静かに心に残り続けるお話
ホスピスで暮らす少女の最後の日常を描いたお話。
どうやら制作にあたってのコンセプトがあり、お話の表現するための情報(絵や声のこと)が少ない方が上なのではないか?という考えで作られたそう。詳しいことは作品内のプロダクトを読んでください。
その時のキャラクターの表情や、台詞に乗せた感情を読者が想像することで解釈の余地も広がる。この思想は特にNarcissuのような、読者に考えさせるテーマのお話でこそうまく働くと思う。この作品でも、セツミが今どう思っていてどんな顔をしているのだろうか、と考えることがよくあって、製作者さんの思惑に乗せられてるなぁと。
ただ、それだと小説でいいのでは?とも思ってしまった。そこまで受け手に委ねてしまうのなら、ノベルゲームである必要性がなくなってしまったように感じる。少なくとも絵があってこそのノベルゲームだと思っているので、コンセプトは良いと思うけど、ノベルゲームという媒体には適していなかったのかなと。
とまぁコンセプトの話は置いておくとして。お話については、正直泣きました。
といっても感動で泣くわけではなく、やるせなさが極まって泣くというか。最終兵器〇女と同じタイプの無情感。何の奇跡も幸運もなく、ただ生きるのを諦めた少女が死ぬだけのお話。読み終わって思ったのは「この作品は絶対に忘れないようにしなければ」ということ。セツミという一人の少女が生きていたということ。世界には、セツミのような人達が沢山いるということ。それらについて考えたということを、絶対に忘れてはならないなと思った。まぁ忘れたくても忘れられないくらい強烈な体験だったけれども。テキストの美しさも相まって、最後の写真と「眩しかった日のこと そんな冬の日のこと」で涙腺が崩壊してしまった。プレイしてしばらく経った今でも強烈に心に残り続けている。
今までプレイしたノベルゲームの中で最も洗練されていて、最も心打たれた作品でした。
無料なのでこれを見た人は全員やってください。義務です。