終盤の盛り上がりは車輪の国以上。しかし、叙述トリックに関しては少し納得いかないかなぁと。以下車輪の国含めたネタバレがあるので注意。
車輪の国との比較が多くなってしまいました。車輪の国ネタバレが多分に盛り込まれているので未プレイの方は注意してください。
端的に言うとすごく面白かったです。魔王とハルの手に汗握る頭脳戦が凄く好みでした。エロゲ史上最高クラスのBGMも相まって、読み進める手が止まりませんでした。何度も予想の上を行く魔王の策略には驚かされっぱなしでした。
私程度の知能では頭脳戦のロジックのガバは見つからなかったのですが、他の方のレビューを見るにそこそこガバはあったらしいですね。具体的な指摘が少ないのでどこがガバだったのかは分かりませんけど。
車輪の国に続いてこちらも悪役が凄くカリスマにあふれています。るーすぼーいさんほど上手に悪役を扱うライターさんもいないでしょうね。ただ、車輪に比べて、シナリオの面白さが悪役ありきすぎたかなと思います。ハル以外の個別ルートでは魔王がいなくなるので、お話全体の魅力も半減していました。車輪よりは個別に力を入れていましたが、特別面白いということもありませんでした。花音ルートは良かったけど。
車輪もG線もトリックばかり取沙汰されますが、るーすぼーい作品の真髄は「人間の芯の部分を描いたヒューマンドラマ」にあると思います。今作もその魅力は健在で、最終章では思わず泣かされるほど感情を揺さぶられました。ラストの盛り上がりでは間違いなく車輪を越えています。
一方で、G線の叙述トリックはややお粗末だったと思っています。
この作品の叙述トリックは「主人公の別人格が魔王」だとミスリードさせて、実は「主人公の兄が魔王だった」というトリックです。叙述トリック自体は成功だったかもしれないです。私は最初に写真が出てきた時点で「この写真を撮っている何者かが魔王だな」と思ったのですが、そのあと結局二重人格だろうと考えなおし、5章の序盤でようやく正体が兄であることに確信が持てました。
ただ、二重人格ではないとするなら、個別ルートで魔王がいなくなる理由が全く分からないです。誰かのルートでは「俺はもうすぐ消える。奴が愛を知ったから」という台詞も言っていましたし...。二重人格ではないとしたら全く意味不明な台詞ですよね。ミスリードを成立させるために個別ルートでの整合性を完全に捨てていました。叙述トリックのためだけに、プレイヤー相手にのみ成立する嘘をついている。そりゃ、整合性無視してもいいのならミスリードも簡単でしょうけど...。普通に反則技だと思います。これで叙述トリックが凄い!だとか言われているのは全然納得いきません。破綻してるじゃないですか。
それと、叙述トリックを成立させるための情報規制のしわ寄せが5章以降に集中しちゃってます。叙述トリックが開示された後に、いきなり魔王のバックボーンやハルの過去その他諸々が開示されて、構成的にあまりきれいでは無いなぁと思いました。感情があまり追いつけませんでした。もう少し上手く情報開示を工夫できていたら良かったかなぁと。
まぁ色々言いましたが、間違いなく面白い作品でした。エロゲでこれほど良質な頭脳戦が見られるとは思っていませんでした。車輪とG線どちらが好きかと聞かれたら車輪と答えますが、ラストの盛り上がりとエンタメ性で言えばG線の方が上だと思います。