目の前のゲームを投げるのは、これを読んでからでも遅くはあるまい
1.はじめに
例の如くこのゲームを滅茶苦茶楽しんだヤツのレビューです。
主にシステムについて解説していきたいと思います。
ちなみに筆者の好きなRPGは『ロマンシング サガ』です。
最少戦闘回数などには挑戦しませんが、
並程度の冒険力(ぼうけんぢから)があると自負しています。
2.どんなRPG?
ざっくり言うと、ほぼ全てのリソースが「お金」に帰結するRPGです。
基本的にはダンジョンに潜って、モンスターと戦いながら先に進んだり、
街に戻ったりしながらイベントを進めていく形式になります。
(ここだけ見ると同ブランドの『天秤の~』がかなり近いですね)
しかしこれはそれだけのゲームじゃない、
そこへ組み込まれた特徴的なシステムが
本作を一風変わったRPGに仕立て上げています。
そして個々の噛み合いは素晴らしく、我々を絶えず楽しませてくれます。
今回採用されているシステムは以下の通り
a.アイテム上納
b.アイテム合成
c.ユニット雇用
d.HP合算制
e.スキル取得の自由化
などなど沢山ありますが、今回説明するのは以上の点。
一つ一つ詳細を解説していきたいと思います。
a.アイテム上納
本作のジャンルは「迷宮攻略成り上がりRPG」となっていて、
ゲームの目的は「成り上がること」です。
少しストーリーの説明になるのですが、
主人公は舞台となる国に奴隷階級として搬入されます。
しかしそこはお金で身分を買える国、ダンジョンに潜ってお金を溜め、
身分を買って成り上がろう!
というのがゲームの大枠(実際のストーリーは少し違います)。
もっと掘り下げると「お金を溜める」のがゲームの、
プレイヤーが目指すべき目的です。
とは言うものの、本作はモンスターを倒してもお金は手に入りません。
モンスターが落とすのは武器防具素材などのアイテム。
このアイテムを売ってお金にするのです。
そこで登場するのがこの「アイテム上納」システム。
主人公は奴隷ですから、奴隷のモノは お上のモノです。
ダンジョンから街に戻った際、
ダンジョン内で手に入れたアイテムは
「強制的に」
「購入価格の4分の1、通常売却価格の半分のお金で」
買い取られます、上納するのです。
上納したアイテムですが、ゲーム内時間で9日(9回寝るまで)以内なら、
80%offで買い戻すことができます。おっとくー。ってそんなワケないですね。
単純に考えて、同じアイテムを4つ集めて初めて買い戻すことができるのですから。
ちなみに買い戻したアイテムは完全に自分のモノになります。
ポイントをまとめると
・ダンジョンでアイテムを集める
・街に帰るとそのアイテムは安く買われる
・沢山集めてお金を溜めて
・買い戻して自分のモノにしよう!
ということですね。
「ちょっと待って、お金って身分を買うために必要なんじゃないの?」
「いやいや、良い装備を買い戻せばそれだけお金を集めるのが楽になるよ」
「そう、なのかな……?」
さあ悩め!
b.アイテム合成
お次はコチラ。ゲームとしては よくあるワードですが、
本作では「武器防具に素材を加えて性能を強化」するシステムになります。
先の項でチラっと出ましたが、良い装備があれば楽にモンスターを倒せるようになる、
つまり稼ぎが楽になります。
もちろん上納されるアイテムでも、
ダンジョン内にいる間は好きに使うことができますから、
長くダンジョンに潜って稼げば良いのです。
と思いますよね。それがねー、本作はアイテム所持上限があるんですよ。
しかもユニット毎に固有で設定された数値が。
うろ覚えですけど、主人公一人だと15個くらいしかアイテムが持てなかったハズ。
厳密には上限ではなく、超えるとペナルティを受けるラインなのですが。
ペナルティは移動速度の低下、戦闘中の硬直フレームの増加など。
戦闘中のフレーム増加は全滅に直結しますから、できれば避けたいですね。
話を戻しますと、その所持上限の中でなんとかアイテムを有効活用する方法が
「アイテム合成」です。
いらないアイテムを素材にして、
装備を強化&所持枠の節約ができるシステムなのです。
ちなみにですが、仮に強化された装備品でも、買い取り価格は一定です。
「ということは強化せずに素材も持ち帰った方がお金になるんじゃないの?
結局所持上限は無いんだし」
「でも合成すると戦闘も楽になるし、買い戻すときも価格は同じ。
つまり素材と一緒に買い戻すより安いんだ」
「なる……ほど?」
やれ悩め!
c.ユニット雇用
出ました、こちらのシステム。
本作では、ユニットを「雇用」することでパーティに加えることができます。
というか基本的には雇用しなければパーティメンバーは増えません。
雇用と云うからにはもちろん、お金がかかります。
しかも、「雇用期間」というものがユニット毎に設定されており、
その日数だけ寝るとパーティから自動的に外れます。
本作の所謂「宿屋」は無料で利用することができますが、
ユニットを雇っているだけ「寝るのに お金がかかる」のです。
(例えば2日で160Gのキャラを雇っていると1泊80G掛かっているのと同義)
「じゃあ雇わない方が良いんじゃ。主人公だけならタダで全回復できるんでしょ?」
「効率の問題だよ。もう少し説明が続くからちゃんと聞いてね」
とデメリットの話ばかりをしてしまいましたが、
メリットの話に移しましょう。
基本的に本作はパーティ人数が多い方が有利です。
単純に戦闘が楽になるばかりか、アイテム所持上限も増えます。
パーティメンバーですが、他のメジャーなRPGと違って5人揃えれば良い、
というワケではありません。
最終的な本作のパーティ上限は25人です。
(実際これだけのユニットはいないと思うのですが、一度の戦闘に参加できる最大は25人)
初期で主人公含めて6人ほど、
順当にラスボスまで辿りつくと14人ほど仲間にすることができます。
つまり、ゲーム終盤まで「パーティを増やせばより有利になる」という状況が続くのです。
「そうか一度に沢山アイテムを持ち帰れるようになるってことなんだね」
「そういうこと。でも拾ったアイテムで賃金を賄えるかは分からないね」
「えぇ……」
ここで悩むかい?
d.HP合算制
仲間を増やすメリットの話になります。
本作はユニット固有のHPというものを持ちません。
実際は数値としては持っているのですが、
個々の数値を合わせたものを「パーティのHP」として扱い、
誰が攻撃を受けてもパーティのHPが消費されます。
要はパーティを増やせば増やすほどHPも増える、
ということなのですが。同時に当たり判定も増えます。
HPこそ共有していますが、攻撃は各ユニットが受けます。
勿論防御値などは各ユニットのものを参照するので、
同じ攻撃でも柔らかいキャラと堅いキャラでは最終的なHPの減少は違います。
全体・範囲攻撃を受けた場合も同じで、
パーティの頭数だけダメージが増える、
というのが本作の戦闘の楽しいところですね。
「なんかこの役立たずのクセにやけに賃金が高いおっさん、タゲ集中使えたんだ……」
「そうだね、でもボス戦以外ではやっぱり役立たずだね」
「普段から連れていかない方がいいのかな……?」
いよっ、悩んでる?
e.スキル取得の自由化
本作のスキルはレベル上昇で取得するものではなく、お金で買うものです。
スキルとは、
・戦闘中に自動で発動し、戦闘を有利にするもの(貫通や連撃など)
・技や魔法を習得したり、使用回数を増やしたりするもの
・武器防具を装備するのに必要なもの
・アイテム取得に必要なもの(壁破壊など)
などなど、取得して損のないものばかり。
でも意外と一つ一つが高いのよね、これが。
主人公の戦闘スキルを最大まで上げようと思ったら、
余裕で全員雇用できます。そのぐらい高い。
でも、1つずつ、少しずつ取得しようと思うと、
絶妙な価格設定になっています。
「スキル取得は後回しになりそう」
「そうだね。でももう一回考えるために、少し簡単な計算をしようか」
雇用できるユニットを全員雇用した場合の宿屋単価は1466G
闘技の羽の単価が500G
一泊と闘技の羽(技の使用回数を回復するアイテム)3つを等価とする(34Gの差額を考えない)
闘技の羽3つで回復できるだけ回復魔法を使った場合、HPは全回復できるものとする
この時、宿屋及び闘技の羽3つの効果には技の使用回数全快も含まれている
「……、つまり?」
「技を習得するスキルを取得した場合、少しややこしい云い方になるけども、
宿屋や闘技の羽に掛けるお金(約1500G)の価値を高めることができるんだ」
「1500Gなのに価値が高まる?」
「そう、1500Gで回復できる技が増える。
つまり、一泊毎の継戦能力が上がる、費用対効果が高まるってことだね」
「……??」
大いに悩め!
□システムまとめ
ここまでで少しは伝わると幸いなのですが、初めに述べたように、
本作はほぼ全てのリソースが「お金」と直結しています。
何かを取得する場合は、
「その お金で取得できるかもしれない他の何か」と「交換」を迫られるのです。
その選択が堪らず楽しい!
しかもその選択の場というのは、最後まで、1週をクリアしてさえ続くほどの懐を持っています。
これがシステム同士の噛み合いの素晴らしさだと思っています。そしてそれが本作の楽しさ。
プレイヤーに「自分で選択している」と思わせる手段なのです。
そしてその「選択」を褒めるのが本当に上手い。
3.戦闘システム
RPGと云えば戦闘システムも気になる要素ですよね。
ということで別項を設けました。
筆者の持論としては、本作の戦闘は他の要素(やりくり要素など)と不可分なのですが、
実際戦闘単体でも良い味しているので個別に解説します。
戦闘システムでは
Ⅰ.フレーム進行
Ⅱ.チェインコンボ
Ⅲ.防御属性
Ⅳ.隊列
Ⅴ.ダメージ計算
が重要になってくるでしょうか。
Ⅰ.フレーム進行
戦女神をプレイしたことのある人にとっては御馴染みのシステムですね。
某最終幻想シリーズの4作目から採用されている
「アクティブタイムバトル」に近いです。
戦闘に於ける時間の最小単位をF(フレーム)とし、
次にユニットが何F後に行動できるかを表しています。
順番が回ってきたユニットから行動し、
行動後は行動毎に決められた硬直Fが発生し、また待機します。
今作は技発動Fが存在せず、行動を選択したら同F内で行動します。(魔法も同様)
大技ほど硬直Fが大きいですから、相手の待機Fを確認して、
小技を入れてから相手の順番が回ってくる前にもう一回行動できるよう調整する、
アイテムでFを節約する、などは御馴染みの戦術ですね。
今作はパーティキャラが増えた分、過去作よりもこのシステム自体は簡略化されています。
が、続くシステムが新たな戦術性を生み出しているので解説していきましょう。
Ⅱチェインコンボ
今作の新要素です。
味方ユニットが連続で行動すると、
クリティカルの発生率が上がる、というシステムです。
ちなみに防御やアイテム(これはうろ覚え)、
逃走失敗などをするとコンボが途切れます。
意外なところで回復魔法、補助行動ではコンボが途切れません。
今作でも防御は結構重要になってきますから、
クリティカルの恩恵とトレードオフなのがニクイところですね。
ちなみにですが、防御は固定Fになりました。
Ⅲ.防御属性
従来作と比べて簡略化され、分かりやすくなりました。
従来では「霊体」「不死」なども水や地といった属性と並列に扱われていたのですが、
今作の属性は「水」「炎」「電撃」「地」の四すくみに、
「光」「闇」の相互が他4つの上位にある形になっています。
そこへ「霊体」「不死」などの種族が設定されている、
という形です。要するに、炎の霊体や水の不死がいるみたいな感じですね。
ポ〇モンの複属性をイメージすれば分かりやすいかもしれません。
今作では属性優位がある場合、
攻撃側はダメ―ジが一律50%アップ、
防御が20%カットとなっています。
ダメージカットは抑えめな印象ですが、
ダメージアップは痛いので、しっかり属性は確認したいですね。
Ⅳ.隊列
5×5マスの自陣にユニットを配置していき、
選択した隊列の条件を満たせばボーナスを得られる、というシステムです。
今作はVERITAまでと同じように1ユニット1マスです。
今作では従来作より全体・範囲攻撃が危険になっていますから、
より「誰が喰らうように調整するか?」という思考が大事になってきます。
というのも、全体攻撃はどうしようもないのですが、
範囲攻撃はある程度受け手を調整することができます。
敵AIは範囲選択をするとき「より沢山のユニット巻き込む」ように選択します。
「一番ダメージが通る」ようには選択しないあたりがミソです。(実際は違ったらアレですけど)
なので、柔らかいユニット4体よりも、
堅いユニットを複数含めた6体が喰らった方がダメージは安い場合を考えて、
敵の攻撃範囲に合わせて配置するのも、時には重要になってきます。
HP合算制ならではの戦術ですね。
Ⅴ.ダメージ計算とステータス
なんかもっと先に解説すべき項目じゃないかって? 筆者もそう思ってた!
今作ですが、恐らく攻撃-防御のめっちゃ簡単な計算式だと思います。
攻撃回数の概念は撤廃されています。
そこに属性補正が乗る感じでしょうか。
ユニットのステータスについても一緒に解説するんですけど、
今作はユニットが持つステータスの数値はかなり小さいです。
基本的には2桁、終盤になって武器と技とユニットの攻撃力を合わせて
初めて3桁にいく場合がほとんどです。
レベルアップでもステータスが1か2上がるくらいで、
しかも相手もこちらのレベルに応じてレベルが上がるので、
装備や戦術が大事になってくるのです。
装備品はレベルアップとは比べものにならないくらいステータスが上がりますからね。
□戦闘システムまとめ
ボス戦前の会話でセーブしてしまっても、
そして負けてしまったとしても、
以上の要素を駆使すれば勝てる可能性が出てきます。
(筆者は泣く泣くオートセーブからやり直すことはありませんでした。やり方次第で全部勝てました)
そこが楽しいですね。
ガッチガチに対策すれば戦闘の難易度自体はそこまで高くないですが、
戦闘に関わる要素が多いので、
自分で縛りをかければ自由に難易度調整ができる懐を持っています。
遊ぼうぜ!
4.まとめ
以上解説してきましたが、少しでも楽しさが伝われば幸いです。
このゲーム最初のレベル上限が50なんですけど(終盤から上限解放アリ)、
筆者がラスボスを倒した時点でパーティの平均レベルが48でした。
これだけでもこのゲームが素晴らしいバランスをしていることが分かります。
筆者は、戦闘はなるべく避けつつ、回収できるものはなるべく回収する、
というプレイスタイルで、
戦闘回数自体は製作者が想定するよりも遥かに低いだろう
という謎の自負がありました。
しかし、ラスボスを倒した時のレベルを見て、
「これは負けた!」と清々しい気分になりました。
製作者の想定内ってワケですね。
これだけ多くの要素を持ちながら個々の噛み合いが良く、
バランスも優れたゲーム、楽しくないわけがない!
5.おわりに
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
何か「ここ解説してほしい」といった点あれば、コメント等いただければと思います。
それでは。