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shirusuさんの夜明け前より瑠璃色な -Brighter than dawning blue- PC版の長文感想

ユーザー
shirusu
ゲーム
夜明け前より瑠璃色な -Brighter than dawning blue- PC版
ブランド
AUGUST
得点
76
参照数
791

一言コメント

話題だったアニメーションのキャベツの巻まで視聴して頭を抱えて、無印のPC体験版をやって「それほど酷くなさそう」と思い、プレミアムエディションの発売で「エロ要らないし…」ということで購入しました。トンデモ設定もギリギリ許容出来る範囲だったので、まぁまぁ満足できる良作でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

(強制)1周目、フィーナ・ファム・アーシュライト姫さま
<ruby><rb>Character Voice</rb><rp>(</rp><rt>キャラクター ヴォイス</rt><rp>)</rp></ruby> が“桂雪路”先生の人という刷り込みが頭から離れず困ってしまいましたが、無難な滑り出し。
2周目、ふらふらと選択していたら見事に、鷹見沢仁お兄様の“BAD END”
3周目、攻略情報を頼りに、鷹見沢菜月さんシナリオ
幼馴染みキャラクターのあまりにストレートな王道っぷりシナリオに、言葉もありません。
4周目、朝霧麻衣ちゃん
シナリオを花粉症で頭痛がするのと闘いながら読みました。兄妹テーマではひねられたシナリオばかり読んできたためか、あっさりしているように思われました。エロ無しだから背徳感が少ないからかな?
5周目、ミア・クレメンティス嬢
テーマは職業婦人の“仕事”と“恋愛”の二択でしたが、フィーナ姫様の方からミア嬢に暇を出されて“恋愛”で落着って…、あっさりしてますね。一旦、月に帰ってしまったミア嬢を追っかける主人公ってストーリーじゃ他より長くなってしまいますか。
6周目、朝霧家の大黒柱?お母さん役の 穂積さやか お姉さん
綺麗で才女で可愛くて家族にだけは無防備な面を見せることもあるという年上好きのキャラクターとシナリオでした。
ミア・クレメンティス嬢のシナリオと違い遠距離恋愛を早い段階で選択し支援しようとする主人公、従姉という設定もあり、朝霧麻衣ちゃんのシナリオのように、家族が崩れるでは?という恐怖が出る前に麻衣ちゃんからすんなりと認められる主人公。 攻略順として麻衣ちゃん、ミアちゃんを先に読んでいたから重くならずに読んでいる方は楽でした。
7周目、“みどりん”こと遠山翠さん
モブキャラからの昇格らしく“お姉さん”“義妹”“幼馴染み”“王族”という並み居る強豪を打ち破るためもあり、やたら力の入ったシナリオの印象。
“みどりん”の幼少時のトラウマを克服するのを手伝う主人公でしたが“幼馴染み”“義妹”も主人公の争奪戦にはならず、“みどりん”の支援に移行したのも、このブランドとして自然な流れなんでしょうね。争奪のため“血”を見たりする事態になれば、それは他のブランドの話になってしまいます。
フィーナ・ファム・アーシュライト姫さまの“ご学友”になっていた遠山翠さんのご両親、少々のことでは動じないのはさすが大人というか一流の演奏家というところでしょうか。
8周目、エステル・フリージアさん
月人と地球人の融和・和解に自身の出自の話も絡まって、アイデンティティの喪失と再発見というハードな話だと思ったのですが、重くはならずに、なんとか、読み終わりました。
なんだけど、オチの後で光学迷彩エフェクトのかかった謎の人物が登場して、吹き飛んでしまいました。
9周目、リースリット・ノエルお嬢ちゃん
<ruby><rb>Character Voice</rb><rp>(</rp><rt>キャラクター ヴォイス</rt><rp>)</rp></ruby> が“桂ヒナギク”の人=凛々しく美しく格好良くて強いイメージだったので、“等身の低いキャラクターでどうなるの?”と思っていましたら、“オチから逆算したキャスティングだったのかなぁ?”と、慣れたのとSF要素とで納得した次第。
最終話、『夜明け前より瑠璃色な』のルート
ロストテクノロジーとかのSF要素に、政治の領域までサラッと話が進んでいくのですが、時事ネタとして、北の方にいる将軍様の“飛翔体”が問題になるように載っけている物が、〝人工衛星〟ならば“ロケット”であり、〝爆発物〟ならば“弾道ミサイル”となるわけで、地球と月のトランスポーターも兵器として運用できてしまう。
技術があっても、それを運用するのは詰まるところ“人間”という、政治を含めたお話になってしまうのは、“銀河英雄伝説”ぽい、と書いちゃいましょう。
あっさり目ぐらいが重くなりすぎず、読めて良かったのかもしれませんね。
“おまけ”
割と崩した話を小ネタとして集めた感じで、“某ブランドの作品のように悪のりのあまりガッカリする”ようなことも無く読み終える事ができました。

月の王国の秘書官 兼任 駐在武官 カレン・クラヴィウス さんと学院生の恋路のお話とかは、やっぱり無かったのは残念かな? でも、これ以上、年上のヒロインを増員してもねぇ、シナリオも多忙な外交官とバイトに勤しむ学院生では難しいかも。

各キャラクターもニッチではなく幅広くバラエティに富み、あらゆる人に受け入れてもらえそうという点に対し、アニメーション“夜明け前より瑠璃色な Crescent Love”のダメさから“黒歴史”扱いにも納得できました。

“トンデモ設定”は特徴ではあるけれど、シナリオには突出したところがないから良作という評価となりました。