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senya13さんのルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend editionの長文感想

ユーザー
senya13
ゲーム
ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition
ブランド
イエティ
得点
99
参照数
112

一言コメント

こんなに面白いゲームが埋もれているのはおかしい。この感想を見た未プレイの人は今すぐに買ってくれ。そしてやってくれ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 この作品、何故こんなにも埋もれてしまっているのだろう?
 緻密に練り上げられた世界観と設定をこれでもかと言うほどフルに活用しつつ、伏線を張り巡らして読者の興味を強烈に惹きつけ、己の正義を信じてぶつかり合う人間ドラマで魅せる。それでいて常に予想を裏切る展開を繰り広げ、伏線を完璧に回収した上で胸のすくような爽やかなエンディング。
 これほどまでに完成度の高いシナリオは見たことが無いというレベルで面白かった。「人それぞれに正義がある」というテーマを描きつつ、BCという設定を用いて「お互いを理解しようと歩み寄ることが出来れば、きっと良い未来にたどり着ける」という綺麗事のようなメッセージをこれ以上ない説得力で主張してみせた。お互いの正義がぶつかり合う場面では手に汗握る展開が続いたが、やがてバラバラだった彼らが一つになっていく様子は熱いを通り越して感動させられ、エンディングでは思わず涙した。誰一人欠けても成立しえなかった、微に入り細を穿つようなシナリオには舌を巻くばかり。
 魅力的なヒロイン達とのイチャラブが見られなかったのだけは惜しいが、それは望みすぎだろう。エピローグは大満足の出来だったのだから、これ以上は蛇足になりかねない。

 ただ、惜しい点もいくつかある。
 一つは、テキスト。基本的に第三者視点で物語が書き綴られるので、文章に感情の乗る余地が少なく、文章の力や勢いがやや欠けているように感じた。ただ、改めて振り返ってみると、第三者視点ということにも意味があったのかもしれない。詳細は省くが、研究所内にはBCの使用による影響で魂が作り出されていたかもしれないので、第三者視点=魂の視点と捉えることもできるかもしれない。そうなると第三者視点にも意味があったということなので、一概にダメな点とは言い切れないだろう。
 二つ目は、シナリオ上仕方ないが、同じ場面を繰り返し見せられるということ。
 ルートC以降は、同じ場面を違う人物の視点で見るという展開が多かったため、ややだれた感は否めない。またこの場面かとうんざりすることもあったと思う。シナリオ上どうしても省けないところなので仕方ないのだが、もう少し見せ方を工夫できたらよかったのかなと思う。
 分岐システムには賛否あるだろうが、私は早々に自分で考えることを放棄して攻略サイトを見たので何とも言えない。正直この分岐システムは分かりにくすぎるので、これからやろうと考えている人は素直に攻略サイトを見るべきだろう。テーマに沿うシステムだったことは評価できるかもしれないが、私は脳死で進めてしまったので批判も何もできない。

 これほどまでにレベルの高い作品が埋もれてしまうこの世の中は間違っている。この感想を間違って見てしまった未プレイの人は、今すぐに買ってくれ。そしてやってくれ。
 私が個人的に崇拝している「俺たちに翼はない」を越える作品は一生出てこないだろうなと考えていたが、考えを改める。この作品は俺つばに届いた。