ピュアッピュアな恋愛模様が見られる可愛らしいお話
完全に少女漫画の文法で描かれた異色のエロゲ。
魔法少女的な設定は結構好きだった。主人公はぬいぐるみのユキちゃんとしてすももの傍に居ることになるけれど、ぬいぐるみの正体が主人公だとばれてはいけない。ユキちゃんになることでヒロインの新たな一面を知ることになったり、伝えたくても立場上伝えられない想いにもどかしく感じたりなど、やはり少女漫画的な活かされ方がされていたように思う。
メインとなるすももルートはすごく出来が良かった。二人の距離が少しずつ近づいていく過程が丁寧に描写されていて、不覚にも「これが尊いという気持ちなのか...」と分からされた。エロゲという媒体で、こちらが恥ずかしくなるレベルの純情全開な恋愛を違和感なく描き切ったのはすごいと思う。エロゲなので当然Hシーンもあるものの、二人の初々しさの演出として効果的に機能していた。実用性は皆無だが、この作品はこれでいい。
すもも単体で見ると正直大好きというキャラではなかった。愛くるしい外見に助けられてはいるものの、すぐに泣きだす性格は人によっては受け入れられない人もいると思う。けれど、ハル君とすももというカップル単位で見ると、それはもうエロゲー史に残る名カップルだった。これほどまで応援したくなるカップルはない(断言)。二人の初々しさにはなんというか、ドキドキするものがあった。このゲームをプレイしているときだけ、心が乙女になっていた気がする。エンディングが流れるクライマックスでは胸にじーんとした感動が湧いた。すももルートだけは文句なしに最強のルートでした。
ただ、サブ二人のルートは正直そんなにだった。
特にノナ。この子は最後まで本当に好きになれなかった。
この作品を取り巻くキャラクター達は皆優しく、温かい。そんな悪意の全く介在しない世界だからこそ、すももに対して明確な敵意を向けるノナの存在が異物に見えて仕方なかった。話を動かすためだけにいるキャラという感じで、ノナルートを読み、オールクリアした今でも「こいつ必要だったか?」と思ってしまった。見た目が好きではないというのもあるし、すぐHシーンが挟まったのも作品の雰囲気ぶち壊しといった感じ。アスパラス変身シーンBGMはすごく好き。そこだけは評価する。
ナコちゃんルートは普通。ナコちゃん自体はすももの良き理解者として好きだった。
作品全体のテーマは「言葉」とかだったのかな。というか、「言葉にしなくても伝わる想いはある」みたいな感じか。不器用な二人の不器用なふれあいが、凄く応援したくなった。
良くも悪くもすももルートが全てな作品。すももルートだけなら90点以上を付けられる出来です。なので、すももが好きになれなかった人は全く評価できないゲームになるでしょうね。正直言って、すももルート以外はやらなくてもいい。と言ってしまうと製作者さんに失礼だろうか...。やっぱ全部やりましょう。
アニメもあるみたいなので、復習がてら見てみようと思います。