20年前にこのシナリオを考えたのはすごい
噂通り、伏線回収が凄まじい作品でした。
メタフィクション的構造を上手く叙述トリックに盛り込んだのもすごいですが、叙述トリックを作ることに意味を持たせていたのが好印象でした。
叙述トリックはミステリー小説によく使われる手法ですが、基本的には読者に驚きを与えるだけの仕掛けであり、叙述トリックがあってもなくてもお話に影響がないものが殆どです。しかし、この作品は叙述トリックでプレイヤー(ブリッツヴィンケル)を騙すこと、それ自体が目的として織り込まれており、叙述トリックなしではお話が成立しないのです。一時期叙述トリックにハマって、その手のミステリー小説を読み漁ったりもしたのですが、叙述トリックがシナリオに影響を与えた例は見たことがありません。この作品の凄いところは「衝撃の叙述トリック」ではなく、「叙述トリックをシナリオの一部に組み込んだ」というところにあると思いました。
プレイした感想としてはおおむね他の方が仰っている感想と同じです。中だるみを越えた先のココ編にすべてが詰まっていました。
ただ、結構ご都合な部分が多いように感じました。あんな大事故が起きたLeMUがなぜ2034年でも運営されているんでしょう?あれほどの大事故が起きてしまったら、施設の信用を問われる大問題になるでしょう。どう考えても社会的に存続不可能だと思うのですが...。ピピは何で急に息を吹き返して海の中に潜ったんですか?(これはまぁ、BWのほかに四次元存在がいたと考えれば辻褄はあうかもしれません。ここに限らず、いくつかの不可解な点では「四次元存在がもう一人いた」で説明することが出来そうです。)外科手術もできて二度目のLeMU大事故を計画して実行できた優は天才すぎるのでは?石碑抱えて119Mまで潜るって...。
また、いくつか伏線が回収されてないように思うのですが、これは私の気のせいですか?
・闇鬼で缶を蹴ったのは誰なのか
・生体反応数のブレ
・なぜ武は記憶をなくさなかったのか
プレイヤーに想像の余地を残したということなのでしょうか。考察サイトを巡っていると結構色々な考察がありますね。「明かされていない四次元存在がいる」という考察はなるほどなと思わず唸ってしまいました。この考察は好き。
いつもそうなのですが、どうしても批判点ばかり指摘してしまう...これは悪い癖ですね。
中だるみはあったものの、叙述トリック周りは神がかってましたし、終盤の凄まじいカタルシスと疾走感は他では味わえないものがあります。名作の名に偽りなしでした。
緻密な構成の妙を楽しむ作品です。