今までのケモノっ娘の概念を覆す話。鬱ゲーというのは小耳に挟んでいて、どんな展開かはある程度は予想していた。けど、全くの想定外、というか予想していた程度の生易しいものではなかっただけに凹んだ・・・。
キャッチコピーの「Heart warming “Heat” storys」というのは、前半に限れば間違ってはいない。ほのぼのとした雰囲気、キャラとのコミカルなやりとり、「治療」をヤりまくりだったり。
それだけに、全てのノーマルエンドを見た後で「THE END」と出るのは、「A peaceful world」としてプレイヤーの心に留めておくための配慮のような気もする。
A peaceful world――診療所における、先生やネコミミ患者達との、ほのぼのとした日常。
・・・それを壊し、真実を叩きつけるトゥルーエンド。
まさか、「ネコミミ」という所謂「萌え」の記号であるそれを、世界を破滅させるウイルスの症状として描くとは・・・。
この事が明らかになり、雰囲気が、それこそ180度と言っていいほど変わる。BGMが「日常1」から「日常2」に変わった事も、これを顕著に表していると言える。
誰かの自己犠牲によって世界が救われる、というのはそれほど珍しい展開ではない。
ただ、作品で描かれなかった人物達――世界が救われ、今まで見てきたキャラ全員が救われないというのは・・・やはり辛い。
自己犠牲は感動を呼ぶものかもしれないが、正直なところ鬱な気分の方が大きかった。
・・・ただ、時間を置いてEDムービーを見てみると、彼らの決意を思い出し、胸にくるものがあった。合わせて、作中にも出てきた『幸福の王子』を読むと、感慨もひとしお。
最初に抱いたイメージとのギャップで、「こんな作品を望んだわけではない」と言われる事が多いと思う。それでも、敢えてこの内容にした製作陣の姿勢を評価したい。