粗はいくつかあるし、疑問点もなくはない。しかし総合的に見ると、冬茜トムの最高傑作かなと思う。
今作はキャラクターとテーマの描き方が良かった。これに尽きる。
かなりのボリュームを費やしてたどり着いた「差別は今すぐにはなくならない。けれど、いつかなくなることを信じて今できることをしなければならない」という現実的な結論には説得力があった。このテーマを完遂させるために過去から続く因縁を断ち切らねばならないということも理解できるので、エウリュアレをラストバトルに持ってきたことも納得している。ラストバトルにしてはやや肩透かしだったけども、必要だったので減点はしない。
序盤からずっと面白かったし、お得意の叙述トリックもアメグレ並によくできたものだった。キャラクターも不要な人がほぼ存在せず、人物描写も丁寧だった。
ただ、戦闘シーンだけは正直擁護できない。
まず、長すぎる。戦闘というよりは対話がメインになるのでキャラがずっと喋りっぱなしで、会話がひと段落つくまで戦況が一切動かない。だから戦闘に入った途端にテンポが悪くなっている。戦略や駆け引きがあるわけではなく、戦闘自体に面白さが薄いというのも冗長さに拍車をかけている。
それと演出がチープすぎる。いつのゲームだよと言いたくなるほどに演出がない。視覚的な効果を軽視しすぎではなかろうか。ボーカルつきのBGMで盛り上げるのはいいが、綺麗にループ処理ができていないので曲が終わると無音のインターバルが挟まる。ゲームであることを強く思い出させられて一気に冷めるからなんとかしてほしかった。
CGも少ないし質が良いわけでもない。レイ先生VSメイナートのCGとか、躍動感なさすぎてがっかりした。かなり激熱展開だったのになぁ...。
面白かった戦闘はエピソードχの伏線回収を巻き込んで盛り上げまくったギメル戦くらいで、後は退屈だった。今後もきゃべつそふとでやっていくのなら、バトルものは作らない方がいいんじゃないですか?きゃべつそふとの技術力が足りてない。
戦闘以外はほぼ文句なしの出来。ラストの超展開も、歩んできた軌跡をふいにするものではなかったので私はありだと思っている。キャラ描写や道中の面白い展開作りが出来るようになっていて、冬茜トムというライターの進化を感じる作品だった。やはり冬茜トムは裏切らない。次回作も期待しています。