ErogameScape -エロゲー批評空間-

senya13さんのサナララRの長文感想

ユーザー
senya13
ゲーム
サナララR
ブランド
ねこねこソフト
得点
90
参照数
207

一言コメント

物凄く惜しい作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 面白い云々以前に凄く好みな作品。
 今を生きるすべての人へのエールとなる普遍的なテーマを描いた、とても暖かくて優しい物語でした。どのお話も心地良く、読んだ後、前向きに生きようと思える。そんな作品です。正直言うと個々のエピソードはそこまで印象に残ってはいないのですが、ミクロではなくマクロとして、「サナララ」というゲームをプレイした記憶は一生心に残り続けるだろうなと。
 私は1、3、4、5、6章が好きでした。特に3章はありがちな話ながらも強烈に感情を揺さぶられ、思わず涙してしまいました。Narcissuが好きな自分としては、3章のような泣きを求めていました(まぁ、ライターも違いますし、Narcissuとは泣きのベクトルも違うのですが)。
 この作品で一番泣けるのは多分、3章のサイドストーリーです。秋の一人芝居を始める場面でもうガチ泣きですよ。あれはずるい。それと、患者とその周囲の描き方がNarcissuを彷彿とさせました。多分、意図的に似せてたんじゃないかな。
 BGMも良く、何気ないシーンでもすごくドラマチックに演出してくれました。CGも可愛らしい感じでグッド。

 ただ、短編形式故か、個々のエピソードの破壊力に欠けている気がします。話の積み重ねというものが薄いので、どれも「いい話」止まりといか。泣きゲーの分類みたいですが、自信を持って泣けたと言えるのは3章だけです。他はせいぜいが感動止まりで、そこは少し物足りなかったかもです。

 以降気になった点です。
 複数ライターの弊害故か、章ごとに設定に微妙なずれがあるように感じました。
 願い事システムの説明をした時点で、ナビへの引力はなくなるという話でしたよね?章によって、「説明した時点で引力がなくなる」だったり「お試し願いをするまで引力が続く」だったりしました。
 また、七章の「ナビ同士は絶対に顔を合わせられない」の理屈もよく分りませんでした。これ、ナビは対象者以外から存在を認識されにくくなるが故の「ナビ同士は絶対に顔を合わせられない」ではないのですか?認識されにくいとか以前に、そもそもナビ同士は不思議な力で絶対に会えないという設定なら、洋一が「願い事をスルーした対象者には新しく別のナビが配属される」ということを知ることができないでしょう。
 かなえられる願いの上限というのも曖昧で、「自分に好意をもつように」というお願いはスルーされるのに「みんないなくなれ」という願いは通じてしまう。どう考えても後者の方が無茶してませんか...?世界規模で影響を与えるのは無理だと七章でも考察されていましたし...。ライター間での設定のすり合わせが出来ていなかったのかなぁと思ったり。
 ただ、他の方のレビューを見ている限り、同じような指摘をしている方が殆ど見られません。もしかしたらぜんぶ私の勘違いかも。それだったら申し訳ないので、これらの指摘での減点はしないでおきます。間違ってるよ!と言う方は是非ご指摘お願いいたします。

 まぁ色々書きましたが、凄く暖かい気持ちにさせてくれる良い作品でした。名作には一歩届かない感じではありますが、大好きな作品になったのでやや甘めに点数をつけておきます。

 自分の現状に不満を持っている人、諦めてしまった夢がある人。そんな人達にぜひプレイしてほしい作品です。