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scapecloverさんのヘンタイ・プリズンの長文感想

ユーザー
scapeclover
ゲーム
ヘンタイ・プリズン
ブランド
Qruppo
得点
88
参照数
414

一言コメント

強敵打倒のための大立ち回りや壮絶な拷問は圧巻。奇抜な言動で飽きさせないのも前シリーズからの良さ。ただ引っかかるのは大オチでのパロディ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ぬきたしシリーズはプレイ済み。監獄系作品はショーシャンクのみ視聴済み。
以下一部で「ショーシャンクの空に」のネタバレを含みます。

まず良かった点を挙げれば、看守長を打倒するために毎回仕掛ける大立ち回り。
特に組長√のダイナマイトデスマッチは全体を通しても勢いと緊迫感がずば抜けていた印象。
千咲都√や組長√で苦難を乗り越えじっくりと看守長1人を倒すためノア√やグランド√の途中は拍子抜けすることもあるが、それらはシコレンコや所長関係で盛り上がりが生まれていたと思う。
更生不能房や保護房、3本柱の没収といった厳しい中盤もそのクライマックスの解放感を高めてくれていた。

ヒロインも魅力的というか強烈で、シナリオとしても柊一郎とどこか似ている部分があるというのが作品の状況としていい。
そういったキャラクターの性質が丁寧に描かれていたのも印象的で、その後で明文化されたタイミングでしっかりと実感をもって納得することができた。
特にノアの姉以外のことに関する有能さや自分が信仰することに突っ走ってしまう点はそうだった。
組長の内なる自分と対話するという柊一郎のアマツくんに似た性質についてだけはグランドでいきなりでてきたので首を傾げた記憶。

またぬきたしシリーズと同じく、下ネタやパロディのおかげで平凡な内容の場面であってもイカれた文面で楽しませてくれた。千咲都の「いい気味ねえ」や文乃譲りの反芻ネタなどオリジナルなネタも面白かったが。
Qruppo作品で感心するのは、パロディや業界メタ的なネタが手広くそろえられていること。
近年では珍しくエロゲをやらない層にもウケている印象があるブランドだが、それらの層にウケるようなネットネタだけでなく、エロゲをよくやる層にしか刺さらないネタも用意されている。
今回であれば前者は遊戯王が印象深いし、後者はエロゲ制作や姉からの声優アドバイスの場面で多くあった。


最後に微妙であった点について書く。
それは一言感想にも載せた大オチのことで、他の方の感想でも指摘されているように「ショーシャンクの空に」の大オチに酷似している。
情報屋が、獄中主人公から教えられた隠し場所に、一生来ないと思っていた仮釈放の最中、監視の目をかいくぐりながら、そこに隠されたメッセージを読んで、離れた地の主人公の元へ行き再開して締め
が全部同じ。グランド√においては脱獄した瞬間の雨の中CGも同作を思わせる。
それらを見たとき、何ともやりきれない気持ちになった。
ここで思うのは今作におけるパロディの立ち位置で、自分の中でそれは「クスりと笑えるもの」だった。
だから最初の新人いびりを読んだときは笑ったし、「予習でショーシャンクを見といて良かった~」と思えた。
しかし大オチや脱獄時CGで見せられたパロディは、全く笑えない流れの中のものだった。
これまでの流れがあるから「パロディだから笑っていいのか?」と思うが、雰囲気が違うから困惑してしまう。
大オチというオリジナリティを最大限発揮してほしいところで既視感のある展開をぶつけられただけでなく、今作のパロディネタの在り方にしこりを残してしまう残念なオチだったと思う。
あんな描き方でなく、次回作の冒頭にデフォルメCGで同じことでもしてくれたらいつものパロディで消化できたのに…と思えてならない。

その他終盤のスタッフロール連発もよく分からなかったが、ぬきたし2のパッコマンでIF世界→SS攻略が一続きで余韻が殺されていると感じていたので、その点の改善を試みようとしているのかなと感じた。

以上が大まかな感想。大オチは残念だったがそれ以外の点で大いに楽しむことができた。