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shiratoriさんの我が姫君に栄冠をの長文感想

ユーザー
shiratori
ゲーム
我が姫君に栄冠を
ブランド
みなとそふと
得点
77
参照数
1193

一言コメント

劣化版『真・恋姫†無双』だと思えば間違いない。

長文感想

○はじめに
プレイし終えて最初に思ったことは、本作品って構成と内容を考えると『真・恋姫†無双 ~乙女繚乱☆三国志演義~』の劣化版だよねってことでした。本作は、帝国編、連邦編、ランケイジ編から成り立っているのですが、『真・恋姫†無双』の魏、呉、蜀に置き換えると、
 魏:グランスター帝国
 呉:ランケイジ
 蜀:タリオ連邦
に相当すると、国と登場人物の設定をそれぞれ比較検討した結果、私は思いました。ただ、実世界の歴史を踏まえた上で面白さも確立している『三国志』をベースとした『真・恋姫†無双』に対し、全てを一から構築せざるを得なかった本作では、やはり勝負にもならなかったと言えるでしょうね。

でもだからといって、本作がつまらないかというと、そうではありません。腐っても鯛(たかひろ)、問題点は多々あるにしろ、それなりの面白さはあったのでした。


○本作の問題点
たかひろ氏って、一からベースの世界を構築するのは得意な方ではないらしいと、本作をプレイして改めて思いました。既存の現実世界をベースにストーリーを紡ぐのは『まじこい』を見ても上手いとは思うのですが、存在しない世界を構築しながらストーリーを紡ぐのは、たかひろ氏の筆力をもってしても、荷が重かったということなのでしょう。

本作は帝国編、連邦編、ランケイジ編の順に進行していくのですが、ランケイジ編になってやっと、本来のたかひろ氏のペースになったと思います。具体的には、ランケイジ編の途中までは、それぞれの国の世界を構築しながら話を進めるので、ストーリーのテンポとリズムがどうしても悪く(特に戦闘シーンなんかぐだぐだ)、私など1.25倍速くらいで巻けば納得できるテンポになるのにって思いながら、プレイしておりました。そのため、世界構築が完了したランケイジ編の最後の戦闘シーンになって、やっと本来のあるべきテンポとリズムでストーリーが進行することになったと思ったのでした。

以上から本作の問題点は、大きく三つの要因にまとめられると思います。

 一点目:帝国、連邦、ランケイジの城と城下のイラストはわくわくする出来なのに、それぞれの世界の描写が、文章ではお世辞にも表現できていない。

 二点目:世界構築にも労力を割くため、ストーリーがお座なりぎみになってしまった結果、全体的にどっちつかずの中途半端な出来具合となった。

 三点目:上記二点の問題によって、ランケイジ編の途中までは、本来のあるべきテンポとリズムでストーリーを進行させることができなかった。

この結果、他の方々の一言感想で言うところの「(内容が)薄い」作品になってしまったのです。唯一の救いは、このような状態に陥ってはいるのですが、面白さだけはなんとか維持できていたってところでしょうか(まあ、『まじこい』レベルの出来を期待していた方々からすると、期待外れであることは間違いないのですが……)。


○気になった点
★「交代交代」の読み
ペッター「火や水の天眷使いは都市運営重宝されるんだ。
     交代交代で、庁舎で働いている」
 ⇒声優さんは「交代交代」を「こうたいごうたい」と読んだのだけれど、私は「こうたいこうたい」だと思っていたので、この読み方は初めて知りました。

★セックスシーンが手抜き
総じて、セックスシーンの絵は文章内容に追随しないので、がっかりです。
例1)
パンテーラ「元皇后の唇をうばって……あまつさえ
      ペニスをしゃぶらせるなんて……貴方」
パンテーラ「素敵じゃない。ぺろっ、れろっ・・・ちろっ、残ってるの、
      吸い出してあげるわ、はむっ…じゅっ…れりゅ、じゅる、
      れろぉ、じゅっ……ずずっ、んく、こくん、ごっくん」
 :
ト書き:白い女尻に、精液がふりかけられていく。
 ⇒背面騎乗位からのキス、フェラ、尻への精液ぶっかけと続くシーンなのだけれど、絵はずっと背面騎乗位のまま。萎える。
例2)
ト書き:ノアは下着ひとつで、ベッドに横たわっていた。
 ⇒絵は、最初から全裸だし。股、大きく開いているし。手抜きすぎる。

★「疾く」の読み方
カラパーザ「さぁ疾く答えよ。愛とは!?」
 ⇒「疾く」って「とく」と読むのだけれど、「はやく」とも読みます。声優さんは「とく」と読みましたが、私は「はやく」だと思いました。なぜなら、普通「とく」なんて古風な言い回しで言われても?ですよね(少なくとも私は意味不明)。ルビをつけて欲しいって心底思いました。

★香具師(やし)
ゾアス「誰だ今、ワガハイを馬鹿にした香具師は!
    ってクロネ様でしたーー!!」
 ⇒「香具師」は、「奴」とか「あいつ」といった意味で使われるネット用語らしいのですが、
  ネット用語は分からん。「香具師」って「やし」って読むのか。
   (「奴 → ヤツ → ヤシ → やし → 香具師」と変化)


○不具合
いつも私は、誤字・脱字・衍字と声優さんの読み間違いは、最低限チェックするようにはしています。今回もチェックしながらプレイしていましたが、気が付いただけでも、それなりにありました(アップデートパッチ ver 1.01を適用済み)。

・件数
 誤字脱字:6件
 声優さんの読み間違い:17件
テキスト量から考えると、意外と誤字脱字は少なかったですね。声優さんの読み間違いは、少し多かったかなっていうのが、本作の品質レベルですかね。それぞれ、注目すべき間違いをピックアップすると、次のとおりです。

・誤字脱字
例1)「シムルー」が最初に出現した時の大きな字での帯表示が、「シルムー」になっていた。
 ⇒私が思うに、選択肢も含めて特に注目度が高い箇所に対する文字のチェックって、もっとも注意しなければならない部分だと思っています。こういう重要箇所でポカをすると、作品全体の品質に対する疑問が、大きく膨らんでしまいます(最低限のチェックすらできないのかって思われてしまう)。折角、テキストの誤字脱字関係は押さえ込んでいるのに、文章外のエフェクト部分の文字で表記間違いをしてしまって、本当にださださです。
例2)
ノア「お前の主張は分かった。
   護衛は、腕ききを回そう。
   そして戦争時には、ロディアを戻す」
 ⇒ロディアの状態が不確かで今一自信はないが、恐らく「戦争後」が正しいと思う。
例3)
パンテーラ「固さ、長さ、熱さ、形……どれも、いいわ……」
ト書き:あとは持続力ね……若いからあまり期待は
    していないけど、どうかしら……頑張ってみなさい」
ト書き:すると女性は、動きを少しずつ上下に早めていった。
 ⇒誤字ではないし意味も通るのだけれど、パンテーラに対して「女性」は変だろ。赤の他人ならともかく、見知った人物に対する地の文なのだから。「彼女」か「パンテーラ」にするべきだったと思う。

・声優さんの読み間違い
例1)
エビータ「卑怯な奴らだなー。正しく山賊をしておるわい」
 ⇒何故か「正しく」を「ただしく」と無条件に読む声優さんが多いのだけれど、ここでは副詞として「間違いなく。確かに」の意味の「まさしく」と読むのが正しいと思う。
例2)
ペッター「それもいいな。旋風の砂漠も、道から大きく外れなければ怖いものではない」
 ⇒「旋風」を「つちかぜ」と読んだ。正しくは「つむじかぜ」
例3)
剣の神「様々な剣術を取り入れ、我流として昇華させている。
    人の身でよくぞそこまで。素直に賞賛する」
 ⇒「そこまで」を「ここまで」と読んだ。指示語(こそあど言葉)の使い方は大事だよね。大概、みんないい加減に使ってるけどね。
例4)
ガルデニャ「ただ攻撃するだけじゃ鬼はしぶといからな。
      ヨークシャは心臓部分を叩いて気絶させ、
      レイズは多めの電撃を流して痺れさせた…」
 ⇒「電撃」を「電流」と読んだ。
例5)
カンニバル「この世に戦いの神は実在した!
      武の求道者どもよ、貴様等ならどうする!
      稽古を願うか? 武運を授けてもらうか?」
 ⇒「求道者」を「ぐどうしゃ」と読んだ。「ぐどうしゃ」という読みは存在するが、ここでは一般的な読みの「きゅうどうしゃ」だと思う。なぜなら、それぞれの読みでの意味は、次のとおりだから。
  きゅうどうしゃ:真理や悟りを求めて修行する人
   (真理や悟り以外にも、何かの道を極めるため修行を積む人のことも指す。
    主に茶道や武道などに使われる事が多い)
  ぐどうしゃ:仏道を求める人
   (仏教の教えや真理を求める人のこと。仏教用語)
例6)
クロネ「こら目線をそらすな、姉を見ないとお仕置きしちゃうぞ」
 ⇒「目線」を「視線」と読んだ。
例7)
シュカ(しかし流石だノア・グランスター。
    その戦い様は皆を鼓舞する)
 ⇒これは見解の相違かもしれないのですが、声優さんは「戦い様」を「戦いよう」と読んだのだけれど、私は「戦いざま」だと思った。


○おわりに
私は最近、パッケージの処分が面倒なため、ダウンロード版しか買わないように方針転換中なのですが、本作はダウンロード販売していなかったので、泣く泣くパッケージ版を発売日の二週間前にAmazonで予約しました。そうしたら、意外と大きな梱包で届いたので、いざ開梱してみたら、早期予約でもないのに、早期予約特典のA3クリアポスターの第1弾から第3弾までの三つともが、ワンセットで送られて来てしまったのでした。Amazon、早期予約特典をどんだけ確保していたんだよって感じですが、正直、送られて来ない方が良かった。私にとってはただのゴミ。またまた、処分が面倒なことに(Amazonで見たらA3クリアポスターセットが四千円強で売りに出されていて笑ったけど。今見ると無いので売れたみたいですね。私が処分に頭を悩ませているというのに……)。

さて、改めて本作を考えてみると、想像世界の構築って、難しいよねってことでした。現実世界を踏襲する場合は、ライターはストーリーに全力投球すれば良いのですが、異世界とかの場合は、その世界も一緒に構築していかないといけませんから、倍の労力が必要になるわけです。しかも、ユーザーに前提知識がありませんから、その世界観も含めて説明しながら、物語を進めなければなりません。

本作の場合、結局、ストーリー内で詳細に説明し続けられないと判断し、その対策として「用語辞典」を用意しているのですが、私は一回も利用していません。いちいち用語辞典を利用しながらゲームなんかできるかよって感じだったからです。その結果、私の場合は、余計に「本作の問題点」で挙げた事柄を、如実に実感する羽目になってしまったのでした。

そのため、ゲームの場合、小説とは違って文章以外に絵と音もあるのでユーザーにイメージを喚起させやすいとは思うのですが、それでも相乗効果を最大限に発揮させるハーモニーの共鳴具合が、最終的な作品の評価を決めることになると、理解したのでした。そう言う意味では、SFを含めて現実世界ではない異世界モノって、やっぱりハードルが高い(特に現実の世界観でイメージできる割合が少なければ少ないほど)なって、改めて思ったのでした。

それにしても、久しぶりにゲームを全部やり終えてから感想を書きました。まあ、たかひろ氏の文章スタイルは、文章自体を吟味しながら読み進めるタイプではなく、文章で紡いだストーリー自体を楽しむタイプだから、本作においては細かいことを気にせずに楽しんだ人が、勝ちだと思います。


追申
本作の場合、私はメインよりサブキャラの方が人間味があって好きなのですが、特に“エスクド”と“ホアナ”には興味がそそられました。“エスクド”のエロゲーのための設定には、ちょっと笑っちゃうのだけれど、サブキャラだから本作では殆ど生かされなかったのが、本当に残念でなりません(笑)。


以上

The above is a long impression of shiratori.