日野氏らしく、テキストや登場人物にアクがある。全体的にレベルは高いので、面白いことは面白いが、シナリオ的には残念ながら未完成品と言わざるを得ない。
ゲームの基本システムは、前半の共通ルート＋好感度による後半の個別ルート、というよくある構成。
共通ルートが長すぎず短すぎず、また個別ルートにも結構なボリュームがあるので、
じっくりと腰を据えて楽しむことが出来ます。
主人公は器用に立ち回り頭の回る軍師タイプ、空気も読めるし優柔不断でもない、
時折ヘタレかけてもすぐに立ち直って前向きに努力出来る人。
ヒロインは五人ですが、皆それぞれに魅力的で、ハズレヒロイン枠がありません。
全キャラのシナリオを見たいと素直に思えるヒロインです。
目立つ欠点もなく、ソツなくまとまった良作ではあるのですが、非常にクセが強いという
点だけは無視できません。
テキスト、主人公、ヒロイン他登場人物、ストーリーなど、全編にわたって
「日野氏らしさ」とでも言うべきアクがあります。
これこそが氏の個性だし、だからこそ面白いわけなのですが、これがダメだという人も
やはりいると思います。
自分自身、「るい智」を一度はあまりのクセの強さに投げ出しましたから。
その後半年くらい経って、評判が良いので頑張ってプレイしてみたらいつの間にか
ハマっていたわけですが。
本作を楽しめるかどうかは、日野氏の個性を受け入れられるか否かにかかってくると
思うので、まずは体験版を試して見ることをオススメします。
体験版を楽しめた、あるいは日野氏のファンであるなら、間違いなく楽しめる作品です。
シナリオについて追記。
作中で張られた重大な伏線が未解決のまま、ゲームが終わってしまいます。
悪役についても、直接対決することはほとんどなく、ただ逃げられて終わってしまうことが
多いので、悪役の所業で溜まったフラストレーションが解消されません。
可愛いサブキャラも多いので、FDを見越した出し惜しみかもしれませんが、F
Dとはあくまでおまけであり、本編で描くべき物語を分割して売り上げを稼ぐような、
狡い作り方をするものではないはずです。
ゲームとしての基本的な要素は良く出来ているだけに、このシナリオ面での
不完全さが惜しまれてなりません。