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shun-shunさんの私のリアルは充実しすぎているの長文感想

ユーザー
shun-shun
ゲーム
私のリアルは充実しすぎている
ブランド
TetraScope
得点
99
参照数
243

一言コメント

神はいる、そう思った。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【個人的振り返り用】

・原画
同人フリゲーの中でもかなりハイクオリティなグラフィックであった。とくにイベントスチルの塗りや明度彩度から透明感・清潔感が感じられ、主人公や攻略対象たちをより綺麗に、より清らかに見せるパワーがあったと思う。
個人的には目の塗りがシンプルで好みだった。あとは男性キャラの髪の束感がとても好みだった。
原画担当のne-onさんはTetraScope専属で創作されているようで、pixiv、twitterともに現在更新が見られないため今は何をしているのかは不明である。
こういったように、創作者の素性が分からないというのもフリゲー特有の儚さと創作者の残した「作品」にのみスポットがあてられる風潮が感じられて個人的に好きだ。もっとも、創作者に感想をつたえる、応援するといったコンタクトを取りたいのも事実なのでできれば消失しないでほしいというのが私の本音でありエゴであるが。

・ゲームシステム
システム面もフリゲーの中では素晴らしいもので、バックログジャンプこそ無いものの、攻略シナリオのフローチャートからシーン鑑賞できたり、OPムービー鑑賞もできる。クオリティとしては商業作品といっても差し支えの無いレベルだったと思う。

・シナリオ
全体感としては、

希美視点で高校生活

生徒会長(瑞穂)、生徒会長の双子(穂積)や弟(隼)、弟の友人(有)、転校生(歩)、友だち(未歩)とともに学園生活を送る

学生生活の中で希美はヒロインに恋をしていく

といったオーソドックスな乙女ゲーム構成。

詳しくは各キャラ√にて。

・音楽
同人フリゲーでありながらOP/EDムービー+ボーカルソングというすさまじい力の入れよう、すごいとしか言いようがない。

OP「プリンセスマジックナイト」 by のがみ

”君は知らない探し物があるならよく見てごらん目の前の私を”

歩くんが姉崎さんに希美ちゃんと呼んだシーンが頭をよぎった。

”魔法をかけて ねぇ 君のその一言で 少しづつ近づいてくの 君の理想の私に”

大好きな隼に笑ってほしくて、毎朝「私かわいい?」と聞く主人公の気持ちを感じる。

と同時に歩くんのノーマル√ENDの「君の理想の私」も頭をよぎった。

ED「サマーブロッサム」 by のがみ

”無口な君 珍しく誘ってくれたから私・・・「もうどうにかなりそうだよ」なんて”

隼(無口な君、だから隼は違うかも)や歩くん(やはりこの人か)からのお誘いのことかな?と。

”別に楽しくないのに「楽しそう」って”

やっぱり希美は学生生活で他人によくいられようと、本当の自分を隠していたんだと思い出せる歌詞。

”サクラサク君と 終わらない永遠の夏を一緒に始めよう”

本当に全√終わった時は、心の底から終わってほしくないと思ってしまった。こんな感覚は久しぶりであり、若干数100作品程度しかノベルゲームはプレイしていないが、この感覚になった作品んは数えるほどしかない。

・各キャラ√(非攻略対象含む)について

①主人公(姉崎希美)

高校2年生?
超かわいい。
女オタク、ヴァルト様大好き。
おっぱいそこそこ。
表情豊か。モアイ、変顔など。

女性キャラでありながら、かなり理性的・論理的な側面もあり好感度高め。
特に、自分のしたこと、言ったことが相手にどう映るかを考えることができるので、すばらしい。さすがは高偏差値高校に通っているだけはある。
自分は男だから、こういった乙女ゲームでも主人公に没入もするし主人公を1人のヒロインとして見てしまう。その点、この主人公はめちゃくちゃ好きだったし、本当にこんなお姉ちゃんがいてほしいと心の底から何度も叫んでしまった。

幼少期よりオタクであり、中学に入ると当然の如く孤立。見た目もモヤシで誰からも好かれない。中学1年のとき、両親が再婚し隼と兄妹になる前に歩くんと友だちになっている。その存在は希美の中でも歩くんの中でも大きな存在であった。隼とははじめは喧嘩ばかり。中学2、3年生の運動会の時に隼に弁当を届けた際に、周囲の人に兄妹だとバレる。隼は陽キャなので希美を拒絶。しかし、隼が高熱を出して希美が看病をしたことがきっかけで隼は希美を好きになる。希美をきれいにすべく、親が美容室をやっている友人のつてでヘアカットを学ぶ。希美を変身させることに成功。希美は生まれ変わった自分を隼に褒めてもらえる、隼が笑ってくれることを嬉しく思い、恋に落ちる(しかし隼√に入るまでは自分の気持ちに気づかない)。だからこそ、希美は隼に迷惑が掛からないよう、もちろん自分が黒歴史だった頃の学生生活を送らないよう高校入学後は本当の自分を隠し、優等生として陽キャを演じる。

高校生活開始後もオタク趣味はバレないように継続しており、隼だけがそれを知っている。隼は姉を追って同じ高校に進学するが、もちろんそのことを黙っていてくれている。希美はヴァルト様という乙女ゲームのキャラが好きであり、バキバキの女オタク。床ローリングが得意技。しかしアニメイトには行ったことがない(オタバレが怖いので)。ヴァルト様からは「君の萌えは1年続かない」と飽き性の面を指摘されていたので二次嫁もとい二次夫は他にもいる可能性が高い。

②隼
希美の義弟。このことを知っているのは兄弟のみ。イケメン、運動得意、陽キャ。お姉ちゃんに料理を作っていることからかなり家庭的な面もあり。
物語開始時からお姉ちゃんを好きだと思われる描写が見られる。性格としては、ツンデレ感あり。なかなか素直になれず、お姉ちゃんが他の男と親しくしていると嫉妬する場面もあり。姉はなかなか隼の恋愛感情に気が付かない。両親が出張で2人暮らしなので作中で最もお姉ちゃんと接する機会と時間が多かったキャラであり、本作でももの弟√が本命である趣旨が見られる。

トゥルーエンド√後半では高熱を出し、お姉ちゃんに看病されるイベントがあるが、これは隼がお姉ちゃんに恋をしたきっかけのエピソードと同じであり、後で見返して絶叫した。

実際、歩くん√なんかでは、「姉貴があんなに楽しそうに話してるの初めて見た、後は任せた」とさりげなく自分の恋を諦めていたり、切ない場面も少なくない。
弟萌え属性は全くないとまで言っていたお姉ちゃんをよく振り向かせたぞ!隼!

③有
個人的に作中で一番イケメン、ぼくの一番好きな顔立ち。
希美の実弟。重度のシスコン。個人的に1番好きな√。
よく見ると髪の毛や瞳の色などが同じであり、伏線となっていた。

義弟の隼とは泥沼化こそしなかったものの、恋敵として作中では駆け引きが見られる。(どっちの服が好きか、など)
序盤は隼の友だちとして登場し、当然、希美は実の弟であると知らないので有の方から徐々に距離を縮めていった。実の弟であるとカミングアウトしたのは、希美が隼を「弟」として接している面を何度も見たり、希美が隼に恋をしているのではないかと気が付いたとき。
√によって有の希美に対する気持ちの整理の仕方が若干異なる。隼トゥルーエンド√では実弟であることをカミングアウトし、兄妹として歩むことを望んだ。しかし、隼ノーマルエンド(実質、有エンド)では、実弟であることは隠し、自分の抱いた感情は恋だと自認してエンド。

雨の中、お姉ちゃんと向き合う有には涙した。

これどっちがいいんでしょうかね。そもそも、有の抱いていた感情は恋愛感情と兄弟愛の両方あったと思うんですよね。恋愛感情としては、隼に希美が弁当を届けた時に有は希美を目撃しており、そのときの恋に落ちたといっています。どうなんでしょうか。。。

隼トゥルーエンド√では、実弟であることを隼にも認められていますが、両親の再婚などあり、やはり有と希美が本当の意味で兄妹になれる、つまり両親に紹介できる日はまだまだ遠そうです。

隼ノーマルエンド(実質、有エンド)では、泥沼化の可能性ありでは>?
だって、希美は実弟だって知らないわけじゃないですか。有は実姉だと隠し続けるんかな。いづれカミングアウトしたら、隼もろとも泥沼化しそうだが。。。

兄妹関係もあってか、隼とは事あるごとに言い争っているが、実のところは仲がいい、らしい。
あと、若干腹黒感、ヤンデレ属性もちで好きですよ、ぼくは。

「”弟”として見てほしいんだ。」
「”有”って呼んで、姉さん」

うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!

全√攻略後に見れる反省会の、あの写真。お姉ちゃんを取り囲む有。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!

④未歩
希美と同じクラス。
希美の一番の友だち。

歩くん√で明かされるが、隠れオタクでありしかもBLカプ派で百合もいけるらしい。
希美のクラスは陽キャしかいなく、オタクに対する偏見も強めであったが、希美がクラスでオタクであるとカミングアウトした際にはアフターケアもしてくれたり、そのあとも今まで通り接してくれたりと実はいい人。
希美が隠れオタクであることは見抜けていなかったが、アニメイトでばったり鉢合わせになった時にはオタクであることを認め、クラスメイトに言わないことを希美が誓い、晴れてオタ友となった。

個人的に希美も好きだが、未歩もかなり好きなので攻略したい。

⑤瑞穂
生徒会長。眼鏡が知的。天然発言でよく周囲の女子を勘違いさせるイケメン。学校では希美とカップル説が浮上している。

実は希美のことは好きではなく、閑音のことが好きであったが、自分の事を穂積くんと呼われたことで、閑音に告白されても「閑音の本当の好きな人は穂積なんだ」と考え諦める。

⑥穂積
瑞穂とは双子。イケメン。希美とは他校。口が悪い。素行も悪い。でも優しい。希美の恋愛相談役。

恋愛相談役→本命昇格の乙女ゲー黄金ルートを地で行くシナリオ。しかもツンデレ男。これはもう最高ですね。

閑音のことは昔は好きであったが、閑音が本当に好きのは瑞穂であると考え、恋を諦める。

瑞穂と帰宅中の希美を自転車でケガさせてしまい、完治までの間は自転車で二人乗り(青春!)で希美を送る。その過程でお互いの距離が縮まっていく。

実は、はじめ穂積は、瑞穂が閑音を好きだと知っていながら、閑音と瑞穂が上手くいくように当て馬として希美に「瑞穂は希美が好き」とうそをついて引き合わせた。しかし、だんだん穂積が希美を好きに、そして希美も穂積を好きになってしまい・・・という展開。

厳しい両親から、常に優秀な瑞穂と比べられていたのもあり、はじめは瑞穂のコピーになろうとしたが、閑音が瑞穂を穂積と呼んでいたのを聞いたとき、はじめて本当の自分になろうと決意し、今の性格に戻った。

⑦歩くん
希美の中学一年生の時の唯一の友人。ぼっち。オタク。読書好き(純文学もラノベも読む)。ラノベ作家志望。転校生として希美のクラスに入ってきた。席は希美の隣。
希美は歩くんのことを覚えており、だからこそ過去の自分ではなく、今の自分として生きるためにはじめは歩くんと距離を取る。一方、歩くんは姉崎さんを見てはじめは希美ちゃんだと気が付かないが、徐々に気づきはじめ、そのことを本人に聞いたタイミングで√分岐。
希美が町中でチャラ男に犯されそうになった時、1人で立ち向かった勇敢な男。けっきょくボコボコにされてしまうが、男として尊敬する。その後は隼に髪を切ってもらい、晴れて真のイケメンとなる。


ノーマル;
歩くんは姉崎さん≠希美ちゃんとして認識する。
希美は姉崎さんとして、歩くんに歩みよる。なぜなら、たとえ本当の自分を隠しても、オタク話で盛り上がれる唯一の友人、そして黒歴史だった孤独時代のたった一人の友だちとして、一緒に過ごす居心地がよかったのだ。
歩くんは、優等生としての体裁を保とうとしつつ、それでも自分に優しくしてくれる姉崎さんに「迷惑だから僕と関わらなくてもいいよ」というあきらめの態度であったが、姉崎さんから「楽しいから一緒にいる」と言われ、姉崎さんに希美ちゃんの面影を感じるエンド。希美は自分の殻を破れないまま、歩くんと秘密の放課後を今後も過ごすのであろう。

トゥルー:
クラスでオタクバレした歩くんがみんなにバカにされた状況で、ついに希美は自分の殻を破ることを決意する。なぜなら、大好きな歩くんを馬鹿にされ、さらには自分の好きなオタク趣味すら馬鹿にされ、歩くんの夢すら否定されたことが許せなくなったからだ。自分にウソをつくのはもうやめだ。

個人的にここが一番好きな場面。
希美からすれば、孤独時代を経験しているからこそ、今自分が置かれているスクールカースト1位の座を崩すことに誰よりも恐怖を感じていたはずだ。その障壁がぶっ壊れた瞬間、ぼくは叫んだ。

なんなら、有や隼と出会う前から希美を知っているので作中最古参であり、ある意味本命であるともいえる。


・乙女ゲームとして

ぼくは男性向けノベルゲームだけでなく、乙女ゲームもプレイするが、今までやった乙女ゲームで1番胸が高まったし、好きだと思った。

乙女ゲームの良さとして、以下の2つの視点で物語も見ることができることが挙げられる。

主人公目線:攻略対象のイケメンを恋愛対象に見る。
神の視点(プレイヤー):主人公を恋愛対象に見る。

上記について、主人公目線という点では、女性から見た理想の男性像、感情の機微、思考プロセス、恋愛観などを学ぶことができて新鮮であり、学ぶことは多い。
逆に、プレイヤー目線としては、自分は男性なので、主人公を恋愛対象とみることができる。いつも思うのだが、どうして乙女ゲームの主人公はこうも可愛く魅力的なのだろうか。下手な男性向けノベルゲームの居略ヒロインより可愛かったりする。

・お姉ちゃん萌え

やっぱりお姉ちゃんなんだよね。お姉ちゃんに抱きしめてほしいし、お姉ちゃんに愛されたいし、守られたい。

でも、そのお姉ちゃんが血のつながった実姉である必要があるのかを本作で考えさせられた。

義弟である隼が「血がつながってるかどうかより、これまで積み重ねてきた思い出と心のつながりの強さ」こそ大切だと言っていた。
これは確かにある。実姉だって、放っておいたらどこぞの彼氏を作りかねないので、血のつながりに胡坐をかかず、お姉ちゃんとはたくさんの思い出を作る必要がありそうだ。

・本作がフリゲーである点について

神はいる、そう思った。

このゲームは神である。僕の好きなものがほぼすべて詰め込まれたゲーム。

こんなゲームがフリゲーとして存在するのだ。

その事実が僕の中で世界を変えた。

世界を変えるのに、1円もいらないのだ。