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shiratoriさんのきまぐれテンプテーション2 ゆうやみ廻奇譚の長文感想

ユーザー
shiratori
ゲーム
きまぐれテンプテーション2 ゆうやみ廻奇譚
ブランド
シルキーズプラスWASABI
得点
70
参照数
574

一言コメント

猫又のコハルを E-mote の立ち絵にしなかったのは、今作最大のミス!? あと前作同様に『HシーンE-moteアニメパック おまけだから許してね♡2』はよ!(追記:2025/1/3, 4/30)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

履歴
(2024年)
 12/06:初稿(はじめに、事前学習、プレイ後の第一印象、シナリオについて、ゲーム性について、演出について、E-mote(エモート)について、おわりに、備忘録)
(2025年)
 01/03:追記(「当サイトでの関心度」を備忘録の最後に追記)
 04/30:追記(「“バグ修正パッチ”と“Hシーンアニメパック”」を備忘録の最後に追記)


〇はじめに
 前作から早5年、光陰矢の如しとはまさにこの事、私にとっては『きまテン』への思い入れは……ないけど(笑)、何となく『ななリン』から始まる一連の時系列作品はプレイしておかなければいけないみたいな“義務感”? というより“勿体ない感”?――でしょうかね。

 そんな今作、前作と比較して私がどう感じたのかって観点で、今回は書いてみようかなって思います。


〇事前学習
 最初に、今作はどういった意図で制作したのかってことを把握するのは重要だと思ったので、発売前にいろいろと調べてみました。

 企画・シナリオ担当のかずきふみ氏によれば、

  ①前作から引き続き2の方も「ストーリーはいいからアンネを愛でてよ!」がコンセプト
   (もちろんストーリーに手を抜いているわけではない)
   アンネがより可愛くなるようにいろいろと強化
  ②前作でのアンネは基本となる悪魔服(服?)以外は、人間っぽい服装
   今作ではすべて悪魔っぽい衣装(相変わらずまったく隠す気なし)
  ③登場人物は新キャラを加えつつ、前作のキャラも一部を除き続投
  ④前作同様Hシーンはアンネだけだが、その分、前作以上に注力

ということでした。

 これらから事前に私が思ったことは、やはり昨今のエロゲーの流行りというか、ストーリーよりエッチシーンにより力を注ぎましたって感じなのかなって。私は、ストーリー重視派なので、この流れは良くないと感じてはいるのですが……売れてナンボに逆らえないのが現実。

 さて、かずきふみ氏は去年の4月から1年間、BugBug.NEWS で「かずきふみのシナリオLife」として連載コラムを書かれていましたが、今作の制作方針とかが垣間見えていて、面白かったです。

 例えば今作に関係する事柄を列挙するなら、次のとおり。

 ・ロープライス規模の作品に注力
  自分なりに今後のことを考えた結果、ロープライスのお仕事を優先的に引き受け
  ロープライス規模でいかに豪華に見せるか、いかに価格以上の価値を出すかを考えて企画

 ・ちょっとした遊べる要素を提供
  ゲーム性を盛り込むと「めんどくさい!」って言われがちだが、
  マップ移動や探索要素、豊富な選択肢と細かな分岐を盛り込むことを重視

 ・シナリオの書き方
  【サクラエディタ】でエディット
  読みやすさ重視で、一行に目いっぱい詰め込まず、句読点などで改行
  できる限り1クリックを短めの文字数で済ませたい性分で、限界まで書くことは稀
  セリフの二行目と三行目の頭に空白を挿入(一行目の文頭とあわせるため。メッセージウィンドウに表示した際、文字が揃って綺麗)
  セリフの途中で改行したり空白を入れたりは、小説ではあまりやらない作業。小説とシナリオでは様々な部分で書き方が変わってくるが、一番異なるのはスクリプトの指定や声優さんへの補足(使用するプログラムにもよるが、行頭に【//】という記号入力でメモ書き)
 例)前作のシナリオの場合
  ---------------------------------------------
  アンネリーゼ↵
  「でもハルヒサ童貞でしょ?」↵
  ↵
  悠久
  「……」↵
  ↵
  唐突に胸をえぐる一言を投げつけられて、真顔になる。↵
  ---------------------------------------------
  アンネリーゼ↵
  「童貞だよ、間違いないよ。↵
  □キミキミってあたしの名前をかたくなに呼ばないし、↵
  □女の子に慣れてないのバレバレだよ」↵
  ---------------------------------------------
  //背景:主人公の部屋↵
  ↵
  //真顔で詰める感じでお願いします↵
  アンネリーゼ↵
  「コミュ障陰キャ童貞野郎だろ、お前」↵
  ---------------------------------------------

 ・理想のAVG
  シナリオを書く際にテンポ感を重視しているためか、漫画やアニメ的な演出のAVGを「すごい!」と感じる
  演出の幅が広がれば広がるほどモノローグでの説明を省けるので、非常にテンポがよく、臨場感のある作品になる
  キャラクターの内面はテキストでしっかりと描き、その他は映像や音で描写してテンポよく物語を展開する

 ・前作プレイ推奨
  前作『きまぐれテンプテーション』のゴリゴリの続編。2をプレイする前にぜひ1の方をプレイ
  『なないろリンカネーション』と『あけいろ怪奇譚』の流れを汲む、同一の世界観を持つ作品。お話し的な繋がりはないが、両作品に関連する要素もかなり含んでいるので、プレイしておくとより楽しめる

 以上を踏まえて、今作のプレイと相成りました。


〇プレイ後の第一印象
 前作からパワーダウンしているのは間違いない。私は前作のサブセット版? との印象を持ってしまいました。こじんまりとした印象薄の佳作みたいな。

 具体的には、続編だから既知の世界観でインパクト減少、アンネリーゼへの耐性と免疫力もついてしまって、よっぽどの驚き成分でも提示されない限り、なあなあで脳内処理されてしまうレベルみたいな。

 他の方々の一言感想で、FD(ファンディスク)みたいと書かれてしまっているのも、偏(ひとえ)にそれが原因だと思われます。

 しかし「〇事前学習」にも書いたのだけれど、“理想のAVG”を目指すべくE-moteでのアニメ表現以外にも演出上の動的表現と能動性を心がけ、臨場感とテンポ感の向上を図った誠意と努力の形跡は強く感じられましたし、そこは最大限に評価できる点であると思う。思うのですが、如何(いかん)せん前作よりボリュームが減少したことが、いろいろと悪影響を与えてしまったというか、大は小を兼ねる、やっぱりボリュームって大事なんだなって、改めて思ったのでした。

 このボリューム減少の悪影響は、直接的にはエンディング分岐のパターン数減少(前作:6⇒今作:3)から始まって、些細な事柄では、タイトル画面のアンネリーゼの顔表情変化のパターン数減少(前作:4⇒今作:3〈うち1つは起動時の1回のみ表示なため実質2〉)にまで、影響を及ぼしてしまっているのです。つまり、制作の全工程にわたって、労力削減という方向性に考え方がシフトしてしまったわけです。

 その結果、本サイトでの定量評価データ(2024/12/6時点)では、

  得点の中央値(前作:80、今作:80)
  得点の平均値(前作:81、今作:79)
  面白くなってきた時間中央値(前作:1時間、今作:3時間)
  プレイ時間中央値(前作:10時間、今作:6時間)

となっていて、面白さは減少って感じでしょうか(前作はソッコーで面白くなってその後9時間も遊べたのに、今作では面白くなるのに時間を要した上にボリューム減少の影響で、面白くなってから3時間しか遊べなかったってことですかね)。

 それにも拘らず、得点上は前作並みに評価される不思議さ!? 恐らく面白さとは別の観点で、前作より評価すべき“モノ”があったってことですかね。その“モノ”の本質は何かっていうと、私は演出面(臨場感、能動性、動的表現など)の向上かなって思いました。となると、面白さの足を引っ張ったのはシナリオが戦犯となるのですが、シナリオの内容は普通に良くできていると思います。

 では何がいけなかったのかというと、ストーリーのボリューム減少で、面白さに浸る時間が少なくなったってことに尽きるかと思います。制作側もそれを意識したのか、本編のプレイ完了後も遊べるように、“おまけ”として「アンネViewer」や「アンネの部屋」を用意したわけですが、はっきり言って、利用するユーザーはごく少数だと思います。正直、めんどくさい。私などは、どうしても提供するというのなら「コハルViewer」と「コハルの部屋」を用意しろよって思ったくらいです。

 また、エッチシーンの満足度も本サイトの「おかずに使える状況」の度数分布を見ると、前作よりもだいぶ減少している感じです。「前作以上に注力」した筈が、現実には企画倒れした感が漂っているのが現状なのです。数値は嘘つかない。

 これに関連して「Hモード」にてユーザー参加型シミュレーションを採用し、プレイヤーの能動的参加を向上させようとしたみたいだけれど、パターン数1の文字どおりのワンパターン体位(正常位)で、結果的にボリューム減少を補うためのHシーン割増工作の一環みたいに思えてしまったのも、仇となってしまった感じです。

 かずきふみ氏は、ロープライス規模の作品に活路を見出そうとしており、「ロープライス規模でいかに豪華に見せるか、いかに価格以上の価値を出すかを考えて企画」という方針を掲げています。私もそれには大賛成で、自分の日常生活での閉塞的で陰鬱な現状を打破すべく、“プチ”ゴージャスで“プチ”ラグジュアリーな雰囲気を味わいたいのよ、せめて“プチ”プレミアム感くらいはもたらして欲しいのよ――ロープラエロゲーには……。そんな非日常性の幸福感を精神的に感じさせて欲しいと、切に願っているのです。

 然(しか)るに、今作では豪華さを体現するエッセンスの一つ(というより本質?)であるボリュームを絞ってどうするのって感じです。いくらロープライス規模とはいっても、その規模感の縮小にも限度があって、つまり、ある程度はストーリーとしてのボリューム確保は必要ってことです――せめて前作くらいの……。

 以上を踏まえると、かずきふみ氏も最近は仕事が忙しくて、一つの作品に十分な時間を割けないのかもしれませんが、「ロープライス規模でいかに豪華に見せるか、いかに価格以上の価値を出すかを考えて企画」って方針は、今作では残念ながら部分的にしか実現しなかったと思いました。

 さて、ここまでネガティブなことばかり書いてしまいましたが、ただまあ、ゲーム本来の目的であるゲーム性として能動的に遊べる要素と環境を真摯に追及したこと自体は、ポジティブに賞賛すべき事柄であると思うのです。私は、最近のエロゲーにおける選択肢があるのかないのかの一本道状態で、かつエロシーンマシマシ(シーン数も時間も)でストーリー成分減少での紙芝居エロゲー仕様には辟易していたため、一服の清涼剤にはなりました。


〇シナリオについて
 かずきふみ氏のシナリオは「〇事前学習」に書いたとおり、

 ・セリフの途中で改行
 ・空白の入力
 ・短文での1クリック

だったりが方針なわけですが、これって漫画のフキダシに入れるセリフの推奨する書き方、

 ・長いセリフはこまめに改行
 ・文節で区切って改行
 ・簡潔で簡単な言葉を使用

を参考にしているってことですよね。「テンポ感重視で漫画やアニメ的な演出が◎」とのことですから、そのとおりのシナリオを心がけているわけです。

 私は前作の長文感想で、「一つの句をできるだけ短く簡潔にってことを心がけていて、本当に感心してしまいます。ビジネス文章の推奨書き方かよって(笑)。そのため、個性的な文章や文体にはならないので、小説には不向きなのかも」って書いたのですが、改めて調査してみると実態もそのまんまでしたね。

 また前作の感想で、「ひらがなでは、長音符として「ー」は使わず、波線(波ダッシュ)「~」を必ず使うのは、日本語での長音表記ルール(ひらがなは母音、カタカナは「ー」)に従っているのだと思う」的なことを書いてしまったのですが、今作をプレイしてみると、次のとおり「ひらがな+長音符」も、キャラクターに依存せず結構な頻度で使用しておりました。

 アンネリーゼ「うるさいなー。うっかりしてたのっ」
 晶『おはよー、うちでーす』
 花音『おつかれでーす』
 悠久「あ、そういうの間に合ってますー」

 実のところ「~」と「ー」の使い分けが、自分の中ではイマイチ分かっておりません。

 アンネリーゼ「能力存分に生かせるぞ~ダーリンの役に立てるぞーって
        思ったんだけど、そもそももっと楽な任務なら
        生かす必要もなかったわけで」

 この例など、「ぞ~」と「ぞー」の使い分けが、声優さんの読みを聞いてもサッパリです。

 更にビックリしたのが、三点リーダー(……)は以前から多用していたことは認識していたのですが、ダッシュ(――)も多用していたことです。もっとも「……」と「――」の使い分け方針が、いまいち不明なのですがね。また次のとおり、意表を突く使い方もしていました。

 ①ト書き:あたしの秘密がバレてしまうんじゃないか――って。
 ②コハル「わたしが、山になんて入ったから、二人は……っ」

 ②はまだなんとなく分かりそうですが、①は「ないか」と「って」の間にちょっとした間をおきたかったのか、はたまた力んで踏ん張りたかったのか……漏れちゃいますよね、いろいろ(笑)。私など、義務教育の国語で「――」や「……」の使い方なんて習わなかったから、未だに理解不足なんですよね。

 それと、出ました多重鍵括弧表現。最近、エロゲーのシナリオでも見る機会が増えてきましたよね。

 悠久「壱!」
 アンネリーゼ「弐の!」
 悠久・アンネリーゼ「「参!」」

 まあアレですかね。最近は、かずきふみ氏もラノベ表現信奉者になってしまったってことでしょうか。ラノベ再参入も視野に入ってきたってことなのかな。ここでは、テンポ重視の表現の一環として使用ってことなのだろうけれども、いつ頃からかずきふみ氏は使い始めたのだろうか。『ガンナイトガール』の時には、こんな書き方はしていなかっただろうって、思うのですが……。

 最後に、肝心のストーリーについてですが、特に驚くべき事柄は何もありませんでした。構成も内容もテンプレの範疇を逸脱するものではありません。多分に、どこかで見知った内容だらけの既視感(デジャブじゃぶじゃぶ)を覚えるストーリー展開だったと思います。

 とはいえ、絵も演出もゲーム性も何も悪くありません。偏(ひとえ)に、ただただボリュームが足りなくて、ストーリーに深み(うま味?)成分を十分に与えられなかったことが、残念な点だと思いました。


〇ゲーム性について
 「〇事前学習」に書いたとおり、「マップ移動や探索要素、豊富な選択肢と細かな分岐を盛り込むことを重視」という企画方針のため、今作はその方針どおりに制作されています。とても良いことだと思います。

 ただし前作でもそうなのですが、私はこの手の方針をとても望んでいるのにも拘らず、なぜかドツボにハマってフルコンプに四苦八苦することになったりします。どうも私は、根本的に謎解き能力が不足しているみたいです。

 前作では事件解決ルートに入れず迷宮入りしそうになるし、今作では“CG”と“Scene”が全部埋まらず、アンネリーゼのコスチューム変更が関係することを理解するまで、延々と3時間ほどドツボにハマってしまいました――トホホ。

 正しく制作者冥利に尽きるユーザーであることは間違いありません(笑)。

P.S.
 呪物の収集とかしないで進行すると、キルトとの会話で差分の文章とかあったりするから、いろいろな進行パターンに対する制御を内部ではしているんだろうなって考えると、この手のゲームってライターさんを含めて開発スタッフの方々には“お疲れ様”って言いたくなるよね。きっとまだ見ていない差分の文章とか、けっこうあるんだろうなって思います。そういう意味では、私はまだまだ遊びつくしていないといえますね。


〇演出について
 E-moteでの立ち絵をはじめ全体的な演出において、単なる静止画ではなく、できるだけ動的表現を心がける開発方針は、とても良いと思う。思うのですが、コハルやエロシーンでの静止画で、文章内容に絵の差分処理が適宜追随しないことがあるのは、やっぱりいただけません。例えば、次のとおり。

・コハルの絵
-----------------------------------------
ト書き:俺の足元で座り、ぺこりと頭を下げる。
 ⇒頭なんか下げない。
ト書き:俺が即答したのが意外だったのか、
    コハルさんが目をぱちくりとさせる。
 ⇒目をぱちくりなんてしない。
-----------------------------------------
 猫なのに顔の表情変化をさせたりして、細かい対応をするよな~と最初は思ったのだけれど、コハルはE-moteの立ち絵ではないから、一番最初の尻尾が二つに変化した差分表示を除けば、ポーズは固定で顔の差分表情変化だけなんですよね(実際には、変化の頻度や度合いが少なく、静止画のコハルをボーっと眺めて、終始睨めっこ状態になってしまう)。そのため、地の文の説明内容に追随した動きに乏しい場合があることが、今作の残念な点ですかね。
 そもそも、アンネリーゼと悠久に、
  アンネリーゼ「あの猫ちゃん……可愛すぎない?」
  アンネリーゼ「愛嬌エグくない?」
  悠久「話してるとき撫でたい欲求と戦ってたからね、俺」
などと言わせるくらいなら、それを実現すれよ。可愛い動物は愛でるのが基本。E-moteでとことん動かさないと駄目でしょう。“おまけ”で「アンネViewer」や「アンネの部屋」を用意するより、「コハルViewer」と「コハルの部屋」を用意した方が、ユーザーの癒やし成分がマシマシになってハッピー、よっぽど有意義ではなかったのかと思ってしまいました。

・女性上位での手コキ
-----------------------------------------
ト書き:精液が飛び散らないよう、アンネが亀頭を手のひらで包み、
    受け止める。
 ⇒ずっとペニスの竿を握っているだけで、亀頭を手のひらで包み精液を受け止めたりしない。
ト書き:その手を口元に運び、ぺろりと舐めて、アンネは恍惚と笑う。
 ⇒手を口元に運び、ぺろりと舐めたりなんかしない。
-----------------------------------------
・お風呂でのセックス1回目(後背位)
-----------------------------------------
ト書き:揺れるお尻をしっかり掴み、もう一度。
 ⇒絵はお尻を掴んでくれない。
ト書き:射精しない程度にゆっくり腰を動かしつつ、
    アンネが退屈しないよう乳首を強めにつまみ、
    クリトリスもクニクニと指で潰す。
 ⇒当然、そんな差分描写は一切ない。
ト書き:お尻を掴む手に少し力を入れ、腰を引いて。
    ゆっくり、ペニスを引き抜く。
 ⇒「ペニスを引き抜く」差分描写だけあり。
-----------------------------------------
 前作みたく、E-moteでのアニメーションにするのかと思ったのに、体位固定の「Hモード」以外のエロシーンは静止画で、文章内容に絵の差分処理が追随しない場合があります。まあ、よくあるエロゲーあるあるですけどね。


〇E-mote(エモート)について
 シルキーズプラスとしては、E-moteを今後どうするのかなってことについて、ちょっと興味があります。

 なぜなら、私は前作の長文感想でE-moteについても言及したのですが、何しろE-moteは、
2020年4月17日付で「昨今の新型コロナウイルスの影響により、本年初夏に提供を予定しておりました『E-mote4.0』の提供開始時期を見直しさせていただきます」との発表後、2020年6月12日付で『E-mote 3.9.7p3』を発表して以来バージョンアップなどしておらず、『E-mote4.0』どこ行っちゃったの状態なのですから。

 改めて調べてみると、2022年9月16日付の窓の杜のニュースとして「(有)エムツーは9月15日、2Dアニメーション制作ツール『E-mote(エモート)』の最新版v4.0を発表した。2022年度内に正式リリース予定で、v4.0以降の料金プランは無料(2台目以降のエディターは有料での提供を予定)。同日より開幕した『東京ゲームショウ2022』の会場内でデモンストレーション展示を行なっていた」との記事がありました。

 しかし、2024年末現在でもE-moteの公式Webサイトでのニュース告知は、M2の夏季休業と冬季休業のお知らせを毎年定期的に掲示するのみで、v4.0の正式リリース案内など未だに行われていないのが実情なのです。

 ここまで来ると、E-moteの将来性についていろいろと心配せざるを得ない状況だと思うのですが、Live2D などへの移行とか考えたりしないのだろうか。


〇おわりに
 「〇事前学習」で書いたかずきふみ氏の方針内容に基づいて、実際にどこまで実現できているのかで、最終的な評価としたいと思います。

 ①前作から引き続き2の方も「ストーリーはいいからアンネを愛でてよ!」がコンセプト
  (もちろんストーリーに手を抜いているわけではない)
  アンネがより可愛くなるようにいろいろと強化
 -----------------------------------------
 ⇒「アンネViewer」や「アンネの部屋」を用意したのも、この方針の一環だとは思いますが、実際に用意されても利用する方々なんて、ごく少数だと思われます。大概、本編プレイ完了でそのままフェードアウト――プレイ終了でしょう。
  そのため、殆どの方々は本編のストーリー強化の方を望むと思われるのですが、ストーリー自体は明らかに前作よりボリュームが少なめ状態ですから、手を抜いていると思われても仕方がない状況です。ボリュームが少なかったため、ストーリー上でアンネ成分を満喫できたかというと、ちょっと微妙です。

 ②前作でのアンネは基本となる悪魔服(服?)以外は、人間っぽい服装
  今作ではすべて悪魔っぽい衣装(相変わらずまったく隠す気なし)
 -----------------------------------------
 ⇒これも①の方針に関連しているのでしょうが、エッチ成分マシマシ活動の一環でしょうね。実のところ、売り上げ向上やユーザー満足度向上に貢献する妙手だったのかどうかは、判断しかねます。
  よりスケスケのコスプレ度マシマシでサービスを提供したってことだから、エロゲーとしては非日常性の世界観を提供する観点からも、正しい判断で実現したってことになるのかもしれません。ただ悪魔服ばかりでなく、日常性とのギャップを強調して認識させる比較対象手段として、普段着バージョンも必要だったのではないかとは思いました(ストーリーの最後で前作登場人物三名と一緒に、普段着でしれっと納まっている一枚絵はありましたが……)。

 ③登場人物は新キャラを加えつつ、前作のキャラも一部を除き続投
 -----------------------------------------
 ⇒前作のキャラって、人間仕様アンネリーゼを含む四人一緒の絵が最後に1枚だけ提示されるだけで、実質スマホでの音声会話出演のみですからね。サブどころかモブレベルの扱いを、続投と呼んでも良いものやら。これも①の方針が強く影響した結果でしょうか。それとも費用と時間をケチった結果でしょうか。

 ④前作同様Hシーンはアンネだけだが、その分、前作以上に注力
 -----------------------------------------
 ⇒今作で唯一のE-moteエッチ・シミュレーションである「Hモード」(正常位で固定)を多用したHシーン水増し仕様を、どう評価すべきかは判断に苦しみます。何しろ「Hモード」以外のエロシーンは、単なる静止画ですからね。前作同様に『HシーンE-moteアニメパック おまけだから許してね♡2』が待たれるところです。

 総じて結局のところ、なんとか頑張って全ての方針を実現しようとしたのだけれどボリューム不足負けしたってのが、私の結論なんですけど。

とは言え、暇つぶしレベルよりは面白いといえるので、70点にしたいと思います(私の評価はストーリー成分に重きを置くスタイルのため)。もし『HシーンE-moteアニメパック』が出るのなら、出来にもよりますが72点以上に変更しても良いかも……。
(2025/4/30追記:4/28に「バグ修正パッチ」と「Hシーンアニメパック(Hシーンアニメ追加パッチ)」が公開されたが、今となってはインパクト不足で加点は見送り)

P.S.
 前作みたく【全年齢版】の計画とかあるんですかね。とは言っても、前作よりボリューム減らしてエッチ成分マシマシですからね。【全年齢版】なんか出した日には、中身スッカスカ状態になるんじゃないでしょうか。そもそも乳輪ドバドバの悪魔服じゃ不適切だし、修正箇所がメッチャありそう。やっぱり「コハルViewer」と「コハルの部屋」が必要なんじゃ……!?(笑)。


〇備忘録

★意表をつく音声再生
ト書き:楠木さんの『巽さんから~』という言葉のあと、
    間延びした声が電話口から響く。
 ⇒この地の文で『巽さんから~』だけを音声再生。しかもリピート処理対象。ちょっとビックリ。単なる地の文だと思っていたのに、突然、音声再生するんだもん。シナリオ上のメモ書きで指示したんですかね。

★不具合
♦文章表示と声優さんの読みが同期しない
 千代さんの残留思念演出(文章表示とそれを読む声優さんの声の自動演出)場面で、メッセージの表示をオートモードに設定していると、文章の1行目は声優さんの声と一緒に表示されるが、2行目以降の文章は、声優さんが2行目以降の文章を全部読み終わるまで、表示されない。オートモードに設定していないと、普通に文章の表示と声優さんの読みが同期する自動再生が行われる。

♦裏世界からの帰還後メッセージが、裏世界に行く前の既読内容と同じ
(一通りの場所を調査して帰還)
ト書き:そこそこ長く裏にいたから、
    戻ったら深夜だろうと予想していたものの、まだ空は明るかった。
 :
悠久「一旦よそず屋に行ってみよう。
   はやければ夜、って言ってたけど、
   もしかしたら直してもらえるかも」
 ;
ト書き:営業中の看板が出てないな。
 :
ト書き:インターホンの下に、張り紙があった。
ト書き:『仕入れ中。夕方には戻ります。』
ト書き:不在か……。
ト書き:俺たちはなにも買わないから、日用品とかの仕入れは必要ない。
    ってことは……まず間違いなく、義手の部品だな。
 ⇒あれ、これら一連のメッセージ内容、裏世界に行く前にもあったような。完全にだぶってます。進行制御にミスがあるのかも。その後の展開は、次のとおり。
-----------------------------------------
ト書き:スマホを取りだし、時間を確認する。
ト書き:もうすぐ、日が暮れる。
    そろそろ帰ってくるかもな。
悠久「美代さんとコハルさんに聞きたいことあるし、そっちに行こう。
   終ったころには、帰ってきてるかも」
悠久「駄目だったら、夜に出直すか、明日の朝で」
 ⇒最初の時は裏世界への探索イベントが進行したが、今回は美代さんとコハルさんに会いに行くイベントが進行。

♦声優さんの読み間違い
-----------------------------------------
キルト「霊子回路が正常に動いていませんね。
    霊力の流れが滞っております」
-----------------------------------------
アンネリーゼ「こっちも霊子をかき乱してやれば、
       見つけられそうな気はするんだよね」
アンネリーゼ「たぶん……うん、残留思念の反応だと思う。
       これまでに見つけたのと、霊子の雰囲気が似ている」
-----------------------------------------
 ⇒「霊子」を、キルトの声優さんは「りょうし」と読んだが、アンネリーゼの声優さんは「れいし」と読んだ。次のとおり「りょうし」が正しいっぽい。
 ・「Fate/EXTRA」の記事における「霊子(りょうし)」の解説
  無機物・有機物問わずあらゆる存在が持つ“存在の雛形”という形而上の概念を、
  データとしてカタチにしたエネルギー情報体。端的に言えば霊魂。
 ・アーケードゲーム『サイヴァリア』の「*2 霊子りょうし(psyon)」の解説
  有機生命体から放出される特異素粒子。
  宇宙を飛び交うニュートリノ(neutrino *3)と反応し、様々なエネルギーを生み出す力を秘めている。
  西暦2137年、ウォルのカモノハシ実験によってその存在が明らかになった。
  この発見により霊子力学は立証され、人類は飛躍的科学進化を遂げることとなる。

アンネリーゼ「ふふふ~、でも最初のすっごく濃いだろうし~。
       すぐ出しちゃうのはもったいない気がするな~」
 ⇒声優さんは「最初のはすっごく」と読んだ。

アンネリーゼ「聞こえる? 鈴の音」
 ⇒声優さんは「すずのおと」と読んだが、私は「すずのね」だと思った。
アンネリーゼ「な~んか……儀式的な感じするよね。
       鈴の音もそうだし、花嫁っぽい恰好とか、
       人魂たくさん連れてるのとかも」
 ⇒選択肢で「血濡れの花嫁」を斬るのを止める選択をした直後のアンネリーゼの会話文では、声優さんは「すずのね」と読んでいた。なんだ、この読みの一貫性のなさは。

♦誤字・脱字・衍字
アンネリーゼ「だらだら喋ってるけど……なに起こんないね」
 ⇒「なにも」。声優さんは正しく読んでいた。

アンネリーゼ「要は、マーキングしてるわけだよね。
       追跡がぬるいの、ダーリンにマーキングしにくかったり、
       勝手に外しちゃったりするからか」
悠久「っぽいね。今も見失ってたみたいだし。
   たあえて受け入れたりしなきゃ、見つかることはなさそう」
 ⇒「たあえて」は「あえて」だと思う。「耐えて」は違うよね。「ただしあえて」じゃ長いか。

ト書き:目を閉じ、頭に響く深いな声に、意識を集中させる。
 ⇒「深いな声」は「不快な声」が正しい。

アンネリーゼ「そんなもんじゃないよ。
       この道の先の、ほら、あの公園。
       あそこに……出たんだって」
アンネリーゼ「全裸の……変態の霊が」
悠久「……」
悠久「なんて?」
 ⇒「なんで?」だと思う。

コハル「なるほど、通りで」
 ⇒「道理で」が正しい。「どうり」を「どおり」と入力したことによる変換ミスで発生。なろう小説とかでも同じ間違いは山ほどある。私は「通りで」が正しいと思う人達が量産されてしまうことを危惧。何しろこの変換結果の表示で違和感を持たないのだから。そもそも読み仮名からして間違っているのだから、「道理」に辿り着くわけないし。

ト書き:まず間違いなく、ぼったくられる。
ト書き:……あの人は、そういうタイプだ。
 ⇒こそあど言葉は“こ(近称)”、“そ(中称)”、“あ(遠称)”、“ど(不定称)”を意味するから、連体詞の場合はそれぞれ「この・その・あの・どの」です。従って、目の前のキルトに対する地の文としては、「あの人」ではなく「この人」になるだろう。

P.S.
 前作はVer1.04まで修正パッチが出たのだから、今作でも何らかの修正パッチは出るでしょ――たぶん。

(追記:2025/1/3)
★当サイトでの関心度
 当サイトの強みって、利用者がせっせと登録したデータベース情報をSQLを駆使して分析できて、さらに利用者が分析用のSQLを色々と自作して他者に利用可能にしていることです。
 そんなSQLの一つに『新作レビュー参照回数』(新作の長文参照回数を発売一か月間のみ上位50件一覧表示する)というのがあって、本作の発売一か月間の統計結果は、次のとおりでした。

2024/12/28時点
順位:参照数:作品名(発売日)
1位:3367:催眠性指導 -Secret Lesson- (12/20)
2位:2724:催眠性指導 -Secret Lesson- (12/20)
3位:1281:幻聖剣姫セイクリッドアーク (11/29)
4位:1253:リップリップルズ(Lip lipples) (11/29)
5位:1064:幻聖剣姫セイクリッドアーク (11/29)
6位: 942:夢幻のティル・ナ・ノーグ (12/20)
----------------------------------------------------
7位: 793:きまぐれテンプテーション2 ゆうやみ廻奇譚 (11/29)
10位: 578:同上
12位: 487:同上
13位: 472:同上
23位: 298:同上
 :(この間、本作が10件ランクイン)
49位: 188:同上

 12/20発売作品に速攻で追い抜かれる11/29発売作品。11/29発売作品、どんだけ関心がなかったのかが如実に表れていますよね。しかも、一番多い参照数でも1281です。

 今から3年前に同じように確認した時、1位の参照数が1803しかなくてこの業界は終わったなとか思ったのですが(一昔前なら5000前後あった)、今回、感想の書き込みが一番多かった本作なんか、最上位の参照数がたったの793ですよ。年を追うごとに当サイトでの参照数が激減しているのが実態なのです。

 唯一の救いが、12/20発売作品の参照数が多いことですが、この2件の作品の参照数が最近では特殊であって(当サイトの仕組みと利用者の特殊事情が垣間見える面白い事象だとはいえるのだけれど……)、現実は6位が物語っていますからね。本当に、この業界の衰退状況は激しすぎます。

 少し前に美少女ゲームの制作現場を描いたテレビアニメ『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』が放送されていたのだけれど、実在の作品名と絵を交えて現実そのままの歴史と惨状が描かれていて(しかもDMMとか版権関係でめっちゃ協力してるし)、この業界への鎮魂歌かと思ってしまったのでした。

 エロゲーの商業作品の新作を売るのが本当に辛い状況になっている悲しい現状を、私は本当に憂いてしまうのです。


(追記:2025/4/30)
★“バグ修正パッチ”と“Hシーンアニメパック”
 前作に引き続き、今作でも期待どおりに「Hシーンアニメパック」が4/28に公開されました。

 実際に適用してみたところ、SCENEモードに登録された6つのシーンとも、実際のセックスシーン部分のみは、全部アニメ化されていました。ただ、インパクトがあったかというと、殆どありません。ちょっと動いているよねくらいの印象です。まぁ、購入者へのプレゼントって位置付けですからね。その程度の出来ってことです。

 また、一緒に「バグ修正パッチ」も提供されたため、ゲームのバージョンがVer1.01に上がりました。因みに、この2つはダウンロード版の呼称であり、公式Webサイトでは「修正パッチ」、「Hシーン(アニメ)追加パッチ」と呼称されております。

 公式Webサイトではパッケージ版専用のみが公開され、「パッケージ版のパッチをダウンロード版に適用すると、ゲームが動作しなくなります」との注意書きがされておりました。そのため、ダウンロード版の方は DMM.GAMES.R18 からダウンロードとなっています。

 公式Webサイトでは、インフォメーションの「修正パッチを公開」の記述の方に、「※
Hシーン追加パッチをインストールした方は不要です」と書かれていたのにダウンロード版では、単に修正パッチ内容が2点あげられて「インターネット一時ファイルの削除後にダウンロードして適用」と案内されているだけで、パッチに添付のお知らせ文書を読んでも、適用順番があるのかとか何も分かりません。

 一番問題なのが、2つの適用内容で、ファイル名がだぶっていることです。そのため、2つのファイル内容を見比べてみると、次のとおり。

バグ修正パッチ
 ①kimaten2.exe:‎2025‎年‎4‎月‎21‎日 13:12:26、3.02 MB (3,167,232 バイト)
 ②update.arc :‎2025‎年‎4‎月‎23‎日 16:09:16、121 KB (123,952 バイト)

Hシーンアニメパック
 ①kimaten2.exe:‎2025‎年‎4‎月‎21‎日 ‏‎13:12:26、3.02 MB (3,167,232 バイト)
 ②update.arc :‎2025‎年‎4‎月0‎7‎日 ‏‎17:38:04、1.52 GB (1,640,072,437 バイト)
 ③script.arc :‎2025‎年‎4‎月‎15‎日 ‏‎17:30:56、1.18 MB (1,240,062 バイト)

 ①はファイルの作成日時、サイズとも全く同じなため、恐らく同一と思われる。
 ②は作成日時が「Hシーンアニメパック」の方が2週間も古く、さらにファイルサイズがぜんぜん違うので、別物と思われる。

 ②がHシーンアニメパックの方が新しければ、パッケージ版の適用と同じと考えられたのですが、実際は逆に「バグ修正パッチ」の方が新しいため、アニメ化するとバグ修正がされないとも考えられるわけです。一応、問い合わせしておきましたので、何らかの回答があるでしょう。

(追記:2025/5/3)
DMMサポートセンターの対応は迅速ですね。4/30 15:44 に問い合わせしたら、翌日の 09:42 に受け付けの第一報、13:11 に以下の第二報で解決しました。
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担当部署へ確認をいたしましたところ、
「Hシーンアニメパック」には修正パッチが含まれていることを確認いたしました。

アニメ化を希望しない場合は「修正パッチ」のみを適用していただき、
アニメ化を希望の場合は「Hシーンアニメパック」のみを適用してください。
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 公式Webサイトの注意書きで想定されたとおりでしたね。でも2日たっても、実際のダウンロード場所には注意書きとして反映しないのはいただけないかな。


以上

The above is a long impression of shiratori.