長文です
美しい背景とおーじ氏の絵、高水準SEとBGMは文句なしにツボ。
雰囲気が素晴らしい。
潮の薫りや夏のアスファルトの熱気が漂ってきそう。
もしも百合ヶ浜が現実に存在するなら、この街に住んでみたいと思ったくらい。
ただダメな点もかなり目につき、それが大幅に足を引っ張って作品を台無しにしている。
特に鈴菜ルートのシナリオは高確率で話が脱線しまくり、無駄なシーンが多すぎる。
体感プレイ時間が凄く長く感じました。オートだとかなりの時間を要するかと。
「で、結局何が言いたいの?」「この会話必要?」と疑問に思う事が頻繁にあった。
鈴菜は前作の主人公で同性の彩音に恋愛感情を抱いていますが、今作になって急に響が主人公となり、鈴菜の恋愛対象も響へとシフトします。
個人的に響の被害妄想思考や、しつこい僻み根性が受け付けず、鈴菜が惚れるほど魅力的には思えない。
実姉(普通にちゃんと働いてる社会人)の事をさも人間の屑かのように、「負け組」「哀れ」と悪口ばかり言っていたけど、人の事言えないだろうと。
ヒロインがあっちへフラフラこっちへフラフラする様を見るのは、あんまり気分の良いものではないですね。
彩音は「もし響が相手してくれてなかったら鈴菜に転んでた」と言うし、実際鈴菜ルートで鈴菜響がくっつくと、自分に好意を持つ別の後輩女子を好きになってる。
鈴菜は響を誘って強引に関係を結ぶも、彩音と自分が両思いかもしれないと察知すると、響と距離を置き出す。
エピローグの「間違いじゃなかった」発言は、“彩音が鈴菜に恋してた事が自分の勘違いじゃなかった”という意味との説が。
あれほど応援していた彩音の大会の行方にも関心が薄れ、大会の結果がテレビで分かると、用が済んだとばかりに、その場で鈴菜自ら響を誘って初体験を済ませた時は複雑な心境でした。
彩音の大会の様子を自宅で見届けるのも、響と二人で過ごす口実に利用してるようにしか思えなかった。
「overture」、「六月期」と彩音への熱烈な恋心を見てきただけに、なんだかなあと。
まあ、初Hの割とすぐ後からEND直前まで、鈴菜が響を避け始めるんですが。
響とすれ違い出すと、「響先輩との事がダメだったら、私を貰ってください」と彩音に再燃アプローチしちゃうし。(鈴菜にとっては本心が入っていたらしい)
鈴菜は前作で彩音を追いかけ、響に対抗意識燃やして強気だった時が一番魅力的だった。
あと二度目のHシーンでも、鈴菜がなずなのオナニーの様子を暴露しながら行為に及ぶのは引いた。
本当になずなが損な役回りで、気の毒すぎる。
気の毒と言えば、キスの練習台に使われた詩子もか。
響に関しては、「水泳では彩音に花を持たせてやった」「鈴菜の件では彩音に勝てた」と何様なんだと。
(元々実力は雲泥の差だし、彩音は部の花形選手で全国大会優勝者&W新記録保持者、響は最近水泳始めたばかりの県大会予選敗退者)
そんな響の発言に喜んでる鈴菜も残念でした。
彩音に対しても、告白されてもないのに、「彩音は好きな奴いそうにないけど、もしかして俺の事好きなのか? だったら諦めてくれ、俺には鈴菜がいるから」と、言動が痛すぎる。
鈴菜ルートはボリュームがありますが、印象的な心の交流もなく、まだ好きという確信もないまま、いきなりノリでHして、その後なし崩し的に彼氏彼女ごっこをしてる、恋愛未満の関係という印象。
好き好き~恋人同士~と言ってても、空々しく感じました。
些細な事でうじうじ悩み続けたり、ちょっとした事でぎくしゃくして距離が開いたりというのは、リアリティがあるし、学生時代のほろ苦い思い出がある人は共感できるとは思いますが。
鈴菜ENDのエピローグは正直、「えっ何コレ? どういう事?」という感想しかなかった。
最後の最後まで、結局なんだかんだで鈴菜は彩音の方に比重が傾いてる。
鈴菜主人公のままで、最初から百合ゲーで出せばよかったのにと、つくづく思います。
初期段階から土台が出来上がっていた幼馴染の彩音ルートは、結ばれるのもまだ自然で王道でした。
ただ、このルートでも彩音は、水泳が好きで一生懸命打ち込んでいるわけではなく、惰性でやってるのはがっかり。
KYな言動も多め。
鈴菜の渾身の告白(ノートに書いた彩音への恋文)をスルーして、「ページが余って勿体ないから、このノート使ってみんなで交換日記しよう」と周囲を巻き込み、ノートの内容を響を含めて複数人に晒し回った時は、彩音の神経を疑った。
恋文の内容がポエミーだったとはいえ、彩音の対応は、鈍いとか天然キャラでは済まされないレベル。
そもそも、響が「受験勉強で暇がない(大して勉強してないみたいですが)」と何度も断っているのに、「毎日練習見に来い」と何時間も拘束し、休日は「遊びに連れていけ」と自己中。
将来を真剣に考えず、自分と同じ大学を選ぼうとする彩音をやんわり窘めると、店内でテーブルをバンバン叩いて大声で怒鳴ってぶち切れ。
いくら幼馴染でも、気のない相手にこんな事されたら恐怖でしかない。
主要人物の感覚がかなりズレてて、なかなか感情移入は難しかったです。
だけど彩音との初Hシーンは好きです。
電気を消して、お互い背中合わせで自分で脱いで、せーのでこっち向き合う時の初々しさとか。
最初は鈴菜がメインかと思っていましたが、彩音のHシーンで歌が唯一流れたりするあたり、おそらく彩音が正史ルートなんでしょうね。
ラストもコンチェルトで皆勢ぞろいの大団円だし。
攻略対象が彩音と鈴菜の二名だけなのが惜しい。
無駄なテキストを削いで、攻略対象を増やしてくれたら尚良かった。
開発予定だった続編で、静流さんやなずなや沙織が攻略できたのでしょうが、今となっては続編は無理でしょうね。
パロディがかなりの高頻度で出て来る割にどれも古くて(赤線とかフーテンの寅さんとか)、元ネタがあまり分からなかった。
「パープリン」なんて言葉、この作品やるまで知らなかったしとっくに死語らしい。
ライターの方は結構なお歳なのかな。
調べて分かったのは、漫画「あたしンち」、昼ドラ「真珠婦人」、歌番組の「ベストテン」、氷室、布袋、鏡の中のマリオネット(B〇WY)、バンドのアリス、クレイジーケ〇バンド。
その事も相まってか、作中の時代背景が謎だった。
携帯電話自体誰も持っていないのか、学校外での会話は自宅の固定電話(それも子機なし、ダイヤル式の黒電話)で。
お金持ちJKが人を呼び出す時に使うのがポケベル。何かを観る時はLDやビデオ、音楽を聴く時はアンテナのついたラジカセ。
2005年頃といえば、とっくの昔にネットも携帯もメールも普及してて、DVDやipodが主流だったような。
小道具やパロディが昭和な割には、街並や喫茶店のメニューが洗練されてて、ちぐはぐな印象を受けた。
「ヨン様」ネタや漫画「エマ」「テニプリ」ネタ、「パティシエなにゃんこ」ネタ、「AIR」のゴールやお米券ネタもあったから、やはり2000年代以降の設定だろうけど。
(「もうゴールしてもいいよね」をあんな下ネタ下衆シーンで使うなんて、、、)
修正ファイルをあてても、ボイス抜けやバグは改善されていません。
必要性を感じない会話や、無駄なパロディが多い割に(特に心中夫人、引っ張り過ぎ)CG枚数は少ない、キャラの言動が不快等、残念要素が多いです。
残念な点をつらつら書きましたが、百合ヶ浜という、海の街の生み出す独特な亜熱帯の空気感と世界観にハマれたので、この点数。