感想

ユーザー
shun-shun
ゲーム
群青の空を越えて
ブランド
light
得点
95
参照数
158

一言コメント

歴史の中をたしかに生きていた人々の話

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

学習院大学で歴史学の研究をしていた友人から言われた言葉がある。
「歴史とは記録だ。記録のない過去を対象とする学問は歴史学ではなく考古学だ。」

過去の記録としてしか知り得ない歴史を、その時代を生きた人々の目線で見てみよう、というのが本作の位置づけであると考える。
その中で、国家とは何か、なぜ人は戦うのか、幸せとは何なのか、という根源的かつ哲学的な問いに肉薄していく作品。

萩野氏の円経済圏構想はなかなかに興味深かった。
たしかに、現在においては片手で収まる薄い1枚の板(スマホ)で世界中の人や情報と国境を越えて繋がることができる。では、なぜ政治や経済においては国家という枠組みを脱し得ないのか、という問いは考えたことがなかった。
また、地球という枠組みを超え、複数の惑星圏にまで人間の生活圏が拡大する遠い未来の仮説を交えて語られていたのが良かった。

戦記物としても、映画トップガンのように航空戦をメインに置くのではなく、あくまでその時代の当事者の価値観や考えを主題にしていたのも、上記の「その時代を生きた人々の目線で歴史を見てみよう」という意向と合致し、好判断。

余談だが、私は本作の舞台のモデルとなっている茨城県つくば市出身である。
天久保やら洞峰公園やら松見公園やら、懐かしい地名と共に、実際のつくばの街並みにかなり近しい、あるいは似せて描かれた背景を見て、まるで自分の地元で実際に起こった出来事を読んでいるような感覚になった。
偶然の産物ではあるが、こうした事情により、一層とても楽しめた。

あと、一発やらせてくれと達也に頼まれた若菜が、戦争から帰ってきたらやらせてあげるよって答えたシーンが妙にエッチだった。とてもイヤらしくて頭から離れない。

忘れないように、本作で面白いと感じた言葉を置いて、感想を閉じようと思う。(一部要約、原文を改変)



「勝てば英雄、負ければテロリストだ」 社

数十年単位の短期的な未来ほど、逆にカオス的な振る舞いをするため予測が難しい 地の文

国や郷土意識の成立は、自己のアイデンティティ=他者との差別化を求める人間の潜在的意識が一因である 地の文

「絶対に殺してあげるからね!指先までバラバラにして、霞ケ浦のブラックバスの餌にしちゃうんだから!」 加奈子

人間は寿命により約100年で世代交代が起こる。新たな生命が生まれるたび、新たに知識を獲得するプロセスが生じる 耕一郎

「今は、誰かを殺さないと人を愛せない時代だから」 有紀

愛とか恋とか、そんなもの何の意味もない世界で私たちは生きている 地の文