充実した内容で満足度が高い作品。
本編と追加ストーリーを合わせた内容になっているコンプリートBOX。まず特筆すべき点は、初出が2007年でありながら本編OPはフルアニメーションである事。今現在では驚くべき品質という程でも無いが、何も知らずに昔の深夜アニメで使われていたと聞かされても信じてしまう程のクオリティ。
もう一点は安定して高品質なCG。立ち絵も安定していてイベントCGで演出されている描写は際立っている。肌感も程良く描かれエロシーンにも貢献度が非常に高く、夏を意識した日差しや梅雨の関わるCGはそれだけでも見る価値がある。特に水を扱う描写は再現度が高く素人目に見ても綺麗だと断言できる。
前述のCG要素に加え、声優陣も非常に安定した演技で個性豊かな会話劇が繰り広げられ、立ち絵のある女性キャラは演技力がある、またはキャラ個性を生かす事に成功している。因みに立ち絵のある女性キャラ10人中8人ルートで裸CGが無いのは1人だけ。シナリオ量やCG枚数は多少ばらつきがある。
内容は主人公とヒロインの成長を恋愛を通して描かれている王道パターン。後半にシリアスシーンがありバッドエンドは無い。エンドが2つあるヒロインが2人居るが、どれもハッピーエンドで選択肢が反映された形となっている。ヒロイン攻略は容易で対象キャラと関わる選択肢を多くすれば個別ルートに入る。本編攻略順は明日香(CV安玖深音)ルートを任意で最後にするべきなだけで、5人攻略すると本編オマケの里佳(CV一色ヒカル)ルート、追加の七海美菜(CV風音)、七海真奈美(CV夏野こおり)ルートと1人ずつ解放される仕様。
季節は夏、神が居る島での神隠しから始まり、神が住む「向こう」の世界があることが分かる。しかし以降は深く追求されるような描写は無く断片的な情報が出るだけに留まるので、この大きな設定からヒロイン毎に様々な話を広げていく恋愛と成長の物語が主になる。神秘的な要素がある中で人間模様が描かれ恋愛に発展していくが全体的にはコメディ調で、笑いあり感動ありで繰り広げられつつ楽しい雰囲気を損なわない作風。ダークな雰囲気は添えられる要素であって「向こう」の世界が何なのか分かる事は最後まで無いので、この作品においては深い背景設定は一番に求める事にしてはいけない。
全てのヒロインがハッピーエンドでも差異があり環境が変わるエンドになっている。ルート分岐してから出てくる問題を対処するのは共通要素。その中でも明日香(CV安玖深音)がメインヒロインでトゥルーエンドと考えて間違いない。主人公が神のいる島に赴く理由が明日香の存在あってこそのストーリーであり、全ルートをクリア後に読める後日談が明日香エンド後で開始される事が証拠のようなもの。
追加ルートの七海姉妹2ルート中1ルートは本編に匹敵するシナリオ量となっている。当時のキャラ人気投票1位の七海美菜(CV風音)はサブキャラながらも登場シーンがかなり多く、この作品のバカシーンの筆頭であり七海が受け入れられるかが良し悪しのポイントになる。攻略対象に昇格された事は素直に嬉しい所。前述の後日談「或る夏の日」は本編攻略対象を順番に交流するラブコメな一日が描かれているが七海姉妹のCGは無い。他ヒロイン1人につき1枚CGが用意されているので見る価値はある。
他にもBGMや背景アニメーションも雰囲気の演出向上が伺える仕様になっている。それとキャラの自己紹介、神様(CV北都南)りんの小噺なるオマケも収録されている。どんなことが起きても不思議ではない程に詳細なストーリー設定はされていないが、夏の田舎の世界観とキャラの魅力を十二分に発揮している作品だと感じる。