心に残る素晴らしい旅だった
10時間程度のミドルプライス作品でしたが、フルプライスにも引けを取らないレベルの充実感を味わえた作品でした。
割とベタな設定ではありますが、ここまで心打たれる作品に仕上げたのはライターさんの手腕故でしょう。まさか泣かされるとは思わなかったです。
銀河鉄道の夜を思わせる幻想的な雰囲気と、優しいキャラクター達が織りなす美しい物語。読んだ後胸に染み入るような、そんな暖かい読後感のあるお話でした。
生きるということは、どうしようもなく辛く苦しい。けれど、それでも前を向いて生きようとする意志こそが大切である。前を向いてさえいれば、きっといつか幸せを感じられる日々が来る。
この作品は生きることに絶望した少女が大人たちに背中を押されて前を向くようになるまでのお話ですが、それと同時に道半ばで夢を折れた大人たちの救いのお話でもあったと思います。理不尽な現実を目の当たりにして夢を挫折してしまった主人公達ですが、それでも最後には大切な人に大切な何かを残してあげられた。そして、自分の人生を見つめなおして、それが幸せな人生であったことに気付けました。人を良い方向へ導く黒猫のように、子供に道を示してあげられる人間になれた。それが大人になるということなのでしょう。
私はまだ大学生で、大人とも子供とも言い切れない微妙な立ち位置にいる人間ですが、だからこそ心に響くものがある素晴らしい旅でした。
UIはもう少し充実していたらよかったなと思いました。必要最低限しか揃えられていないですし、バックログジャンプもない。テキストを進める際に微妙なウェイトがかかっているのも気になりました。まぁ、今まで同人作品をプレイしたことがないので、これが標準であることを私が知らないだけかもしれませんが。