確かに面白いけれど、この点数には疑問が残る
icとcc含めての点数です。
この作品は、読み手に要求される能力が多すぎると感じました。キャラの些細な行動や台詞の端々から微かな感情の機微を察知する能力だったり、ストレスのたまる鬱展開への耐性だったり、ひたすら反復というかすれ違いを繰り返す物語構成を飽きずに読める感性だったり、物語を忘れない程度に連続してプレイできるまとまった時間的余裕だったり。何よりヒロインを裏切り続け、最低街道まっしぐらに突き進む胸糞主人公を眺め続ける器量が必要です。これらのハードルを越えた人のみがこの作品を楽しむことができる。私はどうだろう...。面白かったことは間違いないんですが、この作品をクリアして最初に思ったのは「面白かった」ではなくて「疲れた」でした。
読者をふるいにかける要素が多すぎる。究極に人を選ぶこの作品が100点連発の大絶賛って、詐欺というかなんというか...。この作品を「世紀の大傑作」だと評する人と同じ数くらい、「全く合わなかった」と評する人がいると思うんですよね。過大評価だとは言わないですけれど、このサイトの点数を見て買おうと思っている人はもう少し考えてみてください。ここに感想を書いているのは、ひたすらふるいにかけられた上で70時間越えの超ボリュームの物語を読み切った精鋭たちです。面構えが違う。
全く好きになれないキャラ達が織りなす、浮気がテーマの鬱々とした恋愛物語。この文面を見て自分いけそう！という人は是非チャレンジしてみてください。もしかしたら最高の体験ができるかもしれません。無理そうだと思ったら素直に手を引きましょう。
あと、テキストが読みやすいといった評価が多いみたいですが、私は読みにくくて仕方なかったです。台詞と独白が交互に挿入されるシーンが多くて、バックログを見ないと前後のつながりがよく分らなかったりしました。
珍しく今日は遅刻した。
「おはよう」
だって、いつもより外が暗かったから...
「おはよう」
昨日、夜遅くまで起きていたから...
「今二時間目だけど来るの遅くない？」
朝ドラがどうしても見逃せない展開だったから...
「遅刻しました」
なんて言い訳が通るはずもなく。
即興で考えた例文ですが、こんな感じです。分かりますか？分からないですよねすみません。
台詞をまたいで独白が続くので、すごく読みにくく感じるんですよね...。この独白が間に挟まれた台詞に上手くかかっていたり、別の意味に機能したりもするので一概にダメとは言えないんですけど。正直私が一番堪えたのはここでした。
読み手の心を揺さぶることに特化したシナリオには何度も感動させられ、心打たれました。心に残る、忘れられない物語であったのも事実です。しかし、素直に「好き」「面白かった」と言えない自分がいるのもまた事実です。この点数以上は、私には付けられません。