女装ものであり王道スポコンもの
正直言って、過大評価だと感じました。
自信を持って面白いと言えるのはルナ様ルートとユーシェルートだけです。湊ルートはどうしてこうなったんですかね...。瑞穂ルートはプレイしていません。瑞穂のキャラがどうしても好きになれなかったので。一応プレイ中ではあるのですが、やはり全然好きになれないです。以下感想
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多くの人がプロローグが長くて重いと低評価をつけていますが、むしろ私はプロローグで引き込まれたクチです。主人公の生い立ちや夢を持つまでの過程がこれでもかと丁寧に描かれており、主人公を好きになるのに十分すぎる導入でした。ジャンの「ああ、楽しかった!」や母に言えなかったありがとうを言うシーンはかなりグッときました。ジャンの遺書シーンはつり乙で一番好きなシーンまである。
学園入ってからの展開も面白かったです。キャラの魅力も十分に出し切れていましたし(瑞穂以外)、コメディも軽快で面白かったです。共通で唯一女装バレした湊は個別でどう展開してゆくのだろうか...。と思いましたが、案の定残念な出来でした。悲しい。
湊
ぼろくそ言ってますが、湊のキャラはすごく好きです。私は「物語開始時点から主人公に好意を持っているヒロイン」が大好物なので、湊も例に漏れず好きになれました。
だというのに何なんですかこのシナリオ。ダイジェストかな?と思うほどに話が飛び飛び、肝心の告白シーンはテキスト飛ばしたかな?てくらい不自然な会話、悪口で倒産とかいう馬鹿みたいな展開。挙句の果てに服飾関係なくメイド喫茶始める始末。何が起きているんだよと嘆かずにはいられません。
せっかく唯一の服飾初心者なんだから、主人公と二人三脚で少しずつ前に進んでいく、みたいな展開にすればよかったのに。他ルートと比べて毛色が違いすぎました。
あと従者の七愛。彼女自体はすごく好きなキャラなんですが、なぜそんなに湊を溺愛するのかの理由をきちんと描いてほしかったです。一切言及されなかったので気になりました。
ユーシェ
努力を武器に天才に挑む超王道シナリオ。おかげで展開がほぼ全て読めてしまいますが、それでも熱くなれるものはありました。単純にシナリオだけ見れば一番好きだったかもしれません。
才能が無いと見放された朝日と、才能の差を見せつけられたユーシェが手を取り合って天才に立ち向かっていく様子は見ていてすごく応援したくなりました。フィリコレで優勝したシーンのユーシェの泣き顔にもすごく心打たれました。フィリコレ直後にルナ様との掛け合いがあればなお良かった。というか何故なかったのか。
ユーシェも努力家で好感が持てました。誤用ネタも面白く、笑わせてもらった。口調が変化していくのも可愛くて好きでした。ですわ口調も好きでしたけどね。
サーシャも朝日の理解者というおいしい立ち位置でしたが、すごくかっこいいキャラでした。
ルナ
主従の絆がひたすらに描かれたルート。他ルートでは「関係性の変化」として使われた女装バレを、あえて関係ないと切り捨てることで主従の絆の強さを強調したのは上手いなと感じました。一波乱も二波乱もありましたが、最後はやはり大団円ということで一番トゥルールートっぽいシナリオでした。
気になったのは衣遠です。これまでの衣遠は悪役ながらも強い信念を持ったカリスマとして描かれていて、憎めないどころかそのすがすがしさに好感さえ持っていました。だからこそ、ルナ様ルートで盗作をしたことに凄く違和感を覚えました。あれだけ高いプライドを持っていた衣遠が盗作なんてするでしょうか?ルナの母親に泣きつかれて同情したとか言われても、全然納得できません。そんな理由で盗作するようなキャラじゃないでしょうあなた。朝日を退学させるための手段だったとしても、他にやりようはいくらでもあったはずです。それこそ女装バレさせるだけで退学は確実だったのですから。なんだか一気に小物に成り下がった感があり、がっかり感が凄かったです。フィリコレで優勝して衣遠に認められても、何の感慨もありませんでした。私の中ではそれほどに衣遠の盗作はショックだった。なんだかなぁ、と思いながら感動の和解シーンを真顔で眺めていました。
とはいえ、ルナ様と関係性を深めていく過程はすごく綺麗で、これだけでもルナ様ルートは満点をつけられる出来でした。ルナ様の強さがこれでもかと描かれていて、可愛さの中にかっこよさを感じさせる、最強のヒロインでした。なるほど伝説になるわけだ。
瑞穂について
普段エロゲをプレイする際は、絶対に全員攻略するようにしています。作品を語る上で100%プレイしないのは作品に対して失礼だと思っているからです。つり乙も、全員攻略するつもりだったのです。ですが、どうしても瑞穂だけは食指が動かずに機械的に少し進めて断念しました。なぜ瑞穂ルートを進める気にならなかったのか。
理由の一つは、ルナ様ルートを先にやってしまったこと。あまりにクオリティが高く、またトゥルールート然としていたので、瑞穂ルートに興味が持てなくなりました。今後プレイするつもりの人は、ルナ様ルートだけは絶対に最後に回してください。どうしても他ルートが蛇足に見えてしまうのです。
もう一つが最大の理由なのですが、それは瑞穂に魅力を感じなかったということ。極度の男嫌いという設定は女装ものでは多分よくある設定でしょう。「性別を隠すことの罪深さ」を感じさせる設定としてこれほどのものもないでしょうから。つり乙という作品のバランスをとるためにも、必須なキャラ付けだったことは理解できます。
なのですが、瑞穂の「男嫌い」には記号的なものしか感じられませんでした。男嫌いの理由も「昔男にちょっかいかけられた」というありきたりなもので、何も深い理由はありません。それも分別もつかない子供の頃の話なのですから、よくある「好きな子にちょっかいかける男の子」というだけでしかありません。男を嫌うにはあまりにも理由が薄すぎます。性別を隠して裏切った朝日にも非はあるので遊星を嫌うのは分かるのですが、「朝日は朝日だからもっと近づきたい」となるのは全く理解できません。自分の中で折り合いをつけた結果なのでしょうが、「遊星をいないものとして朝日と接する」ならともかく「朝日が遊星であると知りながら朝日と親しくする」は筋が通っていないような気がします。都合よく優先順位をつけられたような感じがしてすごくモヤモヤします。女装バレするたびに倒れたり嫌われたりするものですから、話を進めるたびに瑞穂の株が落ちていく。結果、どうしても好きになることが出来ませんでした。本当に申し訳ないのですが、断念させていただきました。隙を見て少しずつ進めていこうとは思っています。続編はプレイするつもりなので。
まとめ
全体的に高水準で、女装バレも上手く扱っていて飽きることはありませんでした。ですが、巷で言われているほどの傑作ではないような気がします。一応続編もプレイしますが、私には女装ものが合っていないのかもしれません。