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seryineusさんのはじめるセカイの理想論 -goodbye world index-の長文感想

ユーザー
seryineus
ゲーム
はじめるセカイの理想論 -goodbye world index-
ブランド
Whirlpool
得点
73
参照数
296

一言コメント

個別のシナリオはよかったものの総括がありきたり

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

メインヒロイン4本にサブヒロイン2本で、シナリオの内容がよかったと思えたものは4本。
主人公編ともいえる最後のシナリオはアプローチこそ斜め上に行ったか?とおもえたが帰結がありきたりで瞠目するようなものではなかった。

本メーカーのフルプラ作品としてピーシーズやアンミナがあるけれど、その壁は超えられなかったというのが正直な感想。
過去作で見えた「トゥルーに力量が割かれるあまりその他がヒロインが薄くなる」という悪バランスは改善しているように思える。シナリオよりもヒロインに焦点を当てるユーザーはうれしいだろう。
一方で最大瞬間風速というか、グランドフィナーレの火力というかが今一つかと。

各シナリオ

ヘル子

一応センターヒロイン?共通ルートや別ヒロインのシナリオでおふざけキャラにあるまじき観察眼を見せることがあったので、てっきりシナリオの根底に深く切り込んでいく結愛ちゃんポジション?と思っていたがそーでもなかった。
中二病イロモノキャラが一枚皮をむけばストレートにかわいいキャラで面食らった。各々違う世界から招かれているヒロインたちの中、おそらく主人公と同じく現代日本出身であろうことが匂わされていて、召喚の経緯でも関係しているなどやはり特別感のあるヒロイン。物語終盤の彼女の決断には個人的に異論があるけど・・・一番好きなシナリオ。

ヒナギク

過去に主君を守れなかった後悔から平和を望みながらも自罰的に戦場を求め、平和に居場所のない剣士。
なんというか、テンプレだな!何番煎じかわかんねーよ。

ティア

セクハラ聖職者。お色気シスター。秋野花の有効活用。いや秋野さん何でもできるけど。
生前の経緯から「愛」というものをある種万能薬であるかのような幻想を抱いており、
愛の正体をつかめれば理想の世界の足掛かりになるのではないか、というアプローチをしている人なのだが・・・
愛=性愛で序盤から迫りまくってくるのが「ズレている」キャラ。多分この受け取り方はライターの設計通り。
最後まで世界や仲間とズレ続けた彼女の結末は後味の悪いものだったが・・・ただあれ以上の〆方はちょっと思いつかない。
死が終わりではない世界だったから次につながり一応のハッピーエンドになったが場合によると悲劇で終わっていた。

ハルカ

他のシナリオから浮いているというか、遥というキャラクターが特殊だからある意味他シナリオを補完する立場にあるシナリオを担当しているようなイメージがあった。
「理想の世界」を真面目にサイエンス・フィクションするシナリオなので読みごたえはあります。そのアプローチが妙にほのぼのしているのはご愛敬・・・いやまさに愛嬌のためにああなったのかw
世界観の屋台骨を補強する、縁の下の力持ちになる良シナリオでした。


ヨル・ノゾミ

サブヒロインの方々。
目を引いたのはヨルの考察。
世界を理想的に作り変えるためには指導的な立場に立つ必要があり、その過程には必ず打ち倒す敵と、打ち倒す力が必要である。
招かれた5人の中で唯一「まったく制圧力になりえない」能力を選択した主人公は特殊な立場で、他者にはできない理想柄のアプローチをし得る、と指摘している。
・・・のだが、この後ギャグ展開みたいにされて、フィナーレでもこの設定を拾ってくれなかった。
なんだろう、没シナリオの供養かなんかだったんだろうか・・


主人公エクストラシナリオ

全ルート解放後にシーンジャンプから入れる総括シナリオ。
だれの理想とも対立できない、誰であろうとも共感できるがゆえに自らの理想を押し通せない主人公が
理想の「コンペション」から自ら退場することを選ぶが、ほかの四人が逆に
彼にこそ自らの理想を託し、全員の納得できる理想の世界を探らせるに相応しいと後を託されるシナリオ。
まぁ、願いを託して消えていく仲間なんてものは呪いにしかならんわけで。
たった一人理想にアプローチする主人公が無残に失敗し、最初の世界で「なぜ世界をあれほど憎んで飛ばされてきた自分がこの世界は愛せたのか」という点に戻ってくる・・・まぁメーテルリンクの青い鳥ですよね。
ただまぁ、陳腐というか。この帰結になるならいっそヘル子アフターかヨルの考察からつなげたトゥルーを見たかったよ。

ぼやき

ピーシーズの天使とか今回の神ちゃんとか、このメーカーの上位存在にはロクなヤツがいない・・・