ErogameScape -エロゲー批評空間-

serisuさんのランスIX -ヘルマン革命-の長文感想

ユーザー
serisu
ゲーム
ランスIX -ヘルマン革命-
ブランド
ALICESOFT
得点
70
参照数
1743

一言コメント

本作単体で見れば決して駄作ではないが、過去のランスシリーズを踏まえた上で見ると劣化していると言わざるを得ない

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

タクティカルシミュレーションっぽくなったランスシリーズ最新作ですが、自分がプレイした雑感は一言感想に書いたとおり。
問題点も別の方が言われていることばかりですが、やはりシナリオ・システムともに修正すべき点があると思います。

まずシナリオですが、ご都合主義が過ぎる。
ヘルマン側はわざと負けようとしてるんじゃないかと思うほどに稚拙な作戦行動ばかりを取る。
敵側がみんな仲悪いのはともかく、ランス側の適当な作戦にいつも簡単に引っかかって少数での決戦に付き合ってくれるようになる。
というか、これはおそらくシナリオの都合なんでしょうね、「少数vs少数の状況にする」という結末ありきで
シナリオを考えたのでしょう。
だから大軍と戦っているという実感がなく、少数の敵を倒していたらいつの間にかヘルマンを落としていた、という感想になる。
また、今回は徹頭徹尾ヘルマンの内戦話であり、魔軍は全く出てきませんが、これもよくない。
ランスの元には今や大陸最強クラスの人間ばかりが集っており、それに太刀打ちできるのは魔人率いる魔軍しかいないのですが、
それが出てこず、敵は最後までヘルマン軍。
だから、ヘルマン軍が「敵は少数だが恐ろしく強い人間ばかりだ…!」と驚く展開が続くだけ。
ランスたちが才能限界の劣る人間相手に俺TUEEEEEEEEEEしてるだけですよ。
そして最後の民主主義万歳()、これが一番最悪。
レリューコフやフリークのようにパットンが皇帝となって国を正すことを信じて死んでいった人間、
クリームやロレックスのようにパットンを信じて革命軍に参加した人間、それら全てを馬鹿にする行為です。
それでいて初代大統領がシーラとか、もうデキレースでしょう。
この正史に全く共感できないというのがシナリオ面での最悪な点。
このせいで、シナリオ中にパットンが皇帝になるという話が出るたびに茶番に見えてきます。

次にゲームシステムですが、これもよろしくない。
マップが小さいのはサクサク進められるという長所もありますからまだいいとして、とにかく敵が多い。
倒しても倒してもワラワラ湧いてきて、それを全滅するまで続けなければならないので、ダレます。
延々とモグラ叩きをやらされている気分になります。
難しいのではなく、鬱陶しくて面倒臭いのです。
第三次スパロボα終盤の敵が宇宙怪獣だらけになっていた面ばかりが続くようなものです。
また、キャラクター強化についても、必要ポイントが高い割に上昇値が低すぎて達成感がない。
FEのように上限値が20で1ポイントの上昇に大きな意味があるバランスならともかく、
ドラクエの上限値255のバランスでレベルを10上げてやっと力が1上がるくらいの感じ。
これでは素早さを上げるだけでいいと言われるのも納得です。

と、シナリオ・システムともに問題のある本作ですが、いいところもあります。
ランスたちキャラクターの掛け合いは面白いし、それぞれのキャラに見せ場はあります。
ヒロインもいい感じで、デレたかなみや志津香は別人のように可愛いし、シーラも鬼畜王とは見違える名ヒロイン、ミラクルはいい中二病。
パットンが正統派主人公すぎてランスは全然活躍してませんが、革命軍を引っ張るという最低限の役割は果たしてます。
音楽もカッコイイ曲が多くてよかった。

徒然と書いてきましたが、結論としては一言感想のとおり。
プレイ中はそれなりに楽しめるものの、過去のランスシリーズを思うと劣化していると言わざるを得ない。
ランスシリーズのラスボスは毎回魔人ばかりでしたが、魔人がいないとこんなに味気ないんだなあと再認識させてくれました。
やっぱりランスは魔剣カオス片手に強大な魔軍と戦っている姿が一番カッコいいですね。
次作ランス10でいよいよシリーズ完結だそうで、魔軍との最終決戦、くじらをどうするのか等、楽しみに待ちましょう。