ロードオブザリングやハリーポッターのような長編ファンタジー映画を見た後のような読後感が得られた。
ロードオブザリングやハリーポッターのような長編ファンタジー映画を見た後のような読後感が得られた。
プレイ時間はアバウトだが20-23hくらい。商業フルプラ1本分程度。
DL版のReadmeに記載があるが、推奨攻略順はエリザベート→フィーネ→ドミニーカ→クリスタルとのことで、この通りプレイした。調べた限り、ネット上に攻略フローは存在しない。
後半の盛り上がりが冴えわたっていた。故郷たる王都を追われ、亡国の姫君と騎士団長(そしてレン)が再起を図る過程は大河ドラマのようだった。特に、主人公のレンの周りの人間が続々と敵勢側であることが判明し、自分に刃を向けてくるシーンでは、ソーサレス・アライヴのALIVE編のようなカタルシスが得られた。さらにアレックスの二重スパイ設定やテルミットの裏切り返しなど、単なるどんでん返しでは終わらなかったのも尚よかった。
また、べたではあるが、これまで攻略したヒロイン全員と、かつて敵だったアイロスの陣営とが最終決戦で共闘するシーンは胸アツである。さながら少年漫画の最終巻を読んでいるような気持ちである。
結晶石(エリクサー)という設定もまた良い。かつてシャナに傾倒していた頃に自分だけのフレイムヘイズ設定を思案していたように、僕オリジナルの教会非公認のエリクサーの設定を考えてニヤニヤしたい。
歴史、経済、宗教、文化、政治、全てにおいて一定練られた設定に基づき様々な人物が各々の目的のために激動の時代を生きていることが犇々と伝わってきたのが良かった。
メインキャラだけでなく立ち絵のないキャラ(辺境のケーニヒ伯など)の思惑、生立ちなどが重厚に描写されているため、作中の各キャラの動きに合理性が感じられ、違和感なく読み進めることができたのも嬉しい。
特に正義と悪、のような二項対立では悪が悪となった理由が明確でないと楽しめない自分にとっては、本作の所謂悪側であるエックハルトやカイ辺境伯がなぜ国家に反逆するのか詳細に描写されており納得感があった。特に、ロンドナイトは時折クリスタルから間違った野望を抱いていると叱咤されるが、それでも最後まで信念がブレない点がよかった。
伏線回収も抜かりない。失踪したエーリッヒの兄、行き別れたロンドナイト、テルミットが時折顔を曇らせる理由、クリスタルの故郷で虐殺を行った人物たち、など。
余談だが、作中で王城の中庭に咲いており、サークル名にもなっている「君懸草」はキミカゲソウと読み、その正体はスズランだ。花言葉は「幸福の再来」や「幸せの約束」など、幸せを象徴している。また作中で言及の通り、有毒である。植物は時として身を守るために毒性のある化合物を生成する方向に進化する。
生きるために戦いに身を投じるしかなかったレン(そして忘れてはいけないミリー)の生き様、そして各々が立てた誓いを守るために猛々しく剣を振るうマルクたち王立騎士団一人一人が、このスズランと同じように映る。
本作は、激動の時代を生きたRitterorden(騎士団)のまごう事なき歴史の1ページである。