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scapecloverさんのメモリーズオフ -Innocent Fille-の長文感想

ユーザー
scapeclover
ゲーム
メモリーズオフ -Innocent Fille-
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
84
参照数
350

一言コメント

ヘヴィサイドは緊迫感やインパクトに富んだ内容だった。ライトサイドは平凡な感じだが、ノエルというオタクの大多数に刺さりそうなヒロインのおかげで無理なく読めた。各ヒロインが様々な関係性の中にいる都合、どのエンドもスッキリしきらないのがもどかしい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

柚莉アフターはプレイ済み、過去作は2をかじった程度です。
過去作とのつながりは豊富だったと思います。過去作キャラからのアドバイスは、該当作品を知らずとも重みみたいなものを感じられました。
wikipediaの「メモリーズオフシリーズの登場人物」ページを見ながらやるだけでも楽しかったです。

以下では個人的性分で微妙な点を中心に書く書き方をしています。
色々文句を書いてますが、私は今作を夢中でプレイできましたし、展開に一喜一憂しました。三角関係を中心とした作品の中では、滅多に出会えないクオリティだと思っています。


ライトサイドであるノエルと寿奈桜のルートは、個人的には「う~ん…」な感じですがエロゲ的にはよくある感じだとも思えました。
印象的だったのは寿奈桜ルートのラストです。ただひたすらに情けない主人公と、ちょっとキャラに似合わずアグレッシブなノエルにちょっと冷めてしまいました。色々と各キャラの思いはあったのでしょうが。
また主人公の情けなさはノエルルート1や姉妹ルートなどでもそうで、分岐前がそこまで弱っていた感じが無かったのでしっくりきませんでした。
ただそんなライトサイドを読み切ることができたのは、ノエルの可愛さと琴莉関連が醸す不穏さがあったからです。
物静かで主人公には特別心を開いてくれて、心の底には芯の強さみたいなものがある金髪碧眼ヒロイン、私には刺さらざるを得ませんでした。2次元にしか許されないデカリボンも思い入れが妄想出来て良かったです。
またヘヴィのための伏線めいたものも感じられて先が気になるストーリーでした。

ヘヴィサイドでは激しい展開が多く、ジャンルが一気にサスペンスに変わったと思える場面もありました。
特に真相ルートのラストは「そういう作品だっけ?」って思いながら見てしまう部分もありました。しかしながら柚莉、瑞羽が暴力沙汰でも強いのはキャラ設定的に頷けたので満足できた部分もあります。
ヘヴィは柚莉ルートが結構綺麗な終わり方であっただけに、真相ルートがその足を引っ張っていたのが気になりました。「瑞羽ルートに入らず終われるストーリーか?」といった形で。
この思いは柚莉アフターをすると一層高まりました。そして「むしろ真相ルートが蛇足だったのでは?」と思えるくらいには柚莉アフターの終わり方も良かったです。
似た話ではノエルや寿奈桜の話もそうで、彼女らが抱える色々を無視して話を進めていいのか?と思ってしまいます。しかし「ノエルのいじめはどうなったんだろ~」とかはまだいいです。描写がなくとも想像の範囲で何とかなります。
ただ強調したいのは、柚莉ルートで琴莉の話が出るたびに微妙な気持ちになってしまうのが流石に看過しにくい、ということです。

今作では各キャラが事情を様々抱え、場合によっては複数の三角関係に属しています。
それゆえに、願わくは全てが解決してスッキリしたルートが欲しかったです。ノエル&瑞羽ルートがそれに近いですが、このルートはラストの学校でノエルがいるのが不自然な気がして何とも言えないです。


スッキリした気持ちという点では柚莉ルートを終えた直後が一番良かったですが、真相ルートも読んでいる最中や作品を振り返るまではかなり楽しかったです。