ハイクオリティの作品だが……
タイパが重視される現代に合わせた短いけどクオリティを追及するという挑戦的な作品であり、
確かにCGをふんだんに使い、演出や音楽も素晴らしく、圧倒的なクオリティだった。
しかしそれはノベルゲームにおいてはという点であり、ぶっちゃげると、ここまでするなら
アニメや漫画でよくない？となってしまった。最初の数時間は驚きがあるもののそれもすぐに慣れてしまい、
やりたいこと、やろうとしていることは素晴らしいと思うが、それは本来のノベルゲームの良さを捨てて
アニメや漫画に近づいているだけのように思われた。
本来のノベルゲームの良さとは、瞬間風速だと自分は考えている。
ここぞと言うときに、圧倒的な美麗なCGが出て一気に物語を盛り上げる。
そのために立ち絵での会話劇があるのだと思っている。
今作は通常のノベルゲームと比べて立ち絵のシーンとCGのシーンの割合がほぼ逆転しており、
常にCGであった。なので、一番の盛り上がりどころが盛り上がりきれていない印象を受けた。
常に150キロのストレートだと打者は慣れてしまう。
だからこそ、緩急つけるチェンジアップが有効であるのと同じように。
あまりノベルゲームに親しんでいない人にとってはいいかもしれないが、これが標準になると
通常のノベルゲームを楽しめないと思うし、逆にノベルゲームに親しんでいる人は上記のような事を感じると思う。
それと、シナリオの内容を少女の内面の成長物語とするよりは、もっと動きがあって派手なバトル物やスポーツ物だと
また違っていたのかもしれないとは思った。
試みは素晴らしく作品としてのクオリティも十二分に高いが、
今後のノベルゲームの方向性を今一度考えてみるきっかけになった。
そんな作品だった。