面白いか否かで言えば、正直微妙。しかし、稀に見る美しい物語。
「ゲームに対する面白み」を何処に置くかは人それぞれですが、シナリオ主導型ADVの場合、
シナリオの面白さ=ゲームの面白さ、と考えて間違いではないでしょう。
本作の場合、ヒロイン四人のシナリオはあまり良い出来とは言えません。
駄作というほど酷いわけではありませんが、同じ健速氏が担当したかにしの本校編や
キラークイーン・シークレットゲームに比べれば明らかに劣ります。
しかし本作には、ヒロイン四人の個別シナリオに加え、どのヒロインとも
深い仲にならなかった場合に展開される、通称「ノーマルシナリオ」があります。
このノーマルシナリオが非常に良い。
ヒロインたちとの友情、主人公の両親を始めとする周りの大人たちとの交流、そして
主人公・葦野昴のカッコよさが余すところ無く描かれた見事なシナリオ。
更に全シナリオ終了後に解禁されるトゥルーシナリオも、ノーマルシナリオを踏まえた
展開となっています。
この「ノーマル→トゥルー」の繋がりは素晴らしく、感動必至の美しい物語となっており、
ぶっちゃけこれを見るためだけにでも本作をプレイする価値があります。
このように、本作は「可愛い女の子をストーリーの中心に据える物語」としては失格ですが、
「普通にストーリーを楽しむ物語」としては、ノーマルルート限定とはいえ極上の仕上がりです。
一度はやっておいて欲しいゲーム。
余談ですが、本作はBGMが素晴らしい。
初回版に付属していたサントラCDを今でも時折聞いています。