【ネタバレ有り】生々しすぎる程のリアルな想い。好きだ!って気持ちは決して一方通行じゃダメで、一方通行の想いは片思い。二人の気持ちが繋がるからこそ、満たされる物なんだ。
■積みゲー消化。
なんというか、色々な意味ですごく生々しい物語でした。
まず、「奈美編」というかプロローグ。
司の奈美への想い、真剣な想い。
大事に想っているからこそ、別れるしか無かった・・・。
無茶苦茶、共感出来ます。
辛かったと思います、奈美も司も・・・。
事前の情報で奈美と別れるのが分かっていましたから、とにかくプレイするのが辛かったです。
何というか、心理描写が多少大げさに表現されているとは思いますがむき出しのリアルさを持っており
やってる我々プレイヤーの心にザクザクと刺さってきます。
だからこそ、奈美と別れた後の司の生活が心配でなりませんでした。
心配だからこそ、話の続きが気になり、更に深くぐいぐいと作品に引き込まれていきます。
ここから始まる物語の”掴み”としてはこれ以上無い程の出来だと思います。
ただ、残念に思うのは、この後に繋がっていく飛鳥√では残念ながらこのプロローグでの伏線というか
司の心理描写が全く生きていません。
また、奏と七美√では、若干だけ表現されているだけです。
蓬√でのみ、このプロローグで積み上げた司の心理描写が生きてきているように私は思えます。
そう言う意味では真ヒロインは”蓬”だったような気がします。
以下、個別感想(ネタバレ有り)※クリア順
■蓬√
時を同じくして恋人を無くした、環境が似たもの同士の二人。
お互いの心に出来た空白を埋めようと繋がり合う事を選択した二人。
だけど、司は気が付いた、これは本当に恋なのだろうか?
正直、精神的にやっててきつかった、いやもう、すごくきつかった。
最初にクリアする√では無かったですね。
奈美との別れを引きずっていたのは、司もそうですが、私も相当に引きずっていました。
そんな気持ちを持ったまま、他の女の子に気持ちが行くわけ有りません。
特にこれが自分に取っての1st√だっただけに私自身の気持ちが全く整理が出来ていなかったので正直言って
「え?付き合っちゃうの?」という気持ちばかりが自分の中には有りました。
ただ、”一人は寂しいから誰かと一緒に居たい”という二人の気持ちは良く分かります。
分かるからこそ、司が感じた「何かが違う」の意味もよく理解出来たし、文中からも上手く伝わってきました。
司にとっては奈美を失った寂しさを舐め合う為の存在が蓬だったわけですが
蓬にとっては依存する相手が元彼から司に変わっただけで、それは司である必要性は少なかった。
寂しさを紛らわす相手=蓬に失礼な事、と考える司と依存対象が変わっただけの蓬。
当然、根本的な考えが違いますから摩擦が起きます。
そして、距離を置くことになって改めて蓬の事を考え始める司には非常に好感が持てました。
蓬も途中までは病的ではありましたが、苦しみ彷徨いながら、自分の意志で司の意図に気が付けた事は
二人の恋の始まりを描くうえで非常うまく表現出来ていたと思います。
司は奈美の面影を、蓬は元彼の呪縛と依存する心を、乗り越える事ができた良いエンディングだったと
思います。
■飛鳥√
蓬√に比べて、訴えかけてくる物がどうにも軽く感じてしまいました。
テーマ自体は、十分に重いと思うし言いたい事も分かりはしますが、前述した”奈美への想い”という
司にとっては大きな傷を余りにも軽く扱いすぎているように感じ、飛鳥を身近に感じる事が出来ませんでした。
付き合おう、という動機自体がどちら側からみても根拠が無く、根拠が無いからこそ軽い。
そんな心理的バックボーンが掛けたまま、進む飛鳥√は「StarTRain」という作品では無く「StarTRain」の
登場人物が登場する良質のシナリオゲーと呼ぶべきシロモノのようがします。
決してつまらなかったわけではなく「納得出来なかった」ゆえに辛口になっております。
作中に出てくる奏の「どうして、つきあい始めたの?」
この問いが全てのような気がします。
■奏√(更にネタバレ有り、要注意)
幼馴染みの微妙な距離感、言い出せない恋心。
内気な性格が相まって何とも見ていてもどかしくあった奏の恋。
あるイベントが起こるまでは個人的には無茶苦茶、感情移入してプレイすることが出来ていました。
そのイベントとは・・・。
奈美との再会
これ、正直言って受け取る側に取ってみたら究極の爆弾ですよね。
いい意味で作用してくれるなら良かったのですが・・・私の場合は逆に作用してしまいました。
蓬→飛鳥→奏と進めていき、やっと奈美への想いが薄れてきたのに・・・。
あそこで出会い、更に違う男と付き合っているなんて聞いた日にはもうグッタリです。
あのイベントを見た瞬間、一気にやる気力が減衰し、中座してしまいました。
リアル1日ぐんにょりとし、これではいかんと気力を振り絞り、LOADしたのですが、この時のLOADボタンを
押すのがどれだけ苦しかったか・・・。
しかし、そんな荒んだ?精神状態を救ったのは意外にも”DJマイコ”でした、あの番組、、、正直すごい
演出だと思います。あれ考えたライターさんはすごいと思いますよ。
なんていうんだろう、画面越しにみている我々プレイヤーにも元気を分けてくれる。
素晴らしいイベントだと思いました。
また、俳句にもなんか隠されているだろうと思ってはいましたが、鈍くさい私は謎が解けませんでした。
しかし、答えが明かされた時、単純な事なんですが、その単純さから流れ込んでくる奏の想いに癒されました。
そして、何よりも奏の告白時の風音様の演技、神掛かっていて震えました。
素晴らしい演出の連続で最後には心地よい読了感を得ることが出来ました。
・・・しかし、奈美への想い・・・そのモヤモヤはこの√のおかげで残ってしまいました。
■七美√
司の心情、もの凄く理解出来ます。
奈美への想いを引きづったまま、ずっと過ごしてきて、その奈美に似た女性と出会い、その前向きな心に
癒されていき、心を寄せていった司。
そんな中で「魔法は終わった」。
精神(こころ)が壊れるのも無理ないですよね。
”自分は不幸だ”そう思ってしまうのは仕方ない、客観的に見れば甘えているんでしょうけど、人の心って
そんな理屈で計れるものではないんですよね。
そして、その心を救ったのは七美の想いであり、友達であり、師であった。
出来すぎだと言う人もいるかもしれません、ご都合って言う人もいるかもしれません。
けど、本当に自分に取って大事な人が困っていたら、手を差し伸べるのが友情ですよね。
この七美√のラスト個人的にはすごく好きでした。
自分を好きになれましたか?
あなたは今幸せですか?
ラストシーンを見たとき、心の底から司に問いかけたくなりました。
エピローグ的にはあの後、奏とハッピーエンドになるんじゃないかと思いもしますが、個人的にはあんな経験を
乗り越えたからこそ、奈美と新しいスタートを切って欲しかったなあ、と思ったりします。
強くなった司、強くなった奈美。
強くなったふたりが描く幸せのかたち。
見てみたかったような気がします。
Are you happy?
■総 括
皆さんの評価通りに素晴らしい作品でした。
ヒロイン毎に全く違ったテーマを提起しており、それぞれが非常に高いレベルで完成しています。
蓬√では、むき出しの恋愛感情とすれ違う心を。
飛鳥√では、すれ違う家族の想いを(司の家族の話が無かったのは残念でしたが)
奏√では、ひたむきな真っ直ぐな想いといじらしさを。
そして七美√では、幸せの形ってなんなのか、を。
実に見事に我々に訴えかけてきます。それは確かに正解だとは言えないのかもしれないけれど確かな
説得力がありました。
人によって、苦手な意識を持つかもしれませんが、出来るだけ多くの方に体験してもらいたい
そんな作品だと思います。
※タイトル「StaTRain」これダブル(トリプル?)ニーミングだったんですね。
初めて見たときは何だ、このタイトルと思った物ですがクリアすると全然違って見えますね。
※麻衣子ってつくづく不思議なキャラですね。
ウザイんだけど憎み切れないというかなんというか・・・。
※結局、司の両親、家族関係は改善されなかったな、ちょっと残念。