最高の雰囲気ゲー。心を折ることに余念のないお話だが、シナリオもキャラも一級品。
雨の止まない街の音楽学校に通う少年少女の恋愛物語。
細部に至るまで雰囲気作りの演出が凝っていて、世界観に浸る没入感という点では今までプレイしたノベルゲームの中でもダントツのトップでした。読んでいて心地よいというか、心に染み入るような味わいのある作品です。音ゲー要素も最初は難しかったですが、没入感を高める演出としては最高でした。卒業演奏は自分が舞台に立っているような緊張感が味わえました。
この作品は、登場人物の心情をあまり語りません。読み手に解釈の余地が残されている場合が多く、読み手が能動的に物語に関わる必要があります。そういった意味では非常に文学的な作品だったなと思いました。多分、考察しようと思えば無限にできます。
例えばファル様ルート。このルートのエピローグで、クリスが一切しゃべらないのが不穏に感じました。クリスとファルはクリスの故郷に帰りますが、他ルートを見るに、すでにアルは亡くなっています。同時に文通相手の正体にも気付くでしょう。それを経てクリスはどう思ったのでしょうか?ファルはエピローグで「クリスもクリスのフォルテ―ルも愛している」と言っています。つまりはクリスのフォルテールの魅力は損なわれていないということで、彼は何かしらの強い感情を持っていると考えられます。喜びや幸せではないでしょうね。どう考えても悲しみの感情です。私は、エピローグのクリスは殆ど心が壊れてしまったのではないかと思いました。そして、それがファルの意図したものでもあったのかなと。ファルが夢を叶えるにはクリスがより悲しみの感情を持つことが必要で、だからこそアルと会おうとしたのかなと。愛する者の心を壊してまでも己の幸せと夢を追う。そう考えるとファル様が怖くなってきたので、これ以上詮索することをやめようと思います。でもまぁ、ファルも正しく愛を注がれなかった子なので、歪に育ってしまったのも仕方ないというか...。
めちゃくちゃ話が脱線した。
個別ルートはどれもため息をつかずにはいられない程に気分が沈みました。トルタは報われてもいいと思うの...。トゥルー見ても、この先トルタが真に幸せになる未来が見えないですし。これだけ苦労を被った子が一切幸せになれないとか、この世界間違ってますよほんと...。
散々心にダメージを与えてきた個別を経てのフォーニルートは、全く予想もしていないところから殴られました。アルだったなんて全く予想してなかった。全員が幸せとはいきませんでしたが、心のすくような爽やかなハッピーエンドが見られて本当に良かった。思わず涙してしまいました。多分、トルタが最も救われるのはフォーニルートですよね...。
音楽もすごくよかったです。どの歌もヒロイン達の心情をよく表していて、優しい曲調が好みでした。。私はリセが一番好きなので、「リセエンヌ」が特に好きです。
雰囲気作りに余念がなくて、最高に世界観に浸れる作品でした。エンディングを全回収した時は喪失感で泣きそうになったレベルです。一生忘れられない作品になりました。ありがとうございます。100点です。